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夜の王と契約魔法〜ルールで縛り、契約で奪う──契約魔法で成り上がる【無双×暗躍】譚〜  作者: 皆月いつか
第2章 夜の王 編

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第29話◆ナンバーツーの矜持

 ルナは次々に召喚されるオークを翻弄していく。オークキングのスキルによって、各個の身体能力は倍近くまで向上しているが、ルナはすべてを完全に見切る。

 オークが掴まんとする自身の腕を部分的に霧化して躱し、そのまま耳をクラップして脳髄を潰す。背後から掴み掛かる気配を察知して霧散すると、その背後で実体を結び────具現化した魔力の刃で首を斬り落とす。


「『掴めない、叩けない』のなら『覆え』!

一斉に飛びかかれ────」


 オークジェネラルの指示により一斉に十体ものオークたちが飛びかかるが、ルナは全身を霧状に変えて、まるでこの世のものでないかのように隙間から身体を霧散させ、また元の形に戻る。


「もういい、此奴らはもう飽きた────」


 ルナは詠唱もなく、空に翳した青い魔力の塊を、折り重なって一絡げになったオークの山に落とすと、一匹も逃さず殲滅する。


「そこまでだ……。其方の力はよく分かった。其方と戦い、潰し合うことに意味はない……。

其方を受け入れよう……。情婦などではなく、そこのジェネラルと並んで余の側近となるがいい……」


 ルナがキョトンとした顔でオークキングを見ている。


「なんじゃ……そのつまらんジョークは。

我には心酔し、身体も心も、すべてを委ねても良いと思えるあるじがおる。身の丈を弁えよ、けだものめ────」


 ルナは小さな身体でオークキングを見下す。オークジェネラルがその様を見て、足を踏み鳴らす。


「王! 私めが必ずや奴の四肢をもぎ、王に献上してご覧に入れましょう────」


 このオークジェネラルの発言を受け、オークキングの脳裏を打算がよぎる。

 オークキングとジェネラルの組み合わせは、しばしば厄災として語られる。オークキングの同族への圧倒的なバフ、支配力が、戦略戦闘に特化したジェネラルのパワーを爆発的に跳ね上げるためである。

 しかし、キングを崇拝するジェネラルの憤りを前に、知慮に長けたキングの判断が鈍る。ここでジェネラルの気が済むようにやらせるか、それとも粘り強くルナを手駒に加えるための交渉をするか────。


「何を悪巧みしておるか知らんが、今のお主らは他の王との戦争をしておるのじゃぞ。

ほれ、お前も。ジェネラルだかミネラルだか知らんが、ナンバーツーが王の言いなりでどうする? それともその頭は飾り物か?」


 ブチン────────


 わなわなとオークジェネラルの全身が震える。食いしばった歯茎から血が滴る。


「────四肢をもぐと言ったが、まずは爪から剥ぎ、関節ごとに引きちぎって、地獄の苦しみを味わわせてやる。

泣き喚く貴様を何度も何度も何度も何度も、嬲り、甚振いたぶり、陵辱してくれるぞ────」


「オーク族ではナンバーツーの役目は口喧嘩か? 随分と楽な仕事じゃな。上に立つ王の程度が知れるのう。

御託はもういい────来い。お前の王を我が否定してやろう」


「ガアアアアアアアアアアアアアアッ!!」


「ちぃっ……完全に乗せられおって……。

まあいい……女を配下に置けないのなら早めに叩くのが吉だ……」


 オークキングが詠唱をすると、ジェネラルのフィジカルと、身に纏うオーラが数倍に膨れ上がる。


「うむ、凄まじいほどの魔力じゃ」


 次の瞬間、オークジェネラルの姿が掻き消える。否、超高速の踏み込みによる消失である。


 ドッ──────!


 ルナが立っていた空間そのものを圧殺するかのような、純粋な暴力による一撃。


「霧化した粒子さえも、衝撃で吹き飛ばされかねないほどの質量と速度。並の魔獣なら、霧になる暇もなく肉片となっていたであろう。

並の魔獣ならな──────」


「その口を止めやがれッッ! 余裕ぶりやがってクソガキがぁッッ!! テメェの王は俺が殺す、殺してやるっ、その亡骸をダルマになって王に犯されるテメェに見せつけてやるッ!」


 追撃、追撃、追撃──────。

 ジェネラルの攻勢は止まらない。キングのバフによりリミッターの外れた筋肉は、自らの骨すらも軋ませながら、絶え間なく打ちつける暴風雨のような連撃を繰り出す。


「これじゃ────。

is(イズ)パワーとの一対一タイマン。霧化に拘っていては致命傷になりかねないほどの敵────愉しい。もっとだ、もっと来い!」


 オークジェネラルが大気を裂く風圧だけで、周囲の樹木が鎌鼬かまいたちに遭ったかのように倒れていく。


「単純な物理攻撃も、ここまで極まれば厄災の域じゃな。戦略も戦術も有ったものではないが、しかし、こういう鉄砲玉も軍営には必要かのう────」


「逃げるな! ちょこまかとっ! そこかあぁぁ────ッ!」


「つくづくナンバーツーの器ではないな。

王に知略は任せて自身は感情と力任せで暴れるだけ。こんなものは一兵卒に任せる役割。所詮は獣か────」


「黙れぇぇぇぇぇぇい!!!」


 ジェネラルの拳がまたも空を切る。


「止まれ、ジェネラルよ……」


 熱に水を差すようにオークキングの声が響き、ジェネラルが動きを止める。


「女……貴様は何が望みだ……?」


「はて? 言わなかったかのう。

我の望みは、汝等が我を穴とし、苗床としようとすることを咎められるようなものではない。実に自分本位のもの────」


 オークキングとジェネラルが固唾を呑んで、目の前の少女を凝視する。


「我が王に献上したいものがある────。

しかし、ただ渡すだけでは価値がないもの。

汝等の首はその添え物になるかと思ってのう────実に身勝手な理由じゃろう?」


 オークキングと話すルナを、背後からジェネラルが掴み掛かり、その華奢な身体を隆々とした腕で締め上げる。


「もう、もう離さんぞッ──! 隙を見せたなっ!

このままっ、締め殺して────」


 ──────ドシャアッ


 力むジェネラルが急に倒れる。


「はあ……?」


 急に目前に地が迫るが、ルナを掴む腕は離さない。


「戦闘中に隙を見せてはダメだろう────。

腕の中のそれは『もう』我ではない────」


「ああっ────?」


「本で読んだ────空蝉うつせみといったかのう。

霧化して外殻だけを作れば、ダミーとすることもできる────かと思ったが、随分と色が薄っすらとしておる。もう少しコツを掴まんと、暗い夜しか使えそうにないな」


「きっ、貴様────何をしたッッ?」


 切断された足首を引きずり、ジェネラルが怒号を上げる。


「それを敵に訊くか? まぁ、いい。ヒントをもらった恩がある。

汝の鎌鼬のような拳に着想を得てのう。霧化して粒子の攻撃力が下がるなら、鋭く尖らせればいいかと思い、手先に集中して隙だらけの足首を斬ってみたんじゃ──────」


「ぐっ────うぐうぅぅぅぅっ!」


「後生大事に我のガワを抱いているようだが、その先には何もないぞ。死にゆく貴様の冥土の土産に、余の矜持を教えてやろう。


余の主である我が王はな────それはもう個として充分に強く、頭もとびきりキレる。

────それ故、自分一人ですべてを賄い、どこか孤独を愛している様子でのう。


ナンバーツーとはな、言われて動くだけではダメなんじゃ。自らも頭脳として王の考えの一手先、いや常に出し抜くくらいの深謀遠慮と、それを叶えるだけの実力ちからが無くてはならない。


王が轟雷ならば、しんは先駆ける稲妻たれ。

────獣には荷が勝つ話かのう?」


 ルナの眼光がジェネラルを捉える。


 ゾクッ──────────


「王ッッッッ────」


 目の前の少女が圧倒的捕食者だと悟ったジェネラルが視線を送るが、そこにはもう、オークキングの姿はなかった。


「あぁ………………」


 ルナが前屈みでジェネラルの顔を覗き込む。


「その表情は安堵か────それとも失望か?

また生まれ変わることがあれば、王、そしてナンバーツーの在り方についてよく考えると良い」


 ザシュッ────────


 返事を待たず、ルナがジェネラルの首を落とすと、オークキングの居た位置に目線を向ける。


「情けないのう──────」


 ルナは、手首から先が消えた左手をぷらぷらと揺り動かし、溜め息をついた。


◆御礼

読了ありがとうございます!

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『夜の王と契約魔法』はカクヨムコンテスト11にエントリーしています。(他プラットフォームにて失礼します)

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完全独立スピンオフ短編

『最強魔王の筆頭配下、古書を探して『美少女探偵ムーブ』ひとり旅』を公開しました。

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作品は作者ページにございます。

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