第26.5話◆夢うつつ
◇
月曜の夜、学校をサボってルナと一日、俺にまつわる話やら魔力論やらを散々喋り倒した。そして、ガーベラと顔を合わせるのも気まずいので、こっそりと帰宅し、ガーベラに見つからないよう、風呂に向かう。
湯もきちんと沸かしてくれている。俺は、何をこそこそしているのだと、自分が情けなくなる。気が重いが、風呂から出たらきちんと話そう────。
しかし今日は随分と冷えたな。身体の芯まで湯が沁みるようだ。
熱い湯に入っているはずなのに、不思議と身体が暖まらない。それどころか────いや、これは悪寒だ。普段は魔力で身体を強化しているため、風邪などひかないから忘れていた。
あ……やばい……クラクラしてきた……
早く服を着て……よし、部屋に……ベッドに……あれれ?
◇
「ハイディア様、ハイディア様!」
「ガーベラ……?
うっ、寒い……身体が震える……」
「廊下で倒れてしまわれたようで……慌ててお部屋までお連れしましたが……ご無事ですか……?」
「────すまない」
「何を言ってるんですか。熱もありますし、こんなに身体も震えて……」
「……違う。
昨日の夜から────君のことを避けるように逃げてしまっていた。
本当は違うって、言い訳なんかして、君に不誠実な態度を取ってしまっていた。
すごく、自分が恥ずかしいよ」
「何を言っているんですか。そんなこと、どうだって────」
「熱にうなされているこの状況では、それもまた誠実とは言えない。この風邪が治ったら、ゆっくり君に話すよ。彼女のことも、きちんと紹介する。
ただ、君に嘘をついた訳じゃないことだけ────」
ベッドに倒れてしまった。ひどい眩暈だ。
「わかってますよ。大丈夫です。わかってます。
私こそ、ろくに話も聞かず、すみませんでした……」
────ああ、ちゃんと話せばよかったんだ。こんなに簡単なことなのになあ。これで少しは分かり合えたのかな。
「おかゆを作ってきますね。たちの悪い流行病かもしれません。明日にはお医者様を呼びましょう」
「ああ、頼む────」
「あと……ハイディア様、ガールフレンドの子、すっごく可愛い子だと思います。今度きちんと紹介してくださいね」
前言撤回、分かり合えてなかった。
光に敏感なせいか、いつもより眩しく見えるガーベラは、パタパタとキッチンに向かっていった。
◇
あれからどれくらい寝たのか……。ダメだなこれは……天井がぐるぐる回ってる。これは転生して以来の知らない天井だ……。心臓もバクバク言ってるぞ、動悸かこれ……。
なんだか寒いし、なんだかすごく寂しい。
ガーベラは……ガーベラ……ダメだ。金縛りみたいに声も出せない、指ひとつ動かせない……目も開かなくなってきた……
ああ、ガーベラの声か……
ほんと可愛い声してるよな、落ち着くな……
「ねえ、ハイディア様。
私、本当はすごくびっくりしたんです。
当たり前のことなんですけどね、ハイディア様のような素敵な男の子に、可愛いガールフレンドができるのなんて」
なんだこれは、夢か……ガーベラの声が……
右手だけが、少し暖かいような……安心感が……
「でも、少しだけ……
うん。少しだけ、複雑な気持ちだったんですよ。小さい頃から、ずっとお仕えをしていたハイディア様が、私の知らない人になってしまったみたいで……
あーあ…………
このまま………………」
気がついたら朝だった。
すっかり熱は下がって──なんて都合のいいことを、話題の流行病が許してくれる筈もなく、熱は更に上がっていた。ガーベラが呼んでくれた医者曰く、四、五日は熱が続くらしいそうだ。
人が魔力で身体を強化できるなら、魔力に強いウイルスも生まれるというロジックらしい。
向こうも生存をかけて進化をしているということか、なるほど理にかなっている。しかし、しんどいな────。
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