表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

雪山で遊んでいただけなのに、雪崩になった

作者: 花竜

今日は、雪山が気持ちよさそうだった。


空は澄んでいて、風も冷たすぎない。


白い世界は静かで、音が吸い込まれる感じがする。


雪の匂いも、悪くない。


たまには、雪もいい。


そう思って、ドラゴンは山の斜面に立った。


――ざくっ。


雪を踏みしめる感触が、思った以上に楽しい。


「……お、ふわふわだな」


翼を少し広げ、体を軽く前に倒す。


そのまま、すーっと滑った。


斜面は緩やかで、雪も柔らかい。


転んでも、全然痛くない。


「……これ、楽しいな」


滑ったり、転がったり。


雪を集めて丸めて、積んでみたり。


少し歪んだけど、だいたい丸い。


「……雪だるま、ってこんな感じだったか?」


自分よりずっと小さいが、まあいいだろう。


満足して、また斜面を滑る。


そのまま、何も考えずに、ぼんやりしていた。


――――


次の瞬間。


ぱき、と。


足元で、小さな音がした。


「……?」


見下ろすと、雪の表面が、ゆっくりとずれている。


――ずる……ずる……


「あれ?」


次の瞬間。


――ごろごろごろ――


雪が、斜面を滑り始めた。


小さかった動きは、あっという間に広がり、

白い塊が連なって、下へ下へと流れていく。


「……おや?」


ドラゴンは特に慌てず、

その流れに合わせて、軽く身を任せた。


雪の上を滑る感覚は、さらに気持ちいい。


「おお……速いな」


――――


その頃。


麓の街と、山小屋。


「雪が……動いてるぞ!?」

「雪崩だ!!」

「こんな規模、聞いたことがない!」


警鐘が鳴り、人々が叫びながら走る。


「避難しろ!」

「子どもを先に!」

「山の上に、何かいるぞ!」


誰かが見たと言った。


「……白い、巨大な影が……」


――――


軍も出動した。


観測班、通信班、指揮所。


しかし、報告はすべて食い違っていた。


「雪崩の中心に巨大生物を確認」

「いや、影は雪煙だ」

「ドラゴンに見えた、という証言があります!」


混乱の中、雪崩は自然に勢いを失い、

街と山小屋に致命的な被害は出なかった。


――――


数日後。


司令部の会議室。


雪山、海域、村落――


これまでの資料が、机いっぱいに並べられていた。


「……結論を言え」


重い沈黙の中、分析官が口を開く。


「共通点は、現象発生時に

“白いドラゴンの目撃証言”があることです」

「だが、映像記録は?」

「ありません」

「物証は?」

「ありません」


別の者が続ける。


「恐怖状態下における、集団幻覚の可能性が高いかと」


しばし、沈黙。


やがて、誰かが疲れた声で言った。


「……理解できないものは、記録に残せん」

「現場の混乱が生んだ幻覚。

自然災害として処理しろ」


その決定に、誰も異を唱えなかった。


――――


一方、その頃。


山の斜面。


ドラゴンは、少し崩れた雪だるまを見下ろしていた。


「……まあ、いっか」


冷たい雪を手で触り、少し満足そうに息を吐く。


「ふぅ……雪遊び、楽しかったな」


翼を広げ、静かに空へ舞い上がる。


今日もまた、

ドラゴンにとっては――


本当に、いい一日だった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ