第24話◆ランクアップ〜勇者パーティに魔王がいて〜
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フロストバイトは防御力と素早さに秀でている狡猾な蛇の魔獣である。相手の攻撃を躱し、受けつつ、不足する攻撃力を魔力の溜めで放つ『凍結ブレス』の破壊力で補っている。
今回は暫定Cランクとされている【誓いの夜明け】の昇格審査を兼ねて、ギルドから指定討伐を請け負っていた。
放出された何度目かのフロストバイトの凍結ブレスを、フロントに立つアルヴァンの【ヴァイス・シールド】で受ける。
受けきった後はネージュが、次のブレスまでの溜めの間に、剣で攻撃を仕掛ける。イーナの【ホーリーアロー・三の矢『炎』】で、フロストバイトの俊敏な動きを乱して、規則性をもたせる。
そして俺は【ミスティ・フィールド】でフロストバイトの放つ冷気を中和しつつ、適宜バフとデバフをかけていく。
「ネージュ、来るぞ!」
【ミスティ・フィールド】は敵の行動把握にも役立つ。これは魔力を粒子化して索敵する俺のテクニックの応用だ。
「わかった────」
ネージュがアルヴァンの背後に入る。
コオオオオオオオオオッ──────
フロストバイトのブレスをアルヴァンが受け切り、完全に見切った今度は、『ミラーブラスト』で反射する。ここまで受ける一方だった盾による理外の反撃に、驚いたフロストバイトが身を躱す。
フロストバイトの回避した先に、イーナが炎の矢で足止めをする。
「ネージュ、仕留めて!」
俺はイーナの合図に合わせて、フロストバイトに数十倍の重力をかけつつ、甲皮を覆う魔力を弱体化させ、ネージュにもバフを重ねがけする。
ネージュがフロストバイトの氷の甲皮を両断にし、討伐を成功させた。
◇
「まあ、見事なもんでしたよ────」
ギルドにて、今回の指定討伐の監督官を務めたバリーが、ギルドマスターであるオールムに報告をする。そして同行したAランクハンターのカラサデも同意する。
「学生、それも結成したての一年生パーティーの動きじゃない。実践経験をどこで積んだらああなるのか。可愛げがまったくない。
戦術も、個々の役割分担も見事だった。誰だよ、勇者のお友達枠とか言った奴。全員が一線級だったぜ。
俺の出番はなかったよ」
昇格審査のために同行するハンターは、劣勢で審査不能と判断した際、敵と与しやすい戦闘班と、パーティごと撤退させる補助班を組み合わせて選出される。
戦闘班であるカラサデが自身の出番がなかったと語るのは、それだけで合格に等しい評価をしたことと同義だ。補助班のバリーも同調する。
「そう、ネージュとイーナはわかるんだ。すでに二人でペアとしての戦果も上げているし、そもそも国と聖教会のお抱えで、秘蔵っ子扱いだったからな。
だが、あとの二人も見事なものだった。アルヴァンは盾でフロストバイトのブレスを完璧に受けていたし、何度目かには見切って跳ね返していた。戦闘センスありますよ」
「俺はハイディア────あいつのバランス感覚に驚いた。決めの瞬間、フロストバイトの弱点を見抜いて、一点にデバフを集中させていた。指示はネージュが出しているようで、奴が誘導している節がある。何より戦局全体を俯瞰して見ている。多対多の局面で慣らせば、大規模討伐にも応用できそうだ。
目立たないが、ああいう奴がいるパーティは伸びる。ハイディアは俺のパーティにも欲しいくらいだ」
「ネージュもきちんとデバフのかかった箇所を見抜いて、一刀両断にしたように見えたな」
「気づいたか? その瞬間にハイディアはネージュへのバフも重ねがけしていた────。いかにネージュ・エトワールとはいえ、あの硬いフロストバイトを一刀両断とは、目を疑ったぜ」
「────以上です、オールムさん。実力面だけで見れば、Aランク相当のパーティと俺は評価しました」
「俺も同意だ。憎たらしいくらい優秀だよ」
二人の報告をもって、ここまで黙って聞いていたオールムが口を開く。
「うむ、二人ともご苦労だった。
ではパーティとして、【誓いの夜明け】はBランク昇格として、今後の状況を見て、段階的にAランクに引き上げていくとしよう。
次にソロとしてのランクだが、ネージュとイーナはすでにBランク、今回はあくまでパーティの戦果ということで、据え置きとする。
ハイディアとアルヴァンはギルドに登録したてということもあり、現状Eランクだが、ともにCランク昇格として、以降はソロの成果を勘案しつつ、改めて審査し、適宜昇格させるものとしよう」
「意義なし──────」
カラサデが頷く。一方、バリーはやや複雑そうな面持ちでオールムに進言する。
「同じく。
しかし、彼らを育てたところで、国と教会に引き上げられちゃうのが惜しいですね。
アルヴァンとハイディアがその時に一緒に引っ張られるかどうかですが、一応こっちに残るパターンを想定して、アンテナを張ってもいいものかと」
「その時は、ハイディアは俺がもらうぜ────」
「わかった。そこまでにしておこう。
【誓いの夜明け】はBランクパーティとするが、あくまで学生パーティだ。実力は申し分ないとしても、精神的未熟さは年齢相応とみるべきだ。そこを考慮して、俺たちの手で教え導かなくてはならない部分も大きい。
確かにバリーの言う通り、最終的には間違いなく国か教会に籍を移すことになるだろう。しかしギルドできちんと育てることで、国力には寄与する訳だし、実績にもなる。そのネージュたちとのパイプもできる。打算的な考え方をもってしても、それで十分としよう。
今後も継続してフォローをしていくぞ」
「了解────」
◇
カラサデが去り、オールムと側近のバリーだけが執務室に残る。バリーも着座し、珈琲を飲みながら【誓いの夜明け】の評価を続ける。
「あの気難しいカラサデが絶賛していたな」
「ええ。特にハイディアをベタ褒めでしたね。あんなにデレたカラサデ、初めて見ました」
「お前の見立ては?」
「ハイディアは目立たないですね。確かにカラサデに言われてみればそうなんですが、きちんと判断できない奴からしたら、ネージュのお友達枠と揶揄されるのも頷けるかと」
「後方支援に徹していたのか?」
「ええ────、戦闘には一切加わっていませんでしたね。討伐後にカラサデが『お前は戦わないのか』とハイディアに訊いていましたが、ハイディアは『このパーティでは、戦闘面で僕の出る幕はありませんよ』と話していました。この言葉はほぼ真実と捉えて良いでしょう。
ところで、戦闘といえば、アルヴァンは盾役でしたが戦闘力もかなり高いレベルにあるかと。
粗暴な口調ですが、反面慎重さが垣間見える。その辺りもあり、性格的には相反するように見えるアルヴァンとハイディアの話は合うようです」
「パーティ全体のバランス感も良好そうだな。ネージュはどこか楽観的というか、言い方は悪いが、自身の才能を過信する嫌いがある。慎重派が二人、それも忌憚なく意見できる学友の関係性であれば、ネージュの懸念点も軽減される。
アルヴァンは王立魔法学院のセミチャンピオンというからな。決勝では勇者ネージュに馬乗りになってタコ殴りにしたらしいぞ」
「何ですか、それ。めちゃくちゃですね……
俺、そういう奴好きですよ。仲良くなれそう」
「ふふ、そうだろうな」
バリーが思わず笑みをこぼし、オールムの表情も和らぐ。
「────勇者を取り込まんとする、何らかしらの勢力という線は捨てていいですかね」
「まあいいだろうな。一応引き続き注視はするが、今回パーティ結成を持ちかけたのはネージュとイーナからという点を踏まえ、アルヴァンとハイディアの出自にも差し当たりきな臭い点は見当たらず、現時点で裏があるとは思えない」
「その辺りは、国や聖教会がしっかり調査してるでしょうしね」
「ああ、お前からも目をかけてやってくれ。
打算的な考え方は抜きでな────」
「了解です」
◇
数日後、学内で行われたミーティングで、ネージュがパーティに報告をする。
「審査の結果、【誓いの夜明け】はBランクに昇格した。個々のポテンシャルが噛み合う良い討伐だった点をきちんと評価してもらえた結果だろう。
オールムさんからは『パーティとしてはAランクに相当する実力は疑わない。これから実績を積み上げて欲しい。期待している』と聞いている」
「早々にAランクに昇格したいところね。Aランクで指名依頼されれば、より困っている人たちのためになれる」
「まずは自分たちの腕を磨くのが先決だが、イーナの言う通りだと僕も思う。精進していこう。
そしてアルヴァン、ハイディア。君たちもソロとしてCランクに昇格が決まったそうだよ。おめでとう!」
拍手をするネージュとイーナに俺も笑顔で応じる。
「ありがとう、皆のおかげだよ────。
ソロでは戦績も上げていない俺が、Cランクになれた。その評価に見合う活躍ができるよう頑張るよ────」
アルヴァンは軽く鼻で笑うと、続いて謝辞を述べる。
「ありがとよ。本当はお前を追い越すAランクを狙っていきたいところだが、残念ながら今はソロよりもパーティの成長が優先されるべきだからな。首洗って待っていてくれ」
「よく言ってくれた、二人とも。
それでこそ勇者パーティ【誓いの夜明け】のメンバーだ。大丈夫、必ずパーティでもソロでも、皆をAランクまで導いていくと約束するよ。夕食は少し豪勢にいこう。いつもの店に予約をしてある」
この後、一ヶ月ほどの間に【誓いの夜明け】は目覚ましい活躍を見せることとなり、Aランク昇格を果たした。
◆御礼
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◆告知
『夜の王と契約魔法』はカクヨムコンテスト11にエントリーしています。(他プラットフォームにて失礼します)
https://kakuyomu.jp/works/822139839656378427
おかげさまで、新人作家の処女作であるにも関わらず、現在競合ひしめく「異世界冒険部門」で、100〜200位/1800作品と大健闘しております。
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