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夜の王と契約魔法〜ルールで縛り、契約で奪う──契約魔法で成り上がる【無双×暗躍】譚〜  作者: 皆月いつか
第1章 王立魔法学院・入学 編

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第17話◆時満ちて〜ケルベロス襲撃〜


 約束の満月の夜。

 この時をどれだけ待ったことか……。


「ケルベロス、これからお前に魔力を授ける。女性に変装した俺を咥えて、街の中を駆け巡るんだ。

無関係な人を死なせたり、大怪我をさせてはいけないが、脅かして転ばせるくらいは大目に見よう」


「ワンッ!」


「鳴き声が可愛すぎるな……唸る感じで頼む」


「グルルルルルル──────」


「そう! その感じ、いいじゃないか!

それでいこう。少しならアドリブも許す。

せっかくだから楽しくいこう────」


「ワンッ!」


「だからそれは可愛すぎるんだって────」



 マダガルは打ち合わせ通り、パーティのメンバーと四人、レストランで食事をしている。印象に残るように、わざと店主や他の客と大袈裟に話を交わす。


 同刻、俺は【モンタージュ・カタログ】を使い、街中を陽動する。


「大変だ、魔獣が出たぞ────」


「あれはケルベロスじゃないか!」


「きゃーっ! 助けてっ!」


「殺される……みんな逃げろ!!」


 登録したプリセットを次々に呼び出して変身し、市中をパニックにする作戦だ。

 だからケルベロスよ、一人で何役もこなす主人を、不思議そうな目で見るな────。


 次第に騒ぎが大きくなる。そろそろ頃合いだな…………


 俺はケルベロスと別れると、マダガルのいるレストランに客を装って入店する。

 注文をした数分後、ケルベロスは俺の魔力を辿って、店に押し入る。


 ドンッ────────!


 衝撃音が轟き、店の入り口が木っ端微塵に吹き飛ぶ。そこから顔を出す双頭が、店内を威嚇する。


「きゃーっ! 魔犬ケルベロスよ!」


 俺も迫真の演技で盛り上げる。店内はパニックに陥る。


「グルルルルルル……

小サキ……人間ドモヨ…………」


「こいつ……しゃ、喋ったぞ…………」


 パニックが一転し、店が静まり返る。


「魔王様ノ……復活ハ近イ…………

今宵ノ……生贄ハ……何奴ドイツダアァァァッ!」


 ケルベロス……

 アドリブ、ベタベタじゃないか……!

 だがいいぞ、魔獣が喋ると思っていなかった客はパニックだ。


 いや待て…………

 それ、もしかして俺がお前と出会ったときに、人違いを誤魔化すため苦し紛れに言ってたやつか……?


 ケルベロスがウインクしたような気がした。


 思いがけず黒歴史を掘り返された俺は、迫真の演技で悲鳴をあげる。


「きゃあああああ──────────」


「貴様ニ決メタゾ、女ッ!!!!」


 ケルベロスは俺の腹に噛み付くと、そのままレストランを飛び出す。


「──ハイド・ムスブルグを呼ばなくては」


「いや、それでは攫われた人が助からない。俺たちだけでもいくぞ」


「そんな……無茶だマダガルさん!

俺たちだけで何ができる……」


「腹を括れ、お前ら!

俺たちは何のために魔法を使えるのだ。

攫われた女性のような、弱き者を救う為だろう。

お前達が行かぬなら、俺が一人でいく」


「そうだな、庶民を見殺しにするくらいなら、ここで死んでも後悔はない」


「俺様がいる限り、敗北はない。

マスター、俺たちは魔犬ケルベロスを追っていったとすぐに学院に連絡してくれ」


「わかった、お前ら絶対に生きて帰れよ」


────俺が書いたシナリオ通りのやり取りが聞こえてくる。

 何故か、事情を知らないはずのマスターまでもが、まるでコピペしたかのように完璧に演じる。



 さていよいよだ、マダガル──────。

 今からお前は敗色の濃い、無茶な戦いに身を投じるのだ。

 安心しろ────ここにいる皆がそれを証言してくれるさ。


 ケルベロスは俺を咥えたまま、マダガルたちに追われるように森に向かう。

 思い通りの展開に、少々テンションが上がってしまったな。いかんいかん。浮かれずに、気を引き締めていかないとな────。


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