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第10話:鮫狩り

俺は、装甲鮫が棲む水深まで浮上していた。




(……体が軽い。水圧が減ったせいか。まるで自由に空を飛ぶような感覚だ)




装甲鮫との決戦に備え、海中での身のこなしを確認する。


機動力も、視界も、問題ない。




(――準備は万端だ。出てこい、装甲鮫。俺はここにいるぞ!)




俺は、生体オーラを全開にして撒き散らす。


狙いはただひとつ――奴をおびき寄せるためだ。




(逃げるなよ。生まれ変わったこの力……思う存分試させてもらう!)




やがて、一つの強大な気配が海の向こうから接近してきた。




(……来たな)




あの日、俺を打ちのめした宿敵――装甲鮫が姿を現す。




奴は俺を視認するや否や、咆哮を上げるようにして海を切り裂き、突進してきた。




だが――




(遅い!)




俺には当たらない。深海での進化を経た俺の速度は、すでに装甲鮫を上回っていたのだ。




(ここまで差がつくとはな……)




だが、回避できるだけでは勝てない。


問題は――この鋼鉄のようなハサミで、奴の装甲を貫けるかどうかだ。




俺は突進してくる装甲鮫をかわしつつ、すれ違いざまに全力で一撃を叩き込んだ。




ガギィンッ!




――一撃では貫けない。だが、前回とは違う。


奴の装甲に、明らかな“ひしゃげ”が見えたのだ。




(……ふふ、ようやく料理の下ごしらえが終わったな)




俺は迷いなく距離を詰める。


装甲鮫の周囲を高速で旋回し、幾度となくハサミを叩き込む。




装甲は着実に歪み、やがて一枚が完全に浮き上がった。




(今だ!)




俺は装甲鮫に取りつき、浮いた装甲の隙間にハサミをねじ込む。


力を込めてこじ開け、露出した柔らかな皮膚へ――




電撃を、直接叩き込んだ。




バチバチバチッ!




体内を奔る高圧電流に、装甲鮫が苦悶の咆哮を上げる。


口を大きく開いたその瞬間、俺はそこへもう一方のハサミを突き立てた!




深々と貫かれた頭部。


装甲鮫は、のたうち回るように暴れ――やがて静かに沈黙した。




(……あれほどの強敵も、こうも呆気ないとはな)




勝利の余韻に浸る間もなく、俺は装甲鮫の肉体に食らいついた。


そのエネルギーは、今まで喰らったどの獲物よりも桁外れだった。




身体の内側から、暴れ回るように力が弾ける。




そして――脱皮が始まった。


だが、これまでのそれとはまるで違う。




まず、甲殻が全体的に一回り以上大きくなった。


特に片方のハサミは、驚くほど巨大化し、鮮やかな紅色に染まっていた。




(……これは……!)




俺は見覚えがあった。


転生直後に“理想の姿”として思い描いた、あの「タスマニアオオガニ」の特徴だ。




しかし、それだけではなかった。




――ハサミの内側には、ノコギリガザミ由来のギザギザが残されている。


――全身には、スケーリーフットの鉄殻に由来する金属装甲が広がっている。


――遊泳脚は健在で、水中を自在に駆け回れる。


――電撃も、自在に操れる。




俺はこれまで喰らってきたすべての能力を融合させた存在となっていた。




最強の進化体――タスマニア・メタル・デンキガニ。




(……ついに、俺は海の覇者となったのだ!)

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