第16話◆決行前夜
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決行の前日、俺は教室でエドワードに話しかける。
「なあ、エドワード。お前、これで本当に良かったのか────?」
「これで、って何がだよ?」
「マダガルに付いていくということさ」
「なんだよ、お前。僻んでんのか?」
「そうじゃない──────。
お前、あの日俺を中庭に誘った時、マダガルに脅されていたんだろう?」
「あの時はそうだったかも知れないがな、マダガルさん無しで、俺は固有スキルを手にできたか?
Bランクのイーヴィルアイを討伐できたか?
学内大会で優勝を狙えるパーティに所属できたか?
美人のメイドと女遊びができたか?」
「固有スキルは、俺がお前に教えた……」
「────お前はアルヴァンには教えて、俺には教えなかったろうが! マダガルさんが居たから俺にも教えてくれたんだろ?
ちょっとマダガルさんに気に入られてるからって調子に乗るなよ。
戦闘も何もできない役立たずのくせに……」
「…………」
「ハイディア、断言してやる。
お前に借りた魔力を、誰一人返さないだろう。
自分のために役に立てられない固有スキルなんて哀れなもんだ。所詮お前は利用されて終わりなんだよ。バカが……」
「エドワード────お前、変わったな」
「知るかよ! 魔力を返して欲しければ、せいぜい俺にもおべっかを使うんだな」
「そうか……残念だ」
「ふん……お前は最後、魔力が枯れて終わりだよ。利用価値が無くなったお前をマダガルさんはどうするかな?」
「もういい────────。
ケルベロス討伐、頑張れよ────」
エドワードは返事をせず、席を立つ。
(ハイディアの野郎、偉そうにしやがって。
俺はもう、お前のアドバイス無しでも【ミスティ・フィールド】を完璧に操れる。
【ミスティ・フィールド】はパーティ全体の戦力の底上げをする、いわば肝だ。
ケルベロス討伐で、俺の地位も確固たるものになる。ハイディア、お前をマダガルに売って良かった。お前は所詮、俺がのし上がるための踏み台でしかないんだよ……)
教室を出ようとするエドワードの先に、アルヴァンが歩いてくる。
「よう、エドワード。なんか久しぶりだな」
「アルヴァンか……」
「どうした、しばらく見ないうちに表情が暗くなったな?」
「黙れ……フレッシャーズカップ準優勝したくらいで調子に乗るなよ」
エドワードはアルヴァンの肩を突き飛ばすと、教室を後にする。
………………
エドワードはその日、学園に戻らなかった。放課後、俺とアルヴァンは、エドワードのいない席を眺める。
「エドワード、変わっちまったな……。
いや、案外もともとあんなだったのかもな」
「ああ、残念だよ────」
「優しく慰めてやろうか?」
「どの顔で言ってんだよ────」
「なあ、ハイディア……」
「ん?」
「俺は変わらねえよ…………。
いつだってお前を慰めてやるからな」
「だからどの顔で言ってんだって────」




