第36話◆学院大会トーナメント【団体戦】
◇
ウィンターホリデーを目前に控え、流行病の影響で何度も延期されていた学院トーナメントが、ようやく開催されることとなった。
勇者パーティ【誓いの夜明け】で参加する俺とアルヴァンは、一回戦のために寒空の下、学院に向かう。
「はぁ……だりぃな。試験と追試が終わった後、何もホリデー前に強行しなくてもいいのにな」
「そういうな────。今回は一般客も入るし、王立なんだから、国が興行収入を見込んでるんだ。ホリデー前の開催は、逆に災い転じて福となすといったところなんだろう」
「観客席でビール売ってきていいか?」
「慎んどけ────。俺たちは優勝候補筆頭なんだぞ」
「けっ、旨みがねぇな」
…………
◇
「旨み、あるじゃねーかよ……」
開会セレモニーが終わり、闘技場から控室に集まった学生の中、運営局長の説明に、アルヴァンが思わず声を漏らす。
「────という訳で、改めてまとめます。
今大会の戦績に応じて、上位パーティには実地訓練による『成績補填』という名目で、ハントや調査にかかる成績の優遇と、単位の補填を行います。平たくいうと、長期ハントに出てもその功績に応じて、成績が保証されます。
さらに、地元商会から見込まれる興行収入を学生へ還元するため、優勝したパーティには商品券と記念品が贈呈されます。表彰の場にて授与を行いますが、これは学院は通さず、商会から直接の寄贈となりますのでご理解ください」
辺りが沸き立つ中、ネージュとイーナは冷静である。さすが実家が太い二人。
「時期がズレたことで、地元貢献にもなるなんて素敵ね。来年からもこの時期にしたら、学院も学生も地域も皆が喜びそうな気がするわ」
聖女イーナは、地域経済を含めた三方よしのような相乗効果を語り────
「そうだね。長期ハントが認められるのも僕たちにとっては大きい。
学生のうちから、より国や世界のために動ける大義になる。素晴らしい制度だよ。
英断した国にも、先生方にも、商会にも、尊敬の念を禁じ得ない」
勇者ネージュは、学業と勇者パーティとしての活動の両立を考え────
「商品券の換金率……四人で分割しても大金だ。副賞も売っ払えるものならいいな……」
アルヴァンは商品券の皮算用だ。民度の格差がえぐい。ここは、俺がまとめた方が良さそうだな。
「三人とも────まずは堅実に実力を出すことに集中しないか?
周囲を見ると、明らかに浮き足立っているパーティが多い。こういう時こそ番狂わせは起きると考えていい。
俺たちもそうだ。対魔獣と対人戦では勝手が違う。普段の俺たちを出せるか、それだけに注力すべきだ」
「ハイディア────君は本当に地に足がついた視点をもっているね。
君と組んで本当に良かったと思うよ。ハイディアの言うとおり、普段の僕たちを出すことに専念しよう」
まあ、ギフテッドのネージュにブレーキを掛けられる奴なんてそういないだろうがな。
賞金はどうでもいいが、【誓いの夜明け】としては、ここは通過点でないといけない。
ドッ────────────
控室まで震えるほどに、会場が沸き立つ。
「なんだ──────?」
◇
「一回戦、第一試合────
【誓いの夜明け】vs.【ライジング・サン】」
抽選の初っ端から観客席のどよめきは収まらない。
「おいおい、優勝候補がまさかの第一試合で潰し合うか?」
「大丈夫、ネージュ様は負けたりしないよ」
「だが【ライジング・サン】は二大会連覇の四年生の筆頭パーティだ。経験値が違う。これはどう展開するか分からんぞ」
その後の抽選の発表が話題にも上らないほど、ざわめきが止まない。
◇
「おい、ハイディア──────」
闘技場に向かう途中、随分と聞き馴染みのある声がする。嫌悪感が顔に出ないよう無表情を貫く────。
「ご無沙汰しております、ベスギーザお兄様」
警備で来ている様子の、長兄ベスギーザと思わぬ形で再会する。
「相変わらず、小判鮫のように上手くやっているようだな。魔力の器の小さきお前が、エリート揃いの学院に通い、勇者とパーティを組むなどと、ご機嫌取りも極めれば立派な武器になる好例だな」
「お兄様と違い、私にはそれしかありませんゆえ。これからも家名に泥を塗らぬよう、くれぐれも気をつけて参ります」
「ハイディア、どうかしたのかい?」
ネージュがこちらに気づいて近寄る。
「これはこれは、勇者ネージュ殿。
王国騎士団、第四部隊所属ベスギーザ・ソルティレージュと申します。愚弟が大変世話になっております」
「ハイディアのお兄様かい?」
「ああ────長兄にあたる」
「ハイディア、言葉を慎め。身の丈を弁えろ。勇者殿に対する口の利き方に気をつけるんだ。
ネージュ殿、とんだご無礼を」
「そんな……僕たちは同級生ですから、そこまで畏まる必要はないですよ。それより、こちらこそ良くできた弟さんで、助けられています。
ハイディア、王国騎士団所属のお兄様がいるなんてすごいじゃないか」
「勿体無いお言葉でございます。それでは私は警備に戻ります。ネージュ殿、ご挨拶ができて光栄です。ご活躍、心よりお祈りしています。
ハイディア、くれぐれもネージュ殿の足を引っ張ることだけはないようにな」
「はい。ご忠告ありがとうございます、お兄様」
うむ、通常運転だな。永遠にさようなら。
「随分と厳しいお兄様だね、ハイディア」
「ああ、他人にも他人にも厳しい、敬愛する兄君だよ────」
怒る気にもならん。まあ、より一層目立たぬよう、こちらも通常運転をしていこう。
◆御礼
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◆告知
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