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夜の王と契約魔法〜ルールで縛り、契約で奪う──契約魔法で成り上がる【無双×暗躍】譚〜  作者: 皆月いつか
第2章 夜の王 編

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第28話◆『独断専行系・暴走ヒロイン』というなかれ


 水曜日の夜────。

 流行病はやりやまいに苦しむハイディアが一日ぶりにリビングに這い出し、そこに積み上げられた百個のゼリーを見て、熱がさらに上昇した数時間後のこと。


 ルナは単身、森の入り口に居た。


「さて、こんなことをする我を知ったら、あるじはどんな顔をするかのう。

もしかしたら粛清されてしまうかもしれんな────」


 目を細め、暗く伏せたルナの顔を、雲間を抜けた月が煌々と照らす。


「くくく、しかしダメじゃ。思いついてしまったのだからな──────」


 ルナは笑った──────。


「やらぬ後悔より、やって後悔────か。

いや、もとより後悔などするつもりはない」


 息を吸って、ほんの一瞬──────

 ルナは、爆発的に蒼い魔力を放つ。


 ハイディアの【祝福】を授かって以来、初めて解き放つ全力に近い魔力。

 小動物、魔獣の類が辺りから逃げていく。

 その身に纏う魔力が、かつてないほどたぎるのをルナは感じていた。


 ルナは自身の手のひらからほとばしる、蒼色の魔力を見つめる。


「我は……少し興奮しているのか……?

自分でもなかなか腑に落ちない感情じゃのう。

まあいい────思う存分暴れてやるとしよう」


 月の光環が瞳に映り、虹彩と交わると、輝く月灯りを受けて、ルナは駆け出した。ハイディアが魔力錬成で作ってくれた黒装束が翻る。纏う魔力は、感覚をも鋭敏に研ぎ澄ましてくれている。

 強大な魔力を察知して気配を隠した魔獣、その足元で一匹の甲虫が脚を動かした際に擦れる葉の音が生じた位置さえも、正確に掴むことができる。


「これが主の云う魔力の霧化きりかか。さすがは我が主────索敵など戦闘以外での応用も抜群に効くのう。

もっとこう、細かくコントロールしたいものじゃ。

ただ教わるだけではない、主よりも一歩踏み込んだ……

まあ、動きながら掴めば良いか────」


 五百メートルほど先にバインドベアの気配を察知する。ギルドではBランクに相当する魔獣だ。

 木々が薙ぎ倒される轟音とともに、空気が一変する。向こうも明らかにルナに気づいている。


「グヴァアアアアアアッ──────!!」


 闇色の巨体に、丸太のような腕を広げて走る敵と相対する。ルナは霧化した魔力で自身を押すように推進し加速すると、通り過ぎざまに一閃でバインドベアの首を刎ねる。


貴様ガチムチに抱かれるなんて御免じゃな。我は細マッチョ派じゃ」


 バインドベアの首が落ち、地響きを立てて巨体が地に沈むとき、すでにルナの姿は遥か先にあった。


「こいつは『ついで』みたいなもんじゃからな。

本命のオークは本当におるのかのう────」




 去る夕刻、ルナは閉館する前のハンターギルドにいた────。


 元から発達したムーンラビットの聴力を、魔力で更に強化して傍受するのは、ギルドに何かしら旨い獲物の情報がないかを探るためだった。偶然、ギルドの奥で立ち話をする幹部の声を拾うことができた。

 曰く、まだ未確認情報だが、バインドベアとオークの最上位種が現れたという情報を耳にしたとのこと。


「トップハンターのハイドに連絡がつかないため、まずは調査隊を送ることにしよう」


────などと悠長なことを云っている愚鈍な連中など出し抜いて、自身が横から掻っ攫ってやろう。

 ルナはそんなことを考えながら目を輝かせていた。

 


 森の深部に近づくほど、ルナは突き刺すような魔力を感じる。


「おやおや……この辺りは随分と獣臭いのう」


 ルナはローブのフードを被ると、歩いて敵の間合いに入る。敵は五体────。


「グオオオオッ──────!」


 そこにいたのは、通常のオークの倍はある巨躯──オークジェネラルと、さらにその奥に鎮座する異形のオークの王、赤黒い肌をしたオークキングだった。顔はゴツゴツと歪で、しかし得も言われぬ威圧感を放っている。

咆哮を上げたのは部下の通常種のオークのようだ。


「待て、相手が一体とも限らん────」


 オークジェネラルが部下を制すると、オークキングが口を開き、しゃがれた声で話す。


「あの魔力……ただの人間ではないだろう。蒼い魔力は闇属性……あれは擬人化した魔獣、もしくは人間ながらに魔王の眷属となった者……」


「なるほど。おい、お前────フードを取れ。それ以上近づくと攻撃する。これは警告ではない────」


 オークジェネラルの言葉にルナは黙ってフードを取ると、月明かりに黒のショートカットと青のメッシュがさらりと輝きを放つ。

 オークキングは目を細めて、品定めをするようにルナの全身を凝視する。


「ほう……いい女だ。ほとばしる魔力が戦意剥き出しで、なお良い……」


「ふふ、オークにいい女と言われるのも複雑な気持ちじゃのう。お主らの美的センスほど疑わしいものはない」


 ルナは顎を上げ、見下すように口角を上げる。


「言葉に気をつけろ────。こちらに御座おわすはオークキング、我らが王だ」


「まあ、良い良い……おい、女。お前は何者だ……?」


「我は【夜の王・ハイディア】が配下のルナ。まさか会話が成り立つとは思っておらんかった。

ご機嫌麗しゅう、オークの王よ」


 オークジェネラルが目を剥き、いっそう強く睨みを効かせる中、オークキングが言葉を続ける。


「ほっほ、威勢が良いようで何より……。

【夜の王】? ……聞いたことがないが、その怖いもの知らずな物言い……気に入ったぞ。

女よ……我が情婦になるが良い。異種間においても、オークの種が結実するのは知っておるな?」


「────さっきもバインドベア(ガチムチ)に抱かれそうになったし、今夜は随分とモテるものじゃ。

慎んでお断りしよう。けだものとぎなど冗談にもならん。せめて我が主くらい、『すたいりっしゅ』に口説ける知性と見た目を会得してから出直すがいい。

鏡────見たことあるか?」


 ルナはにぃっ──と目を細めて笑ってみせる。


「貴様────嬲るかあっ!」


 オークジェネラルが体躯に似合わぬ俊敏さでルナの間合いに踏み込む。魔力を使い剛力化させた腕が禍々しく膨張して、大木すら容易くへし折る戦棍を振り下ろす。


「獲った────────!」


──────ドォォォン!


 地面が爆ぜ、土砂が噴き上がる。

 ジェネラルを苛むは違和感、直撃したはずだが感触がない────。


「────どうやら上手くいったのう」


 土煙が晴れると、ルナは無傷でそこに立っていた。

 否、あの瞬間、戦棍は彼女の体を『通過』した。しかし当たらずに地面にめり込んでいる。


「グオオオオオオッ────!」


 今度は水平に放たれた戦棍が、ルナの身体を通過する────ぶつかる瞬間にルナの身体は半透明の蒼い霧状となり、ブワッと広がると、また収束し、物理的な衝撃を完全に透過させていた。


「な、ん……だと…………」


「主の教えを仮説検証するには、実に妥当な連中じゃが、少々危機感が不足しておるようじゃな。今の隙に五回は殺せたぞ?

全員でこい────少しは我を楽しませてみせよ」


「ガアアアアアアアアアアアッ────」


 オークキングが咆哮を上げて、身に魔力を纏う。


「度重なる無礼……後悔させてやろう。

皆の者、殺すなよ……。地獄を見せてやる……。四肢をもいで引き摺り回してやる……。

陵辱の果てに余の子を孕ませてくれようぞ……」


「うむうむ、そうこなくてはな。こちらも手前勝手な理由で汝等うぬらを蹂躙するのじゃ。

勝ったときは食欲でも肉欲でも、好きなだけ我をむさぼるがいい。情けない負け惜しみだけは聞かせてくれるなよ────けだものの王よ」


 オークキングの周囲の土が盛り上がり、中からオーク型のモンスターが続々と現れる。ざっと十体────。


「我を孕ませんでも、単為生殖できとるではないか────。いや、これは……召喚魔法か」


 現れたオークがジェネラルの指示で隊列を組む。オークキングの咆哮でバフを得ているようだ。


「集団戦法か、なるほど────。少々見くびっておったわ」


「謝っても遅いぞ、お前は王の玩具おもちゃになるんだ」


 ジェネラルが目を剥いたままで嗤う。


「謝る? 面白いことを云うのう。これでちょっとは楽しめるかも知れんと期待しておるのだぞ」


「掴めっ! 捕らえろっ!!!」


 現れたオークたちが一斉にルナに掴みかかる。ルナは掴まれる寸前に、その箇所を霧化して攻撃を次々に躱す。


「いいぞいいぞ、かなりコツを掴めてきた」


 今度は体全体を霧化して一瞬消えると、オークたちの頭上で姿を現す。

 オークの頭を踏みつけ、トン、と跳躍。

 空中で身体をしなやかに翻して、遠心力と魔力の推進力を右脚の一点に集中させる。


「硬度を保てるくらいの粒子の間隔────」


 一定間隔で脚を霧状にして回転蹴りを放つ。小柄なルナだが、脚部を霧化して範囲を広げているため、オークの群れ全員を薙ぎ払うだけの威力がある。


「一対多だと、当たらないポイント──打点がロスする分、威力が下がるのかのう。

ほれ、これならどうじゃ────」


 一体に向けてこぶしを霧状にして飛ばす。顔にヒットすると、目に、鼻に、口に粒子となった拳が入り込み、即死に至らせる。

 振り向きざまにオークジェネラルにも拳を放つが、纏う魔力の強さで跳ね除けられる。


「やはり雑魚にしか使えんか。粒子が細かくなるほど威力は減り、離れるほど威力は落ちる。当然のセオリーじゃな。

うむうむ、滾る滾る。もっとだ──もっとこい! 我を楽しませろ────」


 オークキングはじっとりと暗い眼差しでルナを見据えていた。


◆御礼

読了ありがとうございます!

面白いと思っていただけたら、ぜひぜひブックマーク、リアクション、評価、感想/レビューをいただけたら、ものすごく励みになります。よろしくお願いいたします。


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『夜の王と契約魔法』はカクヨムコンテスト11にエントリーしています。(他プラットフォームにて失礼します)

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◆告知②

本作で活躍する『ルナ』を主人公として、

完全独立スピンオフ短編

『最強魔王の筆頭配下、古書を探して『美少女探偵ムーブ』ひとり旅』を公開しました。

前後編で完結、10,000文字ぴったりでお送りする【あやかしキャラ文芸×短編ミステリー】として、カクヨムコンテスト11 短編部門に挑戦しています。

作品は作者ページにございます。

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