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夜の王と契約魔法〜ルールで縛り、契約で奪う──契約魔法で成り上がる【無双×暗躍】譚〜  作者: 皆月いつか
第2章 夜の王 編

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第34話◆『夜の王』


「ルナ────そこに直れ」


「おやおや。怖い顔をしてどうした、我が主よ」


「わかっているんだろ。【夜の王】についてだ────」


「くくく、ハイドの姿でギルドにも行ったのじゃろう? せっかくこんなに魅力的な主なのに、出会った時に名乗っていた『名もなき王』では格好つかんじゃろうて、我が謹んで名付けをさせてもらった」


「なんだよ【夜の王】って────」


「ふむ、そこからか。

よろしい、僭越ながら名付けの心を解くとしよう。主が我と出会った時間帯は?」


「────夜だな」


「ケルベロスと出会ったのは?」


「────夜だな」


「暗躍をするのはいつも決まって────」


「────夜だな」


「アルヴァンと出会ったのは?」


「────夜だよ。というかアルヴァンは別に関係ないだろう」


「関係大ありじゃ。主が配下や盟友と運命的な出会いを果たすのは、決まって夜という。そして主は、夜という時間が好きだと言っておったろう。


極め付けは、闇魔法がもっともその刃を強靭に尖らせるのも夜、さらにさらに主の魔力は月の虹彩を思わせ、筆頭配下の我に『ルナ』と名付けた。これは夜に輝く月の意。

もはや主が【夜の王】を名乗らない理由の方が乏しいではないか」


「────確かにな。

【夜の王】、中二病っぽいが悪くはない。しかし、なぜ馬鹿丁寧に俺の名前を書いた?」


「無二のタイミングじゃったからのう。

この先、どういった形で、主が魔王として表舞台に出るかは、主の深謀遠慮に依るところで、配下である我にとっては、口を出すことではないと心得ている。

しかし、魔王である主の名は、広く畏怖される対象でなくてはならない。故に偽名は使えずハイディアと名乗るほかない。

これは魔王臣下として、主と共有する普遍的な価値観といえよう」


「ふむ────なるほど」


「しかし、主はすでにギルドを中心に、ハイディア、ハイドとして知られている。【夜の王】としてハイディアの名を書けば、同名ということで、ギルドは一応の確認をしようとすることだろう。


そこでだ。主は今、流行病でしばらく動けん。アリバイは完璧じゃ。その上で事実確認には、ギルマス側近のバリーも出張るじゃろう。主から聞いていた仮説によると、バリーは質疑応答で嘘を見抜くスキルを使う。ギルドマスターのオールムもそれを信頼している。

つまり彼奴との問答さえ上手く切り抜ければ、今後一切主が疑われることはない」


「──────」


「しかも、向こうさんは『書かれた名前が一緒だから一応確認する』という、何ともふわっとした状況で尋問を行う訳だ。

バリーとしても、もともと疑いの度合いも低いのに、会ってみたら、知らぬ存ぜぬそもそも動けぬと、疑いの余地もないほど正直に語る主。そしてガーベラという第三者による完璧な証言」


 ルナは余裕のある笑みを浮かべ、自信満々に続ける。


「しかし、聡明な主のことじゃ。途中で我の仕業と勘づくことじゃろう。このままとこに伏せっていては、いずれ我の口から主に真実が語られ、主の中ですべてが確信に変わってしまう。こうなるとバリーの能力を回避するのは一筋縄ではいかなくなる。


ゆえに、ハイディアの次に、疑いの目を向けられる可能性のあるハイドの姿となり、すべてが確信に変わる前に、ギルドに赴いてむざむざとバリーに質問をさせ、上手く切り抜けることで、そちらにも鉄壁の信頼を得るじゃろうと考えていた。


まあ、回答は『心当たりはある』くらいにせんと、嘘判定となってしまうのだろうが、主なら抜かりなく切り抜けると確信しておった。これが我なりの深謀遠慮じゃ」


「随分スピード感のある深謀遠慮もあったものだな。

お前────ガーベラも利用しただろう?」


「うむ、我とハイディアの仲を誤解したままのようじゃったからな。その甘酸っぱい設定ごと利用させてもらった。ガーベラの性格上、バリーにも嘘はつくまいと踏んでおったからのう」


「それで、ギルドから見て、俺とハイドがシロになったと、俺はどこで判断すればいいんだ?」


「その点についても抜かりはない。

我はムーンラビットの姿でギルドの屋根に張っていてな。『ハイディアもハイドも疑う余地なし』と、オールムとバリーが結論付けるところまで、集音魔法を使って、しかとこの耳で確認した。

これで、【夜の王・ハイディア】爆誕じゃ」


 にっこりと笑うルナに、俺は深くため息をつく。


「────こってり絞ってやろうと思ったのにな。

まさかここまで頭がキレるとは。しかも思考プロセスが俺と限りなく近い。それでいてスピード感は桁違いだ。無論、今回の件では不確定要素が多いし、褒められたことではないが────

俺を信頼し、先々まで見据えて、魔王としてのペルソナを作ったことは賞賛に値する──ほかないな」


 してやられたのに、謎解きの答え合わせを聞くうちに、すっかり顔が綻んでしまった。


「────すべては我が王、ハイディアのために」


 ルナが跪いて深くこうべを垂れる。


「わかったよ────。よくやってくれた。

でも流行病はな、きついんだぞ。ギルドまでの道すがらフラフラと何度倒れそうになったか。その点においてはにわかに許し難い」


「【夜の王】ともあろうものが、病などと情けない。とっとと治して、【夜の王とその配下】を楽しもうではないか」


 悪戯っぽく笑うルナだったが、後日、俺はしっかりとルナに流行病を感染うつして全快した。ルナも流行病の辛さをたっぷりと味わうこととなった。




「油断しておった────。まさか、ここまで苦しいとは」


「うがい手洗いをきちんとしろと言ったろう。健気に励行したガーベラは無事なんだからな」


「ムーンラビットには、喉をガラガラする習慣がないんじゃよ。侮っておった────」


「ゼリー食べるか?

くれぐれも大事にな────。

あと、ルナ。


ありがとう────────」


 肝心なところでは完璧な策略を練り、どうでもいいところでは詰めの甘さを晒す──愛らしい配下、ルナの描いた筋書きにより、【夜の王・ハイディア】は、流行病の咽せるような高熱の中で産声を上げた。


 ハイディア、ハイド、夜の王────。三つの顔は些か多い気もするが、これまで暗躍してきた俺の闇の部分に、気の利く配下から名前をつけて貰った、それだけのことだ。


◆御礼

読了ありがとうございます!


本話をもって、ハイディアが【夜の王】の冠を、運命の配下ルナにより授かることとなりました。

第25話から1話ごとに細かな伏線を張ってきた「叙述トリック」を再解釈したストーリーは本話を持って一区切りとなります。

ここから、夜の王ハイディアというペルソナによる暗躍のストーリーが加速していきます。

年越しはほぼリアルタイム、ホリデーに向けて話を進めていきます。

引き続きお楽しみいただければ幸いです。


面白いと思っていただけたら、ぜひぜひブックマーク、リアクション、評価、感想/レビューをいただけたら、ものすごく励みになります。よろしくお願いいたします。


◆告知

『夜の王と契約魔法』はカクヨムコンテスト11にエントリーしています。(他プラットフォームにて失礼します)

https://kakuyomu.jp/works/822139839656378427

おかげさまで、新人作家の処女作であるにも関わらず、現在競合ひしめく「異世界冒険部門」で、100〜200位/1800作品と大健闘しております。

あなたの一票で、大きな支えを得られます。ログイン、フォロー/評価というお手間をかけてしまいますが、是非あなたの手で作品を育てていただけると、嬉しいです。何卒、よろしくお願いいたします!


◆告知②

本作で活躍する『ルナ』を主人公として、

完全独立スピンオフ短編

『最強魔王の筆頭配下、古書を探して『美少女探偵ムーブ』ひとり旅』を公開しました。

前後編で完結、10,000文字ぴったりでお送りする【あやかしキャラ文芸×短編ミステリー】として、カクヨムコンテスト11 短編部門に挑戦しています。

作品は作者ページにございます。

https://kakuyomu.jp/users/itka

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