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夜の王と契約魔法〜ルールで縛り、契約で奪う──契約魔法で成り上がる【無双×暗躍】譚〜  作者: 皆月いつか
第2章 夜の王 編

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第30話◆オークキング


「はあっ……はあっ……何だ、彼奴あやつは……。

【夜の王】など……聞いたことも……」


 腹心のジェネラルは殺されたことだろう────確信に近い予感にオークキングは身震いする。しかし一刻も早くここを離れねばいけない。立ち止まれば死ぬ、振り返れば死ぬ、オークキングは強迫的な死への恐怖から、生存本能のみで敗走した。


「くそっ……くそっ……。

せっかくジェネラルと出会い……いただきを獲れると……魔王になれると思ったのに……

あんなもの……厄災ではないか……完全に……見誤った……」


 足音が大きい。オークキングの視界はぼんやりと前方のみに狭まり、木の葉が夜風に揺れる音にさえも恐怖し、足を早める。


「終わる……終わってしまう……せっかく、せっかく耐えてきたのに……嫌だ嫌だ嫌だ。

転移は……転移はできないものか……」


 詠唱を試みるが、喉が引き攣り、声が震えて言葉が滑る。それよりも立ち止まって息を整えること、この場に留まることがもはやできない……。


「ほっ……おっ……押し潰されそうだ……」


────ガサッ


「ガアアアアアアアアッッッ────!」


 物音に思わず振り返り、半狂乱で腕を振り回すが、そこには誰もいない。月夜の静寂のみが森に広がっていた。


「嫌だ……死にたくない……嫌だ……終わりは嫌だ……ひやだぁああああああああああ」


 オークキングは再び駆け出す。脚がもつれるたびに威厳が砕け、転ぶたびに野心が零れ落ちる。それでも生き残るため、種の本能で前へと進む。


 息が上がり、これ以上は進めないと、草むらへと身を潜めて僅かに息が整う頃。頭は平常時よりも冴え、ある種の冷静さを取り戻す。


「ハアッ……ハアッ……ハアッ……彼奴の目────何処かで……何処かでっ……見たことがっ……」


「────何じゃ、空間転移はせんのか。

召喚できるなら、自らを転移させるくらいはできるものかと思っておった。

お主の肩に掴み掛かったままの我の左手から、糸のようにもやを繋げれば、異空間か、或いは転移先から引き摺り戻せるか、仮説を検証しようと思ったのにのう」


 目の前にはルナがいる。息を荒く乱して飛び上がるオークキングに対し、ルナは息一つ上がっていない。その眼差しは──深淵。


「こっ……殺さないでっ…………」


「────随分と可愛いらしい命乞いじゃのう。

我のような可憐な見た目(ナリ)なら絵になったかも知れん」


 ルナが目を細めて微笑むが、瞳の奥は暗く、底が見えない。ルナの真意が読めず佇むオークキングに、ルナは、静かに問いを投げかける。


「では尋ねるが、あの時──ジェネラルが、我の四肢を切り落としたとして、お主が我を凌辱せんと見下したその瞬間、同じような台詞を我が云ったとしよう。お主はそれに耳を貸したと思うか?」


 ルナの瞳の奥が蒼く、深く、沈む。

 瞬間、オークキングの背筋が凍てつく。


「それが答えじゃ──────」


「あ……ああ……あっ…………

わああああああああああ──────」


 オークキングは再びルナに背を向けて駆け出す。


「おいおい、そこは王の威厳で覚醒して、我をギリギリまで追い詰めるところじゃろう────」



 オークキングは走りながら、肩についたルナの左手を振り払おうとする。しかし、掴まれている感覚はなく、振り払う手も、靄のように透過しており、すり抜けてしまう。


「味方に……私めを貴女の……【夜の王】の配下に……。

ダメだっ……そんな幕引きを聞き入れる相手ではない……死にたく……ない……終わりたくない……」


 走りながら独り言を呟くオークキングの脚を、何かがすくう。


 ドザァッ──────

 

 オークキングの脚を払ったのは、ルナの放った右手だった。悠々と歩みを進めるルナが、オークキングへと近づく。森の静寂に響くのは、迫り来る死の足音────。


「────王の弱さは大罪じゃな。

こんなゴミ、ハイディアとは別物と理解していながら────王をかたる紛い物が、配下を捨て敗走した挙げ句、惨めな姿を晒すなど、見ていて不快極まりない」


「ガラアアアアアアアアアアアッッッッ!」


 オークキングが鼻血を出して地に膝をつく。その場に二十体ほどのオークが召喚される。纏う魔力は通常のオークとは比較にならない。オークキングの血をわかつ子息を転移召喚したのだ。


「行けっ……我が子たちよ……奴の首を討ち取れっ……」


「召喚に命を賭したか────。ようやく腹を括ってくれたようで何よりじゃ。

少々遅かったが、その心意気や良し。我も全力を以って殲滅してくれよう────」


 ルナがオークキングの子息を千切っては投げ、千切っては投げ、蹂躙していく。オークキングは隠蔽魔法を使い、もう一体、オークキングに似た赤黒い異形のオークの少年を召喚する。


「はぁ……はぁ……もう余は動けん…………

『ガロ』……お前は我が子の中で、一番余を慕い、高い知性と才を持つ……。

誰でもいい……なるべく強い者に……応……援を……っ。

奴は……奴らは……夜の王……ハイディア……本物の魔王……。

頼む……余を……救っ……て……」


 ガロは、息も絶え絶えのオークキングを案じるが、強く背中を押され、駆け出す。その気配を悟られるまいと、オークキングは残りの魔力を振り絞り、魔弾をルナに放つ。



 ………………


「のう────。貴様が王の器だとは、我には到底思えなんだ。……最後に召喚したのは貴様の実の子たちだったんじゃろう。あの場で召喚したのはどういう思惑じゃ?

血を分けた子なら我を倒せるという安い見積りか、死なば諸共もろともという破滅願望か、はたまたわらをもすがる時間稼ぎか────。果たしてあの場で犬死にさせる必要があったのか、王を騙る貴様の真意を教えてくれんか?」


 ────腹を貫かれたオークキングは語らない。


「後味は思っていたものと違ったのう。

しかし、我はこれから貴様のような屍を、このほろ苦い感情を、数えきれぬほど踏み越えていかねばならぬ。

王に仕えるという意味を、肝に銘じないとな────」


 ルナはオークキング、オークの子息たちの遺体をハイディアから借りた【どこでもポケット】にポイポイと収納していく。


「お主の魔核は我がずっと持っておくことにする。ゆっくり眠れ──────」



◆御礼

読了ありがとうございます!

面白いと思っていただけたら、ぜひぜひブックマーク、リアクション、評価、感想/レビューをいただけたら、ものすごく励みになります。よろしくお願いいたします。


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『夜の王と契約魔法』はカクヨムコンテスト11にエントリーしています。(他プラットフォームにて失礼します)

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おかげさまで、新人作家の処女作であるにも関わらず、現在競合ひしめく「異世界冒険部門」で、100〜200位/1800作品と大健闘しております。

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◆告知②

本作で活躍する『ルナ』を主人公として、

完全独立スピンオフ短編

『最強魔王の筆頭配下、古書を探して『美少女探偵ムーブ』ひとり旅』を公開しました。

前後編で完結、10,000文字ぴったりでお送りする【あやかしキャラ文芸×短編ミステリー】として、カクヨムコンテスト11 短編部門に挑戦しています。

作品は作者ページにございます。

https://kakuyomu.jp/users/itka

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