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夜の王と契約魔法〜ルールで縛り、契約で奪う──契約魔法で成り上がる【無双×暗躍】譚〜  作者: 皆月いつか
第2章 夜の王 編

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第39話◆『仲間』の定義


 試合後────【誓いの夜明け】の全員を医務室に見送った後、俺を背後から聞いた声が呼び止める。


「よぉ、ハイディアちゃん────。

ちょいとツラ貸せよ────」


 ガルフ────。わざと不良学生みたいな喋り方をしているが、明らかに悪意は見られない。



 言われるがままにガルフに着いていくと、【ライジング・サン】のリーダー、グレイズが、人通りのない花壇に腰を掛けて待っていた。


「よう、ハイディア。さっきはよくもやってくれたな────」


 表情を変えず、グレイズが穏やかに話す。


「こちらこそ。何の用ですか────?」


「まあそう警戒すんなよぉ────いや、してねーのかよ。お前、本当に可愛げがねーなぁ」


 ガルフがやれやれと言った様子で、グレイズを見る。


「思った通りの反応だよ────それでいい。

ネージュと、イーナと、盾のやつ──アルヴァンだったか。あいつらに麻痺パラライズの解毒薬を持っていってやってくれ」


 グレイズが飲み薬を四錠渡してくる。


「好きなの三つ取って、一つ返せ────」


 俺が手の中で三錠選ぶと、返した一錠をグレイズがそのまま口に放り込む。


「この薬のためにわざわざ────?」


「いや────ちょっとだけお前と話してみたくてな」


「………………」


「悪いな、お前のことは完全ノーマークだったよ」


「そうだよなぁ、勇者ネージュの『お友達枠』以上の情報なかったもんなぁ……」


「………………?」


「偽らなくていい。別に誰にも言わないさ。

お前────猛者モサなんだろ?」


「買い被りすぎですよ────」


「ああ、それでいいよ。

だが話は続けるぞ────」


 グレイズは俺の瞳を見据える。


「まず【ライジング・サン】についてだ。

お前は気づいているかも知れないが、俺たちは仲良しこよしの学生パーティじゃない。学内大会という目的のために集まった集団ユニットなのさ。

俺たちの基本は背中の預け合いだ。それこそパーティなんて立派なもんじゃない。個々がユニットとしての持ち場を守るからこそ、集団で勝利を掴んできた。ぱっと見は俺の爽やかさで、王道パーティっぽく見えるだろうがな」


 グレイズは悪戯っぽくにぃっと笑う。


「────それには納得ですね。戦い方があまりにプロじみている。しかも学内大会向けにそうとうカスタムしているはずだ。

麻痺なんて甘いこと言わずに、遅効性の毒にすればもっとえぐい駆け引きだってできたでしょう」


「ははは──────」


 グレイズが噴き出し、ガルフもくくくっと笑う。


「だよな? 学内大会なんて、呑気なお祭りでそれやったら一発アウトだけどな」


「なぁ、グレイズ。だからこいつを一番最初にやっちまおうって言っただろうがよぉ────」


「まあ、そういうなよ。

ネージュも平和ボケしたお子ちゃまだが、チート野郎には変わりない。無策で正面から殴り合って、勝てる相手じゃないさ。

それにハイディアを先に狙ったとしても、結果は変わらなかった気がするよ。あの場ではな」


「それはこちらも────完全に場の空気は掌握されていた。ネージュの慢心も、アルヴァンの油断も、イーナの弱腰も、あなた達には完全に見抜かれていた」


「お前だけだったよなぁ。こっちの目論見に気づいて勇者にゲキまで飛ばしてたろ────。

俺らで生意気な勇者の鼻っ柱折ってやろうと思ったのによぉ、してやられたわー」


「なぁ、ハイディア────。

俺は王国騎士の士官を断ってパーティを継続するという噂になっているようだが、聞いてるか?」


「ええ、まあ──────」


「その噂、実は半分違う。

俺は年明け、卒業したら傭兵ようへいになるんだ。婿入りした父親が現役の傭兵でな、王国士官なんて言ったらぶん殴られそうだし、不思議と俺も『国の犬』なんて反吐が出る。

今後も必要ミッションによっては【ライジング・サン】としても動くが、基本はこの身一つでやっていくつもりだ。

パーティとしての俺の役割は制圧、陽動だったからな。華々しさは捨てて、泥臭く戦場で舞うぜ。ガルフは────まあ、言えない仕事だよな?」


「それ言うかね────まあ、いいけど。

汚れ仕事、俺に似合うだろぉ?」


「ええ、心底──────」


 ガルフの問いに、何を今さら──と俺は頷き、ガルフはハンッと、鼻で笑う。その様子を笑顔で聞いていたグレイズが顔を引き締めて話を続ける。


「もともと俺たちはその程度の繋がりしかない────だが誰よりも互いを信頼している。

シルリアをお前に寝取られるとは思ってもみなかったが、まあ仲良くしてやってくれ。あいつは恐らくお前と合うはずだ」


「あいつ頭いいもんなぁー」


「…………なぜ、お二人は俺にこんな話を?」


「────お前に最低限、信用して欲しくてな。

当然『下心』はあるぜ。それも含めてオープンにしないと関係なんて築けないからな。

なにも、お前の秘密も話してくれなんて言わない。話だけ聞いてくれよ」


「…………」


「仲間とはいえ、他人ひとの固有スキルのこと話すのははばかられるんだがな────ゲーティスのことだ。掻い摘んでいうと、あいつの固有スキルを剥がして棄ててくれる奴を探している」


「固有スキルを────?」


「ああ。あいつの固有スキル──あれは呪いだよ。今回はお前のおかげで使う機会がなかったが、あいつの親があいつに刷り込むように修得させた。あいつ自身は苦しんでる。それを救ってやりたい。

皮肉なことに、あいつの性根は誰よりも優しい────。俺たちみたいな裏道の泥濘ぬかるみじゃなくて、あいつには陽の当たる道を歩んで欲しいと思っている」


「あいつはスキル以外は、俺たちとつるむような奴じゃねーのよ」


「なぜそれを俺に────?」


「────以前、一年生に固有スキルを他人に修得させられる奴がいるという噂を聞いた。

だが、いくら調べても噂の出どころすらわからない」


 間違いなく俺のことだろうが、ここで認めることはあり得ない。


「デマの類では? それにスキルの修得補助と、修得済スキルの無効化は、また別とも思いますが」


「いや、そこはセットだろうよ────。俺が想定するような奴なら、十中八九、剥がすだけもできるはずだ」


 御明察────だな。譲渡契約なら受け入れることができる。固有スキルの枠は条件次第で明け渡すことも可能だ。


「人にスキル与えるだけの聖人君子なら、こんなに情報が出てこないことはねーからなぁ。 莫大な金か、あるいは何らかの見返りか────。

まあ、大概のことは俺たちで呑んでやるつもりさ」


「…………」


「お前が知らないなら知らないでいいんだ。

何か情報が入ったら、俺たちに言うか、ゲーティスに教えてやってくれ。あいつは三年だ、あと一年は学院ここにいる。

そして願わくば、あいつには、あいつの望む固有スキルを、あいつ自身の努力で体得してほしいんだ。頼む────」


 グレイズが真剣な顔で頭を下げる。


「ハイディア、俺からも頼むよ────」


 グレイズに続いて、ガルフも深く頭を下げる。


「貴方たちのようなプロが、ユニットの後輩メンバーにそこまでしてやるものですか? 役割集団だと言い切っていたのに、わざわざ俺を呼び出してまで、こんな頼み事なんて────」


「ん? だって仲間のためだろう?」


「え?」


「もちろん甘ったれさせたい訳じゃない。だが自力で切り拓くにしても、できることとできないことがあるだろう。あいつのスキルについては完全に後者だ。なんとかしてやりたくもなるだろう────」


「…………」


 解せなさが顔に出ていたんだろう、察知したガルフが諭すように話す。


「お前には分からないかぁ。俺らは生半可な覚悟で組んでねーのよ。一度組んだらもう一蓮托生、っつーの?」


「────あいつとは、俺たちが卒業したらそれっきりかも知れないが、それでもあいつに関わった俺たちとしては、あいつに笑っていて欲しいんだよ」


 本当に曲者揃いで、嫌な先輩たちだ。


「────わかりました。心当たりならある」


 俺はカードケースを取り出すと、一枚の紙をグレイズに渡す。


「この名刺にある奴を尋ねると良い────。望む相手に繋がるかも知れません」


 断じて、感化された訳じゃない。

 『そこ』を尋ねたところで、俺に直接は繋がらない。だが本人から話くらいは聞いてやってもいい。


「ハイディア、ありがとな────」


 ガルフが名刺を渡した俺の手を握って揺する。その様子を見て、グレイズも穏やかに微笑む。


「蛇の道は蛇────闇側の話は、闇側の奴に寄ってくるもんだ。初めて信頼できそうな一年に出会えたからな。こうして直接話して、お前が勇者のお友達枠と揶揄されているのも、心底『納得』したよ。

ハイディア、情報への感謝だけじゃない。お前のこと────気に入ったぜ」


 ガルフが手を離すと、今度はグレイズが俺の右手を握り、固い握手を交わす。


「【誓いの夜明け】が嫌になったら、いつでも来い。俺ならお前を二百パーセント活かしてみせるぜ。まあ、すぐにとは言わんが、いつでも連絡してくれ────」


「まあ、気が向いたら────」


 解毒薬を持ち、ネージュたちの元へ戻る俺の足取りは、なぜか少し軽かった。



 その夜、王都の繁華街にある雑居ビルの電話が鳴り、若い男が電話に出る。


「────ん? ハイディアくん。

電話なんて珍しいね。どうしたの?」


「近く、ゲーティスってガタイの良い奴が、お前を訪ねていくと思う。話を聞いて、違和感がなければ俺に繋いでくれ────」


「要件と金は────? ふっかけていいの?」


「ヒアリングと俺の取り分については任せる。お前は審査と仲介だけ。不自然な点がなければ適正価格で引き受けてやってくれ────」


「そいつが依頼主、本人?」


「いや──グレイズとガルフ、そいつが属する【ライジング・サン】ってパーティのコア・メンバーからだ」


「ふーん、わかったよ。

じゃ、契約まとまりそうなら連絡するね」



◆御礼

読了ありがとうございます!

面白いと思っていただけたら、ぜひぜひブックマーク、リアクション、評価、感想/レビューをいただけたら、ものすごく励みになります。よろしくお願いいたします。


◆告知

『夜の王と契約魔法』はカクヨムコンテスト11にエントリーしています。(他プラットフォームにて失礼します)

https://kakuyomu.jp/works/822139839656378427

おかげさまで、新人作家の処女作であるにも関わらず、現在競合ひしめく「異世界冒険部門」で、100〜200位/1800作品と大健闘しております。

あなたの一票で、大きな支えを得られます。ログイン、フォロー/評価というお手間をかけてしまいますが、是非あなたの手で作品を育てていただけると、嬉しいです。何卒、よろしくお願いいたします!

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