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夜の王と契約魔法〜ルールで縛り、契約で奪う──契約魔法で成り上がる【無双×暗躍】譚〜  作者: 皆月いつか
第2章 夜の王 編

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第22話◆結成


 一同は、時折襲ってくる魔獣を狩りながら危なげなく目的地に向かって進んでいく。

 三十分ほど歩いたところで、俺は異様な気配を察知する。


「待て、みんな────」


「どうした、ハイディア?」


「二キロメートルほど先に、強力な魔物の気配だ。それも複数いる──────」


「…………確かに、そんな気配はあるね。

だが、ハイディアはそんな先まで索敵できるのかい?」


 ネージュも朧げに気配を感じることができたようだ。


「お目当てのアスピスじゃないの?」


「アスピスではない……鳥に近いな。

動かない方がいい。向こうはこちらに少しずつ向かってきている……。

このままいくと勘づかれそうだ」


「ハイディアと同感だよ。みんな気配を消していこう」


 ネージュの指揮で、数分、身を潜めて様子を伺う。前衛に立つネージュが敵を視認する。


「あれはコカトリス、Aランクの魔物だ。

石化魔法を使う、俊敏で狡猾な魔鳥────

ハイディア、あの距離からよく気づいたね」


「ああ、だがどうする。迂闊に動くと見つかるぞ」


「しかも二体か……高速の空中戦を展開されると手に余るな。


────よし、君たちは撤退してくれ。

そしてギルドに応援要請を頼む。

二体いると護りながらの戦いが厳しくなる」


「待て、三体だ。

一体、気配を潜めながら、迂回して高速で近づいてきている個体がいる────

既に気づかれているぞ!」


 俺たちの警戒の気配に気づいた、残り二体のコカトリスも、こちらへ向かう。


「僕が止める、みんな逃げろ!」


「いや、大丈夫だ。

【ミスティ・フィールド】────」


 俺の両手から紫色の靄が溢れて、一瞬にして辺りを覆う。


「間合いに入った敵には重力のデバフをかける。逆にこちらは俊敏に動けるようにする。間合いは薄らとかかる靄で判別してくれ、相手からは濃霧に見えているはずだ────

足に魔力を込めて踏み出せば、靄を足掛かりに宙も歩けるぞ」


「…………すごいじゃないか!」


 ネージュが靄の中を駆け上がるようにして、上空のコカトリスに向かう。


 閃────────────


 ネージュの剣が前方のコカトリス二体の首を一瞬にして狩る。さすがに見事な腕だ。

 それ以上に、初見の【ミスティ・フィールド】に、ほぼ完璧に合わせてきたことに驚きを隠せない。


「アルヴァン、背後だ────」


「ああ、見えてるぜ」


 アルヴァンは、コカトリスの石化魔法を【ヴァイス・シールド】で受ける。


「【ホーリーアロー】六の矢『雷』────」


 盾の横から飛び出したイーナが、雷を纏う矢を放つ。

 矢はコカトリスを射抜くと、コカトリスは痺れて落下してくる。

 六の矢ということは、少なくとも複数の種類を使い分けるということだな。

 イーナは回復魔法専門じゃないのか。攻撃の腕もなかなかのものだ。


「ここだ! 『ミラーブラスト』」


 アルヴァンは【ヴァイス・シールド】で、敢えて受け返さなかった石化魔法を、ここで跳ね返す。


「ギィィィィッ────────」


 コカトリスは断末魔の叫びをあげると、全身が石化し、地に落ちて砕ける。


「アルヴァン、腕を上げたね……」


 ネージュはアルヴァンを称える。

 事実、【ミラーブラスト】は俺が教えた訳ではない。

 受けて跳ね返すだけだった固有魔法を、アルヴァン自身が考え、深化させていたのだ。


「ちっ、お前との再戦の時に使おうと思ったのによ」


「ふふふ、見事だったよ。

そしてハイディア。

君の能力は索敵かと思ったが────違うのか?」


「ああ、紫色の霞が俺の固有魔法だ。

範囲空間内でバフとデバフを自在に操れる。

味方が戦いやすく、敵が戦いづらいように、戦局によって調整できる。

索敵はあくまでその応用さ」


「攻撃の『瞬間』もバフをかけていただろう?

普通ならコカトリスの首を、ああも簡単に刎ねることはできない────」


「その通り。攻撃の瞬間には、タイミングを合わせてバフを重ねがけした。所謂ブーストだ」


「どうりで、私の矢もいつもよりも通りが良かった」


「俺は一人じゃ何もできない。

だから他を活かせるよう、常に目を配っているだけの話さ────」


「謙遜しないでくれ、素晴らしい固有魔法だ。これは全員の勝利だよ。


そして……君たちさえ良ければ、この四人でパーティを組まないか?

いや、是非組んで欲しい!

イーナもそう思うだろう?」


「……私は今日の同行自体、当初は気が乗らなかったの。ごめんなさい。

今までスポットで組んだ人たちは、ネージュにおんぶに抱っこで、全然一緒にいる意味がなかった。

それに、アルヴァンはフレッシャーズカップでの戦い方の件もあったから────」


 俺は、件の大会でネージュをタコ殴りにしたアルヴァンに視線を送る。

 アルヴァンはバツが悪そうに外方を向く。


「────でも今日は初めて、相乗効果というか、それぞれが噛み合う感覚を覚えた。

これが共闘なんだと思った。

できれば……私からもお願いしたい」


 二人の視線はなぜか俺に向く────。

 俺は手のひらを差し出す形でアルヴァンに向ける。


「俺はアルヴァンに連れてこられた身だ。

決断はアルヴァンに任せるよ────」


「勇者様と聖女様からのお誘いだろ?

組まない奴はいねえよ。

願ったりだ、よろしく頼むぜ」


「断ったら引っ叩いていたところだ。

足手まといにならないようにするよ、よろしく」


 俺とアルヴァンが差し出した手をネージュが両手で包むように結ぶ。


「ありがとう、よろしく頼むよ。アルヴァン、ハイディア。


ところで──────


コカトリス三体が初陣の獲物か。

今日はもうここまでにして、ギルドに討伐報告とパーティの申請に行こう。

週明けには、学内大会のパーティ戦にもエントリーしないとな」


「ねえ、ネージュ。

学内大会のパーティ戦、もう締め切っちゃったわよ」


「あ、そっか…………

まあいい、多少無理にでも、ねじ込んでもらおう」


「おいおい……勇者様も、案外パワープレイなんだな」


「それをアルヴァンが言うか────」


 皆で笑い合う。

 ネージュはアルヴァンに対して、しこりは残していない様子だった。

 ここまで、俺が描いた通りに事が進んでいる。



 一同はギルドに到着する。


「いらっしゃいませ。ネージュ様、イーナ様。本日はどうされましたか?」


 出たな、お役所仕事────。今日はハイドの姿でないから、当然の如く、俺のことは認識していない。


「パーティの登録申請と、討伐証明を提出に来ました」


「承知しました。担当のロザリアの窓口にお通しします」


 ネージュの担当もロザリアか。今やギルドでトップクラスのサポーターだからな。

 しかし、ひょんなことからロザリアに会えることになったな。何故か得したような気分になる。


 ハイドのときと同様、待機列とは別待遇で、すぐに担当に通される。


「ネージュ様、イーナ様、ついにパーティを結成されるんですね。

おめでとうございます!!」


「ありがとうございます、ロザリアさん。

今日はパーティとして申請をします。

初回の討伐も済んでいるので、証明部位も併せて提出します!」


「わかりました!

では、先に討伐部位をご提出いただいて、私が事務処理をしている間に、申請用紙の記入をお願いします。

そちらのお二人はギルドカードはお持ちですか?」


「二人とも持ってるよな?」


 ネージュが俺とアルヴァンに問いかける。


「一応な──────」


「では戻ってくるまでに、皆さんのギルドカードもご用意しておいてください!

お時間三十分ほどかかっちゃいますが、宜しいですか?」


「はい、大丈夫です。

これが討伐証明──コカトリス三体の鶏冠と魔核です。

管理番号は、いつもながら野良で狩ったのでわかりません。すみません」


「え、えええ──────!?

凄すぎます…………パーティ最初の討伐が、コカトリス三体なんて!


オールムさん居たかな?

ええっと、とりあえず書類を書いてお待ちください! すみません!!」


「こちらは大丈夫、あまり急がないでくださいね」


 ネージュが勇者ムーブのキラキラ笑顔を放つ。

 しかしロザリアは気にせずに、わたわたと行ってしまった────



「おい……なんか可愛いな、あの人」


「君にもわかるか、アルヴァン。

ロザリアさんには、大人なのに守りたくなる可愛さがあるよね」


 まさか、ここでこの二人が分かり合うとは────。


 ロザリアは本当にすごいな、おじさんキラーだけでなく歳下キラーでもあるのか。

 ふふ、だが気づいた方がいい。イーナが睨んでるぞ、ネージュよ。

 なんだ、案外面白いな、このパーティは。



………………


「お待たせしました、オールムさんを連れてきちゃいました!!!」


 ギルドマスターのオールムが顔を出す。


「やあ。まずはネージュ、イーナ、パーティ結成おめでとう。


新顔の二人もこれからよろしく頼む。

ネージュたちに見合うメンバーは、そうそう居ないからな。

ギルドマスターとして、君たちのこれからに大いに期待している」


 ここまでにこやかに話したオールムの顔が急に真剣なものになる。


「そして、コカトリスだが…………

ギルド未登録────平たく言うと、ギルドの管轄領域において、把握をしていない魔獣ということになる。

君たちはどこでこいつらを見かけたんだ?」


「ガラナダ山の中腹────Bランクのアスピス討伐依頼が出ている、その少し手前あたりです」


「まだ交戦の跡が残っていると思う。

こうなることを見越して、魔力を込めたアンカーを打っておいた。

だが現場を見るなら、雨が降る前が良い────」


 ネージュの答えに、俺が補足しておく。


「さすがネージュのお眼鏡に適うだけあるな。是非アンカーを頼りにさせてくれ。


────最近、登録のない高ランクモンスターの出現を複数確認しているんだ。

君たちの学友が追っていたとするケルベロスもその一つでな。


今回のことを受けて、改めてギルド全体で注意喚起をしておこうと思う。

君たちの実力は信じている。だが、くれぐれも気をつけて討伐に当たってほしい」


 俺たちは黙って頷く。


「それにしても、初陣にしてコカトリス三体の討伐、素晴らしいことだ。

規格外のハイド・ムスブルグを彷彿とさせる活躍だな。

パーティ結成に際して各自色々と入り用だろうから、報酬は即金にしておいた。

もちろん色を付けている。帰りに受け取って帰ってくれ」


 オールムはそれだけ告げると、足早に仕事に戻っていく。

 あの様子だと、コカトリスの件で現場調査の指示を出した後で、専門家と議論だろうな。ご苦労なことだ。


「ではでは、お待たせしました。

先に報酬からお渡しいたしますね。予め四分割しておきました。

リバランスがある場合は、別室を用意しますので、そちらでお願いします。

討伐、本当にお疲れさまでした!」


 ロザリアは報酬を差し出すと、ペコリとお辞儀をする。


「君たちに異論がなければ、ずっと四分割でいこう。

その時々でパーティへの貢献度に波があったとしても、いずれ均されると僕は考える。

パーティの運営資金は、僕の所属である王国から出るはずだから気にしなくて良いよ」


 俺もアルヴァンも頷き、それぞれが分けられた袋を仕舞う。恐らくロザリアはネージュの性格を分かった上で四分割していたのだろう。流石の気遣いだな。


「────では、パーティの登録に移りますね。お二方、ギルドカードを失礼します。


えーと、

アルヴァン・クルーガーさん。

ハイディア・ソルティレージュさん……


あれ……ハイディア……さん?」


「初めまして──────

どうかされましたか?」


まさか何か勘づいたのか……


「いいえ、なんでもありません! 失礼しました。

それでは四人でパーティの登録をしますね。

パーティ名は決まっていますか?」


「そうか。僕たちのパーティ名、どうしよう……」


「無理にお決めにならなくても大丈夫ですよ!

もし決まったらギルドカードに刻印しますので、決まったら教えてくださいね」


「パーティ名か……」


 パーティ名というワードが、勇者アンテナに引っかかったのか、ネージュが瞳をキラキラさせている。


「追って決めればいいんじゃない?

今日急いで決めなくてもいいと思うけど……」


「そうだね……確かにこの場で急いで決めるようなことじゃない。僕が考えておこう」


「いいよ、んなもん要らねえだろ。

どんな名前つけても、傍からみたら『勇者と愉快な仲間たち』だろうからな」


「そう言うな、きっと相応しい名前を考えてみせるさ」


 ネージュはキラキラしてるからな────

 ここは一つ、破壊力があるやつを考えてくれると期待しよう。

◆御礼

読了ありがとうございます!

面白いと思っていただけたら、ぜひぜひブックマーク、リアクション、評価、感想/レビューをいただけたら、ものすごく励みになります。よろしくお願いいたします。


◆告知

『夜の王と契約魔法』はカクヨムコンテスト11にエントリーしています。(他プラットフォームにて失礼します)

https://kakuyomu.jp/works/822139839656378427

おかげさまで、新人作家の処女作であるにも関わらず、現在競合ひしめく「異世界冒険部門」で、100〜200位/1800作品と大健闘しております。

あなたの一票で、大きな支えを得られます。ログイン、フォロー/評価というお手間をかけてしまいますが、是非あなたの手で作品を育てていただけると、嬉しいです。何卒、よろしくお願いいたします!

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