第27話◆ヒント
◇
火曜日────流行病にすっかりやられてしまったハイディアは、ベッドにダウンしたまま。押しかけてきたルナはベッドに手をかけ、ハイディアにニコニコと話しかける。
「なあ主よ、魔力の使い方について相談なんじゃがな」
「頭が働いてないんだよ──────。
今度に────うへぇ、つらい────」
「ふむふむ、難儀じゃのう。
それで霧化というのは──────」
「続きは明日にして…………」
「そうだなそうしよう。その前にあと一つだけ。
主の魔力錬成なんじゃが、我の仮説では────」
「し、しんどい…………」
ノックの音がして、ガーベラがドアの外から声をかける。
「あの……ルナ様。差し出がましいようですが、ハイディア様もそろそろお休みになられては……」
「そこをなんとか────。我はあの晩、ハイディアに寝かせてもらえんかったからのう。その分、今は少しでも我儘を聞いて欲しいのじゃ」
ルナがわざとらしく、布団の上からハイディアに抱きつくように手を回して、ガーベラに見せつける。
「…………大変失礼いたしました。
それではキッチンに控えておりますので、何かあればお声掛けを……」
頭がぼーっとして、怒る気にもならない。
「ハイディア、頼むあと一息なんじゃ」
「……うへぁ」
◇
………………
「うむ、さすがは主。熱に浮かされておるようで、しっかりと論理的にまとまっておる。
理屈が腑に落ちた。いや、コツを掴んだというべきか……」
「それは……よかった……寝かせて……」
「うむうむ、お礼に何か買ってきてやるとしよう。何か欲しいものはあるか?」
「──────静寂」
「んん? よく聞こえんかったぞ。
それはどんなものじゃ? 味はどんなじゃ?」
「…………まかせる」
────パタン
ハイディアは、ちからつきた。
「相分かった。味は任せてくれ────」
もはやハイディアから返事はなかった。深い眠りに落ちている。まるで屍のようだ。
◇
「ガーベラよ、先ほどはすまなかった。
ハイディアとの会話に熱が入ってしまってな。何分、出会ったばかりで、よく聞かんと掴めないことだらけなんじゃ」
「こちらこそ、お二人の時間に差し出がましい真似を……大変失礼いたしました」
「そう固くなるでない。時間は少し遅いが、買い出しに行ってこよう。ハイディアからは何を頼まれたっけか……せり……しゃく?」
「せり?──何ですか」
「うむ──────。
勢いで請け負ってはみたものの、ハイディアも熱でフラフラしとるし、我もあまり食には詳しくなくてのう。そうそう、味は任せたと言っておったかのう」
「風邪だと……そうですね。せり……せり……?」
ガーベラがピンと来た顔で手を叩く。
「あっ! ゼリー……とか?」
「おおっ……間違いなくそれじゃ!
ゼリーなら知っておる。冷たくて甘いプルプルじゃ。辛くてもぷるるん──と食べられるな。
さて続きは『しゃく』の部分じゃ。推理小説で鍛えた我の名推理を、今こそ披露する時じゃ。
ゼリーしゃく、ゼリーしゃく、ゼリーひゃく……うむ、数かもしれん。
ゼリーを百個──────」
「さすがに百個は……多いのでは……?」
「うむ、確かに。
ゼリーしゃく、しゃく。
足腰矍鑠、余裕綽々《しゃくしゃく》……
うーん、なんか、しゃくしゃくしてるゼリーなんてのはあるかのう」
「果実が入った、さっぱりしたものがあるかと思います。もしかすると、さっぱりとしたフルーツのもの……かも?」
「ガーベラ、お主やるな。さすがはハイディアの従者といったところじゃ……!
差し詰め、しゃくしゃくは林檎か梨といったところか」
「素敵なチョイスです! それなら高熱でも美味しく召し上がれそうです。絶対お喜びいただけますよ!
あと────ハイディア様は、葡萄を昔から好んでおられました。もしよろしければ、そちらも買ってきていただけますか」
「うむ、ではガーベラと二人で決めたということで見繕ってくるとしよう」
「────いえ、葡萄も、よろしければルナ様が選んだことにしてください」
「えっ──────?」
「おそらく、ご自身で話されていたしゃくしゃくしたもの以外に、頼んでいない好物をルナ様が買ってこられたら、ルナ様のことを今以上に、もっとお近くに感じられる気がします」
「ガーベラ……」
「もちろん、万が一嫌な顔をされたら、そのときは私のせいにしてください。
でも、ハイディア様がそんな方でないことは、私が──いえ、私もよく分かっておりますので」
ガーベラは変わらない笑顔を見せている。
「────ふむ。ハイディアがあのとき、大慌てだった意味がわかってしまったかもな」
「どうかされましたか?」
「いや────なんでもない。
ガーベラの厚意、謹んでお受けしよう。
ところで、ハイディアの看病に付ききりだと、買い物に行けず、食材なども困っておるじゃろう。
卵か? 野菜か? なんでもいいぞ。できればメモを渡して欲しい。こう見えて力持ちゆえ、遠慮なく書いてくれ。どうしても持てなさそうなら無理はせんから、くれぐれも遠慮なくな」
「では────お言葉に甘えて」
ガーベラは自分用に、次の買い物メモをすでに用意していたようで、いくつかに丸をつけてそのままルナに渡す。
「丸をつけたものが、特に今あると助かるものですが、お店になければ結構です。
お心遣い感謝いたします。よろしくお願いいたします」
「うむ、確かに承った──────」
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