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夜の王と契約魔法〜ルールで縛り、契約で奪う──契約魔法で成り上がる【無双×暗躍】譚〜  作者: 皆月いつか
第0章 転生×暗躍×無双 編

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第4話◆転生(選択)

 白い空間に伏せった俺に少女が提案を続ける。


「君の選択肢は三つ────

1.記憶を消して現世で生まれ変わる

2.異世界に転生する、記憶を消すかは自由

3.消滅して無になる

────だよ」


「今回のことは観測者として、心苦しく思っている。選択をした後のことも、できる限り君の望むようにしてあげたい」


「もうどうでも良い。好きにしてくれ────」


 起き上がる気にもならない。俺は伏せった体勢から仰向けになり、右腕で視界を遮る。


「そういう訳にはいかないよ。どうか投げやりにならないで欲しい。僕は、君に思考停止で3を選んでほしくてこの話をした訳じゃない」


 ろくに考えず3を選ぶであろう、俺の次の言葉も読まれている。


「少し考えたい、待ってくれるか?」


「構わないよ、僕はいくらでも待つさ」


 どれだけの時間泣き続けただろうか、涙は出ないが、悲しみ、憤り、悔しみ、すべてを吐き出して、ようやく頭が働くようになってきた。

 本当は一度寝たかったが、混乱のせいかそれともこの空間のせいか、眠ることは叶わなかった。


「ひとつ質問だ。転生した場合、俺は魔王じゃなくなるのか?」


「いや、魔王として転生することになる。

因縁とでも言おうかね、そこは切り離せないのさ」


「3を選ぶ。綺麗に消し去ってくれ────」


「……君ならそう言うと思ったよ。

だけど3を選択するのなら、先に伝えておかなければならないことがある」


「なんだよ、まだ何かあるのか────」


「魔王の君が消滅したら、他の誰かが魔王として生まれて、その業を背負うことになる。総数は大まかに調整されることになるからね」


 俺のことを前世から見ていたというのは伊達じゃないようだ。誘導ではないが、やはり見透かされている感がある。


「────選択肢3はやめだ。

こんなものを人にバトンタッチしてサヨナラなんてしたくないからな。俺が背負うよ」


 溜め息と共に吐き出した俺の言葉に彼女は頷き、俺はまた少し考えて、質問をする。


「選択肢1だと記憶が消えて、選択肢2だと記憶を残すかは自由、その理由を教えてくれ」


「1は、この世界に魔王という概念がないから、記憶を残して魔王として振る舞われると、新たな特異点になりかねない。


2は、魔王も勇者も存在する世界への転生となる、だから記憶は残していても差し支えはない、ということさ。

ちなみに今、君が前世の記憶を持っていないのは、前世以前の君が1を選択したからだよ」


「なるほど────それなら2だな。

弟は大して考えずに2を選んだだろう?」


「ご明察だね。弟くんを観測しているのは僕じゃないけれど、把握はしている。

弟くんに……復讐するのかい?」


「さっきは殺してやりたいと思ったが────

今はどうでもいい。転生する理由は、二十年も生きてきて何も成し得ていないなんて格好悪いからかな。

続きは異世界で叶えることにするさ。

次に死んだらまた選択を迫られるんだよな?」


「いや、選択できるかは条件が揃わないとできない。今回、君と弟くんは条件を満たしている。弟くんにとっても、兄が魔王というのは特異な事象だったということさ」


「父や祖母はどうなる? また会えるのか。まだ生きているが、母親はどうなる?」


「────お父さんとお婆さんは、特に属性のない一般人だからね。

記憶を消されてランダムに転生するはずだけれど……人間に生まれるかはわからないし、もしかすると転生の輪が途切れてしまうこともある」


「今世が最後ということもあるのか……」


「お母さんは……そうだね。

死んだ後に同じように観測者から選択肢を迫られることになると思うよ。

……魔王と勇者を産んだ特異な聖女だからね」


「ままならないな────」


「────本当にね」


 湿っぽい空気に区切りをつけるように、俺は手を叩く。


「よし、観測者さん。気持ちを切り替えていこう。俺が転生する前に魔法を教えてくれ。

あるんだろう、魔法が。異世界にはさ?」


「……どうしてそう思うのかい?」


「魔王の魔の字は『魔法の魔』だからな。

あとは────魔王と勇者が取っ組み合いの肉弾戦なんて絵にならない、だろう?」


「やれやれ、君は本当に賢しい。

いいよ、今回のことは観測者として思うところもある。

少しだけなら僕が基礎を教えてあげようじゃないか。それくらいは赦されるだろう」


「さっき『いくらでも待つ』と言ってくれたのは観測者さんじゃないか、少しだけなんて言わずに、じっくり頼むよ」


「やれやれ、本当に君は────────


────変わらないね」


「ん、なんだ?」


「いや、なんでもないさ」


 少女はやれやれと言った様子で、初めて心からの笑顔を見せてくれた。

 その顔に懐かしさを覚えたのは、気のせいかそれとも……。

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