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夜の王と契約魔法〜ルールで縛り、契約で奪う──契約魔法で成り上がる【無双×暗躍】譚〜  作者: 皆月いつか
第2章 夜の王 編

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第27話◆ヒント



 火曜日────流行病はやりやまいにすっかりやられてしまったハイディアは、ベッドにダウンしたまま。押しかけてきたルナはベッドに手をかけ、ハイディアにニコニコと話しかける。


「なあ主よ、魔力の使い方について相談なんじゃがな」


「頭が働いてないんだよ──────。

今度に────うへぇ、つらい────」


「ふむふむ、難儀じゃのう。

それで霧化きりかというのは──────」


「続きは明日にして…………」


「そうだなそうしよう。その前にあと一つだけ。

主の魔力錬成なんじゃが、我の仮説では────」


「し、しんどい…………」


 ノックの音がして、ガーベラがドアの外から声をかける。


「あの……ルナ様。差し出がましいようですが、ハイディア様もそろそろお休みになられては……」


「そこをなんとか────。我はあの晩、ハイディアに寝かせてもらえんかったからのう。その分、今は少しでも我儘を聞いて欲しいのじゃ」


 ルナがわざとらしく、布団の上からハイディアに抱きつくように手を回して、ガーベラに見せつける。


「…………大変失礼いたしました。

それではキッチンに控えておりますので、何かあればお声掛けを……」


 頭がぼーっとして、怒る気にもならない。


「ハイディア、頼むあと一息なんじゃ」


「……うへぁ」



 ………………


「うむ、さすがは主。熱に浮かされておるようで、しっかりと論理的にまとまっておる。

理屈が腑に落ちた。いや、コツを掴んだというべきか……」


「それは……よかった……寝かせて……」


「うむうむ、お礼に何か買ってきてやるとしよう。何か欲しいものはあるか?」


「──────静寂」


「んん? よく聞こえんかったぞ。

それはどんなものじゃ? 味はどんなじゃ?」


「…………まかせる」


 ────パタン

 ハイディアは、ちからつきた。


あい分かった。味は任せてくれ────」


 もはやハイディアから返事はなかった。深い眠りに落ちている。まるで屍のようだ。



「ガーベラよ、先ほどはすまなかった。

ハイディアとの会話に熱が入ってしまってな。何分、出会ったばかりで、よく聞かんと掴めないことだらけなんじゃ」


「こちらこそ、お二人の時間に差し出がましい真似を……大変失礼いたしました」


「そう固くなるでない。時間は少し遅いが、買い出しに行ってこよう。ハイディアからは何を頼まれたっけか……せり……しゃく?」


「せり?──何ですか」


「うむ──────。

勢いで請け負ってはみたものの、ハイディアも熱でフラフラしとるし、我もあまり食には詳しくなくてのう。そうそう、味は任せたと言っておったかのう」


「風邪だと……そうですね。せり……せり……?」


 ガーベラがピンと来た顔で手を叩く。


「あっ! ゼリー……とか?」


「おおっ……間違いなくそれじゃ!

ゼリーなら知っておる。冷たくて甘いプルプルじゃ。辛くてもぷるるん──と食べられるな。

さて続きは『しゃく』の部分じゃ。推理小説で鍛えた我の名推理を、今こそ披露する時じゃ。

ゼリーしゃく、ゼリーしゃく、ゼリーひゃく……うむ、数かもしれん。

ゼリーを百個──────」


「さすがに百個は……多いのでは……?」


「うむ、確かに。

ゼリーしゃく、しゃく。

足腰あしこし矍鑠かくしゃく余裕よゆう綽々《しゃくしゃく》……

うーん、なんか、しゃくしゃくしてるゼリーなんてのはあるかのう」


「果実が入った、さっぱりしたものがあるかと思います。もしかすると、さっぱりとしたフルーツのもの……かも?」


「ガーベラ、お主やるな。さすがはハイディアの従者といったところじゃ……!

差し詰め、しゃくしゃくは林檎か梨といったところか」


「素敵なチョイスです! それなら高熱でも美味しく召し上がれそうです。絶対お喜びいただけますよ!

あと────ハイディア様は、葡萄を昔から好んでおられました。もしよろしければ、そちらも買ってきていただけますか」


「うむ、ではガーベラと二人で決めたということで見繕ってくるとしよう」


「────いえ、葡萄も、よろしければルナ様が選んだことにしてください」


「えっ──────?」


「おそらく、ご自身で話されていたしゃくしゃくしたもの以外に、頼んでいない好物をルナ様が買ってこられたら、ルナ様のことを今以上に、もっとお近くに感じられる気がします」


「ガーベラ……」


「もちろん、万が一嫌な顔をされたら、そのときは私のせいにしてください。

でも、ハイディア様がそんな方でないことは、私が──いえ、私もよく分かっておりますので」


 ガーベラは変わらない笑顔を見せている。


「────ふむ。ハイディアがあのとき、大慌てだった意味がわかってしまったかもな」


「どうかされましたか?」


「いや────なんでもない。

ガーベラの厚意、謹んでお受けしよう。

ところで、ハイディアの看病に付ききりだと、買い物に行けず、食材なども困っておるじゃろう。

卵か? 野菜か? なんでもいいぞ。できればメモを渡して欲しい。こう見えて力持ちゆえ、遠慮なく書いてくれ。どうしても持てなさそうなら無理はせんから、くれぐれも遠慮なくな」


「では────お言葉に甘えて」


 ガーベラは自分用に、次の買い物メモをすでに用意していたようで、いくつかに丸をつけてそのままルナに渡す。


「丸をつけたものが、特に今あると助かるものですが、お店になければ結構です。

お心遣い感謝いたします。よろしくお願いいたします」


「うむ、確かに承った──────」


◆御礼

読了ありがとうございます!

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完全独立スピンオフ短編

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