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夜の王と契約魔法〜ルールで縛り、契約で奪う──契約魔法で成り上がる【無双×暗躍】譚〜  作者: 皆月いつか
第2章 夜の王 編

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第32話◆リンク〜ハイディアという名〜


 明くる木曜日の朝────。

 ギルドマスターのオールムが出勤前に連絡を受け、ギルドに駆けつける。騒然とするハンターギルドで、側近のバリーが駆け寄る。


「オールムさん!」


「おはようバリー、状況は?」


「賊は裏口から侵入────屋外訓練場にオークキング、オークジェネラル、バインドベア、ストームバルチャー含む魔獣約六十体の遺体を置いていった模様。魔核は全て抜き取られていました。

現場はストームバルチャーがでかすぎて、どうにも対応が追いつきません」


「警備は────?」


「侵入を許したことには気づかず、朝の巡回で発覚したとのこと」


「遺体の状態は────死後経過はどのくらいだ?」


「一切腐敗してないことから、昨夜狩られたと見て良いかと。

気温も低いので、取り急ぎ、凍結魔法を使える職員で、遺体の温度を下げて保存してます」


「わかった、分析班と王国には?」


「すでに連絡済です。実況見分には────」


「俺も立ち会う。あと電話で聞いた【夜の王】というのは?」


「────これです」


 バリーは、ビニールに入れられた手紙をオールムに渡す。近場で拾ったであろう新聞紙に魔獣の血で殴り書いたメッセージが残されていた。


『我が名は夜の王ハイディア。紛い物の王の首、まずは挨拶まで』


「夜の王……ハイディア?」


 その名を聞いたオールムが眉をひそめる。


「……数ある遺体の中央にはオークキングが据えられ、他の魔獣は取り囲むように配置されていました。オークキングは以前から目撃証言が上がっていて、調査隊を派遣するか検討中だったと、他の幹部から聞いています」


「ふむ、オークキングをはじめとする高難易度の魔獣を狩って、わざわざギルドに届ける。その真意がどこにあるのかだな」


 オールムとバリーの話に、職員の若い男が割って入る。


「お話中すみません! 【冬の三連星】が戻りました。……夜の王にやられたと話しています」


「────いくぞ」


 オールムとバリーも職員に続いて、屋内に移動する。



「おい、大丈夫か? いけるか……?」


 魔導士の男は意識を失い、剣士の男はぐったりと壁にもたれかかっている。バリーが駆け寄って魔導士の手首の脈を確認する。


「ガス欠の中で、転移魔法を使ってくれたからな、魔力枯渇の失神だよ────。あと、そっちは触れる時、気をつけてくれ。おそらく肋骨と顎の骨が折れている(イッてる)。すぐに医療機関へ手配を────」


「ドッジ、お前は平気なのか────?」


 オールムが【冬の三連星】リーダーの男──ドッジに話しかける。


「身体はな────。魔力がすっからかんってだけだ。

あとは心がな────折れちまったよ。

三対一、それも相手は、俺たちのお目当てのオークキングを狩った後ってんだから、言い訳もできねぇ────」


「夜の王は……」


「魔王だよ────。

オークキングの伝令が野営をしていた俺たちのところに来た。幼いオークが両手をあげて、オークキングが魔王にやられているから助けてくれ、助けてくれたら人間に敵対することはしないからとな。

罠も疑ったが真に迫っていた。三人で向かうと、オークが流したと見られる血溜まりの中、ローブを被って仮面をつけた【夜の王】がいた。

あれは……ケルベロスを攫われたときと同じ蒼い魔力を纏っていた。あの時の少年も一味だと話していたから間違いない────」


「そいつが、伝令が言っていたという【夜の王】という確信は?」


「本人が名乗っていたからな。それに……あれが王じゃなくて配下だっていうなら、絶望だよ。

あんなのの上がいるっていうなら、それこそ人間に勝ち目は……クソッ!」


「………………」


「────なあ、オールム。もう、引退させて欲しい。ケルベロスの失態から、俺たちはこれ以上ないほど、牙を磨いたつもりだった。お前も知っているだろう?

だが、もう────」


「────泣き言は改めて聞く。まずオークキング討伐に乗り出したことは、お前たちがAランクパーティだから不問ではある──が、しかし、今回は状況から見て、オークキングがオークジェネラルとペアだった可能性が高い。お前たちの独断専行は極めて危険なものだった」


 黙って聞くドッジに、オールムは続ける。


「だが、こうして三人揃って生きて帰ってこられたのなら、まだお前たちに天命はあるのだと、俺は思うがな────」


「────くくく、あいつにも言われたよ。今の俺たちには殺す価値もない、とな。

すまない────情けない理由で、あの二人の心意気まで無碍にするところだった。一から鍛錬して出直すとするよ。

今は……伝えられることをお前に全て伝える。【夜の王】は────危険だ」


 ドッジとオールムのやり取りに立ち会っているバリーに背後から声がかかる。


「バリーさん、すみません」


「どうした、ロザリア?」


「先ほど依頼された、【夜の王・ハイディア】について、『ハイディア』に近い名前のギルド登録は五人確認しました」


「直近で動きがあるのは? ここ一年でいい」


「その条件だと……二名です。唯一、名前が完全一致した、Cランクのハイディア・ソルティレージュさんです」


「ああ、覚えてるよ。勇者ネージュの【誓いの夜明け】のメンバーだな」


「ええ、あと……その……言いづらいのですが」


「はぁ────。わかるよ。

ハイド・ムスブルグだろ──────」


 バリーは頭を掻き、Sランクであり、筆頭ハンターの名前をため息とともに吐き出す。傍らで耳を傾けるオールムもまた、静かに目を瞑った。


◆御礼

読了ありがとうございます!

面白いと思っていただけたら、ぜひぜひブックマーク、リアクション、評価、感想/レビューをいただけたら、ものすごく励みになります。よろしくお願いいたします。


◆告知

『夜の王と契約魔法』はカクヨムコンテスト11にエントリーしています。(他プラットフォームにて失礼します)

https://kakuyomu.jp/works/822139839656378427

おかげさまで、新人作家の処女作であるにも関わらず、現在競合ひしめく「異世界冒険部門」で、100〜200位/1800作品と大健闘しております。

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◆告知②

本作で活躍する『ルナ』を主人公として、

完全独立スピンオフ短編

『最強魔王の筆頭配下、古書を探して『美少女探偵ムーブ』ひとり旅』を公開しました。

前後編で完結、10,000文字ぴったりでお送りする【あやかしキャラ文芸×短編ミステリー】として、カクヨムコンテスト11 短編部門に挑戦しています。

作品は作者ページにございます。

https://kakuyomu.jp/users/itka

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