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夜の王と契約魔法〜ルールで縛り、契約で奪う──契約魔法で成り上がる【無双×暗躍】譚〜  作者: 皆月いつか
第1章 王立魔法学院・入学 編

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第20話◆決着〜サシオサエ〜


 マダガルは戦慄していた。


(なんだ……こいつは…………)


────侯爵家の嫡男であるマダガルが初めて見る、勇者ネージュにも感じることのなかった、圧倒的な格上の風格。


(この場でこいつを倒さなくても、外に出られさえすれば何とかなると思っていたが────。

こいつは本気だ……。本気で俺様から全てを奪い取ろうとしていやがる…………)




「おい、ハイディア。マダガルのやつ悪巧みしてやがるぞ、腹立つ顔しやがって」


「そう虐めてやるな。

お前がこの勝負を見届けろよ」


「わかってる。俺も一度、お前の本気が見てみたかったところだ」


「本気だって? 一割で釣りがくるよ、まあ見ておけ────」


 マダガルたちは戦闘態勢に入る。


「マダガルよ。アルヴァンがお前らに情けをかけておいて、俺が何もないというのも他人行儀だな。

俺からも情けをかけてやるよ。

泣きはもう一回まで聞いてやる。安心してかかってこい」


「俺様を見くびるなよ。ハイディア……!

いけ、エドワード!」


「ミスティ・フィ──むぐっ……」


 詠唱を始めたエドワードの口を左手で押さえて、鳩尾みぞおちを右手の拳で突き上げる。


「なっ……」


 次のステップで身体を捻り、ニューロの顎にバックナックルを入れて意識を飛ばす。

 側で微動だにできずにいるダズリーを蹴ったその足で、マダガルの背後に回ると、頭を抑えて首に親指を当て、爪で首を斬るようにゆっくりと線を引く。


「終わりだ────。せっかくアルヴァンがお膳立てしてくれたのに、五秒もかからなかったな」


(嘘……だろ…………)


「はっはっは、一割どころじゃねえ。

魔力すらろくに使ってねえじゃねえかよ」


「さて、泣きの一回────受けてやろうか?」


 マダガルは再び地を舐めることになった。

 ダズリーに回復をさせながら、マダガルが物言いをつける。


「ハイディア、貴様は俺様たちの手の内を知り尽くしている。ずるいぞ!」


「ははは! ガキの喧嘩かよ」


「いや、待てアルヴァン。確かに一理あるな。

今度は全ての詠唱を待ってやることにしよう。

あと倒すのは補助のエドワード──いや、回復のできるダズリーを最後にする。お前らは回復をかけながら戦うといい。

それでどうだ?」


「舐めるなよっ……!

お前が見ていないうちに、俺たちのフォーメーションは完璧に仕上げた」


「ずるいと言ったり、舐めるなと言ったり、忙しい野郎だな」


「さっき首を切られておいてどこが完璧なんだよ────。

まあいい。倒す順番はニューロ、マダガル、エドワード、ダズリーの順にする。

ダズリー、回復魔法頑張れよ────」



「ほいじゃ、泣きの一回。はじめ!」


 アルヴァンが戦いの幕を落とすと、エドワードが【ミスティ・フィールド】を展開する。


「バフもデバフもそこそこ使えているな。

ちゃんと身体が重くなってるぞ、エドワード」


「後悔するなよ! 【メテオ・ドラグーン】」


 ニューロもかなり鍛錬を積んだようだ。

 バフの効果も相まって一発一発の威力が増している。

 この隙にマダガルが俺に斬りかかる。剣技はかなり洗練されてる。【メテオ・ドラグーン】の落ちてくる方向に追い詰めるように剣撃を重ねる。


「かなりサマになっているじゃないか。

正直驚いている────やるなマダガル!」


「まだまだだ、さっきの倍だ。ニューロ」


 ダズリーが回復をかけている。


「【メテオ・ドラグーン】!!」


 先程の二倍──いや三倍ほどか。きちんと味方を避けて撃っている。

 マダガルもバフを受けて、俺の懐に飛び込む。


「殺った!!!」


ギィィィィン────────


「────────!!!」


 マダガルの【強欲の剣】を魔力を纏った拳で砕く。

 俺は降り注ぐ龍線を片手で弾き飛ばしながら、ニューロの間合いに入り、再び手刀で意識を狩り取る。


「くっそおおおおおお!!!」


 再び【強欲の剣】を発動させたマダガルは俺に斬りかかるが、拳で砕ける以上、魔剣は何の意味もなさない。


 俺はマダガルの鳩尾を思い切り蹴り上げると、マダガルはそのまま気を失う。


 俺はダズリーが回復したニューロに視線を送ると、ニューロは手を上げて降参の仕草をする。


 俺はエドワードの元に向かう。


「油断したな……!」


 ニューロが【パルス・ドラグーン】を俺の背後に向かって放つが、俺は振り向いてそれをかき消す。

 再びニューロの元へ行き、拳骨で殴り倒す。


「く、くるなっ……」


 デバフを強めて、抵抗するエドワード。

俺は魔力を瞬間的に放出すると、【ミスティ・フィールド】の霧が一瞬にして晴れる。


「霧は風で散ることもある。

もう少し濃度を上げたほうが良かったな。

────だがもういい、ここからは俺が上手く使ってやる。

入学した時、話しかけてくれてありがとな」


 顔面を殴りつけると、エドワードは数メートル先まで転がっていく。


「もう無理だ……降参だ…………」


 マダガルの回復を諦めたダズリーが両手を上げて終わる。


 俺は取立を強制執行する。これで八人分の固有スキルが、実質的に俺のものになった。


 連中の固有スキルの枠を使っているので、完済するまで奴らの枠は新たに使えないし、そもそも魔力も全て俺のものになるから、魔法自体が使えない。

 複利で増え続ける、貸した魔力は、すでに利息分すら返済できないほどに膨らんでいる。こいつらが生きている間は、生成する魔力はすべて俺のものとなる。


「それで全力の二割か?」


 アルヴァンが問いかける。


「いや、結局一割も使っていない。

もう少し上手く戦って欲しかったな。

固有スキルの生みの親としては────」


「お前も大概だな」


「アルヴァン、ありがとう。

どこかで俺も自分の考えた固有スキルの使い手と戦いたいと思っていた。

お膳立てをしてくれたおかげで、奴らと戦えたよ。貸し付ける魔力も増えたしな」



「おい…………」


「よう────マダガル、目覚めたか?」


「金なら幾らでも出す。魔法も諦めるから、俺様をここから出してくれ」


「無理だな、奴隷だと言っただろう」


(ぐっ…………! いや、待て……。

俺が魔力も固有スキルも奪われた事実を父上に伝えれば、こいつを実家ごと消し去ることも可能か。

そうだ。俺の魔力はその過程で獲り返せばいい。

父上には見限られるかもしれんが、背に腹は代えられん。

こいつはただでは殺さん。一族郎党皆殺しにしてやる。

生来覆せぬ身分の差、知らしめてやる……!)


 憎悪に塗れた顔をしていたマダガルが、急にしおらしく態度を変える。


「わかったよ、俺様も男だ……約束は守ろう。

明日からお前の手足となって仕えようじゃないか」


「────え?」


「…………え?」


「いや、明日からじゃなく、もう既に奴隷なんだろ。手足となる、というのはよく分からないのだが────」


「学園内外で俺様たちを奴隷のように扱うんじゃないのか?」


「────本気で言ってるのか?

奴隷のようにじゃなくて、奴隷なんだから、

もう学園に行くこともないだろう?」


「……は?

お前は……俺様たちをどうする気だ……?」


「だから奴隷にするんだろ?

アルヴァン、こいつ言葉通じないから代わってくれ────」


「お前たちはハイディアの奴隷になるんだ。

奴隷って知ってるか? お家に帰ることも、学園に行くことも、好きにお外に出ることもできないの。オーケー?」


「なっ、なんだと……貴様……

そもそも俺様たちを奴隷なんて、許される訳が────」


「────お前らはメイドを奴隷呼ばわりして、代わる代わる嬲っていたじゃないか。

良かったな、彼女たちの痛みを、少しは知ることができるかも知れない」


「俺様たち八人が失踪したとなれば大事だぞ…………。

奴隷なんて…………隠し通せる訳がない。

必ず誰かが………………

ああっ…………!」


 マダガルが震える。どうやら思い出したようだな。俺が答え合わせをしてやることにする。


「────魔犬ケルベロスに攫われた女性を助けるために、果敢にも挑んでいった学生パーティがいたらしい。

『ここで死んでも後悔はない』と言う者と、

『学院にこのことを連絡してくれ』と言う者がいたとか──────。


学院から連絡が国に行き、今時分、王国騎士団が懸命に探し回っているはずだ。


────だが、探しても見つからない。

遺された魔力を辿っても、途中で途絶えてしまっている。

探せども探せども、攫われた女性も、若きパーティも、魔犬ケルベロスも見つからない。

さあ、導かれる答えはどうだマダガル。

俺に行き着く奴が果たしているか?」


「ふざけるなよ……詐欺じゃないか。

俺はお前の言う通りに……

そうだ……! ハンターギルドだ!

ハンターギルドに討伐依頼の登録をしたはずだ!

不審に思ったギルドが調査するはずだ……!」


「それはお前自身が登録したのか?

もしくはハイド・ムスブルグを信じて、ギルドの助けを待つならそれもいいだろう。

だが、そもそも最初からケルベロスの討伐依頼なんてあったのだろうか────俺には分からないな」


「まさか……奴もお前の……」


 俺は答えの代わりに笑ってみせる。


「さあ、話は終わりだ。奴隷契約をしてもらうぞ────」


「ふざけるな。奴隷契約なんぞ結ばんぞ、断固拒否する!」


「奴隷契約は俺の専門じゃない。外法とでもいうか、呪術に近いからな。

────キャット、出てきてくれ」


 褐色肌に派手な刺青、筋肉質をボンデージで包むドラァグクイーン姿の巨漢が奥の扉から現れる。


「ハイディアちゃん、焦らし過ぎぃ♡

今日は本当に大量ね────」


「なんだこの気色悪い野郎は?」


「気色悪いだなんて、照れる〰〰♡

アタシはキャット、アーティストをしてるの。これからよろしくね♡」


 キャットは笑いながら、マダガルの顔を正面から殴りつける。マダガルの前歯が折れて転がる。


「威勢の良い子は嫌いじゃないわ♡

でもアンタたち奴隷なんだから、舐めたこと抜かしてると地獄を見せちゃうわよ──」


「キャット、そのくらいにしておけ────

マダガル、すまないな。キャットがこれからお前たちを飼育、管理してくれる」


「待て、ハイディア。頼む…………」


「お終いだ。

楽しかったぞ、マダガル────」


「さーて、アンタたちもアタシ色に染めてあげないとね♡」


【スピリチュアル・タトゥーイスト】

 キャットの固有スキル。

 精霊の力を借りて、隷属紋を対象の身体に彫る。禁則を始めとした多様な呪紋は、対象にルールを遵守することを強制される。

 なお、王国内だけでなく全世界において、隷属紋を使用した奴隷契約は禁忌とされており、使用者には死よりも重い罰が科せられる。

***


 キャットの手が目にも留まらぬ速さで動き、瞬く間にマダガルら四人の額に黒一色のタトゥーが彫られる。


「これは隷属紋────。アンタたちは主人であるハイディアちゃんに絶対服従するの。

今後、自分の意思で死ぬことも赦されないわ♡」


「相変わらず、惚れ惚れする腕前だな」


「やだもう────♡

ハイディアちゃんが私の一番の理解者よ〰〰」


「お世辞じゃないぞ。

キャットは俺が今までに見た中で、最も崇高なアーティストだ。お前たちは身体にその作品を刻んでもらえるんだ、光栄に思え」


「はい、ハイディア様!」


 四人は立ち上がり、俺に向かって敬礼する。


「今日からお前たちは、俺に魔力を捧げるだけの贄だ。とにかく魔力量を増やすことだけを考えろ。

そして、キャットの言葉は俺の言葉だ。イエス以外の返事は赦さない」


「はい、ハイディア様!」


「この子たちもじっくり私の作品に仕上げてあげるわ♡」


 四人の意識は手を加えずそのままにしている。顔が怯えたままなのはそのためだ。


「恐ろしい魔法だな…………」


 アルヴァンが身震いする。


「キャットの才能に惚れてしまってね。

個展は勿論、博物館のようなものも建てたい。そのために俺がしなくてはいけないことが沢山ある。いや、博物館よりもっと小規模な方がいいか。

まあ、アルヴァンも楽しみにしておけ────」


「良い趣味してるぜ、本当に────」


 俺は【ハイドアウト・ドア】の中に、キャットのアトリエ兼、奴隷の飼育室を作る。

 ベモが室内にインフラを引けないか試行錯誤をしていたようで、風呂・トイレ・水道が使えるようになっていた。空間魔法の応用なのだろうか、とり急ぎそのまま使わせてもらうことにする。

 やはり固有スキルが習得者の欲望にリンクすると、熟練度が跳ね上がるものだな。


 キャットとアルヴァンには合鍵を持たせた。秘密基地みたいでわくわくする。


 今回、俺のものとなった八つの固有スキルは、俺にとって思い入れの強いものばかりだ。

 下衆どもを契約で縛り、魔力や固有スキルを手にする。やはり契約魔法こそが、この世界で生き抜く鍵だ。


 俺は思い描いたシナリオの通りに事を運べた充実感を噛み締めて、帰路についた。




 王都では、王国騎士団による聞き込みが行われていた。


「────すると、魔犬がうちの店に飛び込んできたんです。

ええ、女の人を攫っていきました。一見いちげんさんなので顔はちょっと……

それをマダガルくんが助けようと追っていきましてね。

人数は────店には四・五人で来ていたと思います」


「魔獣が街の中を駆け回ってたの。

殺される────って皆叫んでて……

誰かがあれはケルベロスって言っていた。

首は二つしかなかったから違うと思うけれど、すごい魔力を感じたわ」


「勇敢な青年たちが追っていきましたな、合流して七、八人くらい居たと思います。

あの子たち皆、見つからんのですか……

勇敢なのに、悲しいことです」


 最後の一人は顔を変えた俺で、不明人数の辻褄合わせのため、聞き込みを多少誘導した。

 マダガルたちの失踪は魔獣絡みだと、誰もが疑念を抱かなかった。


 もともと人望もなかったようだし、学園で残念がっている奴はいない。

 マダガルの実家も、早くも次男に神輿を担ぎ替えようとしていると聞いた。あれだけ必死に居場所を作ろうとしていながら、哀れなものだ。

 偉大なる野心家であるのは悪いことではなかったのだが、奴には品性が無さすぎた。



「アルヴァン────俺とパーティを組んでくれ」


「なんだよ、藪から棒に……」


「マダガル達のほか、上級生も含めて貸し付けていた魔力と固有スキルは概ね回収した。これである程度の材料は揃った。勇者を獲りにいくぞ────」


「おおっ、ついにか! あいつには、いつぞやの借りを返してやらなきゃな」


「俺は、学院内ではエドワードから奪った【ミスティ・フィールド】を固有スキルということにする。

もともと俺の考えたサポート魔法の中では随一の出来だからな」


「裏方でいいのか?」


「ああ、詳細は追って話す────」


「パーティと言うからには、あと二人か三人────どうするかだな。

あてはあるのか?」


「もちろんさ、まずは──────」


いつもありがとうございます。

第9話からスタートした、マダガルとの契約ストーリーが終わり、第1章が完結となります。

第0章と合わせて、ここまでが一つのタームとなります。


第2章【夜の王 編】では、ここで差し押さえたスキルを使って、一気に加速していきます。

学園のトップカーストであり、ギフテッドである勇者ネージュへのハイディアの接触────

そして来たるボーイミーツガール。ヒロインの登場。ハイディアの夜の王としての拝冠。

お口に合いましたら、このタイミングで、ブクマと評価をいただければ嬉しいです。


別プラットフォームにて恐縮ですが、カクヨムコン11に挑戦中です。もし面白いと思っていただけたら、カクヨムにて、作品フォロー、第1章完での★評価にて、一緒に作品を育てていただけたら嬉しいです。

よろしくお願いいたします。

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