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夜の王と契約魔法〜ルールで縛り、契約で奪う──契約魔法で成り上がる【無双×暗躍】譚〜  作者: 皆月いつか
第1章 王立魔法学院・入学 編

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第15話◆違う顔の私たち


 ハイドの姿でマダガル邸を訪れた翌日──

俺は今度はハイディアの姿に戻り、マダガル邸を訪れ、マダガルとケルベロス討伐の打ち合わせをする。

 我ながら、よくも二つの人物を使い分けているものだ。


「マダガルさん、ハイド氏に聞いたぞ。とんでもない約束を取り付けたものだ。ケルベロスをマダガルさんのパーティだけで討伐するなんて、俺には思いつかなかった。

さすがはマダガルさんと言わざるを得ないな」


「お前さんこそ、ちゃっかりとハイドの懐に潜り込んでいるじゃないか……喰えない男だ」


「褒め言葉と受け取るぞ。

万事上手くいっている。あとはいかにドラマティックに演出するかだが────」


「ん……? どういうことだ」


「おいおい、ハイド氏抜きで、厄災級の魔獣ケルベロスの討伐劇をやってのけるつもりなんだろう。

せっかくなら『襲われている民を助けるために、Sランクハンター不在の中、果敢にケルベロスに挑んだ』くらいのドラマ性があって然るべきじゃないか?」


「お前と言う奴は…………!

何か案があってのことなのだろうな……?」


「もちろんさ──────。

ハイド氏は幻影を見せる魔法士を知っているそうだ。そいつに依頼する。

まずは、ケルベロスの幻影に人を襲わせ、幻影をマダガルさん達が追う形で、本物の討伐に繋げるのさ。


大丈夫──そいつも金以上のものは要求しないそうだ。もとより猿芝居の証拠なんて残しようがないからな。後から脅すこともできまい────」


「見事だ。ここまでお膳立てしてくれるお前さんにも褒美を取らせんとな」


「なあに、構わないさ。俺は貴方の側で、自分の考えた固有スキルの成長を見ているのが楽しい。

あとは貸した魔力を返してくれるくらいで良しとするさ────」


 マダガルの眼差しが黒く曇るのを、俺は見逃さなかった────。踏み倒す気満々と言ったところだな。


「きちんと耳を揃えて返してやるから、いちいち煩いことを言うんじゃない。

まずはケルベロス、その後は学内大会だ」


「ああ、本当に楽しみだ────」



 俺は後日、今度はハイドの姿でマダガルに会う。

 ただし今日は、同じ服、お揃いのフードを深く被った男と一緒にマダガル邸に訪れる。

応接室に通された後で、ハイドだけがフードを脱ぐ。


「ハイド氏、こちらは何方どなただ……」


「本日は私とマダガルさんのパートナーとなる男をご紹介したいと思いましてね」


「するとこちらが、例の幻影を見せる魔導士か?」


「残念ですが、その彼は私としても切り札の一枚なのでね、当日まで姿は現しません。

────ではフードを取ってください」


 隣の男がフードを取る。

 マダガルは驚きのあまり、仰け反る。フードを取った男はハイドと瓜二つだったからだ。


「なんだ……これは……分身? いや双子か?」


「いいえ、彼は私の影武者です。

詳しくは言えませんが、ケルベロス討伐の間、アリバイを作るための存在です」


「しかし、ここまで似せるとは……」


「よく見ると、ところどころ違うんですけれどね。

まあ、私は人付き合いが嫌いなので、影武者と気づく人間は殆どいないでしょう。

討伐のXデーには、彼はバーで他の客と談笑させるようにします」


 【モンタージュ・カタログ】は実在する特定の人物にはなれない。だが、一から作ったハイドの顔はプリセットに登録しているため、他の人間の顔にも適用する事ができる。


 ここまで見せれば、マダガルも躊躇うことなく、例の作戦を実行することになるだろう。



────俺の、筋書き通りにな。




 また後日、今度はハイディアとしてマダガルと作戦の詰めを行う。一人二役をやっていると、やはり詐欺師のように思えてくるな。

 これは俺にとっても一大イベントだ。抜かりなく事を運びたい。


「では、決行は次の満月の夜。

マダガルさん達は、学内大会に向けて打ち合わせをするために、マダガルさん馴染みのレストランで食事をしている。

そこに偶然ケルベロスが現れて、女性を一人攫っていく────。


『──ハイド・ムスブルグを呼ばなくては』


『いや、それでは攫われた人が助からない。俺たちだけでもいくぞ』


『そんな……無茶だマダガルさん!

俺たちだけで何ができる……』


『腹を括れ、お前ら!

俺たちは何のために魔法を使えるのだ。

攫われた女性のような、弱き者を救う為だろう。

お前達が行かぬなら、俺が一人でいく』


『そうだな、庶民を見殺しにするくらいなら、ここで死んでも後悔はない』


『俺様がいる限り、敗北はない。

マスター、俺たちは魔犬ケルベロスを追っていったとすぐに学院に連絡してくれ』


『わかった、お前ら絶対に生きて帰れよ』


────と、こんなところか」



 俺のシナリオをマダガルは拍手で称えてくれる。


「シンプルだが、なかなかどうして悪くないじゃないか。これで、俺たちだけで討伐した、という証言も得られる」


「こういうのはシンプルな方がいいのさ────。複雑にすると、どうしても後からボロが出る。

あとは、前金でしっかりとハイドと幻影魔導士に金を払っておけば、先立つものの心配もなくなるだろう。

ケルベロス討伐は容易じゃない。小細工は俺に任せて、あとはパーティの連携に専念すべきだ」


「わかった、裏方をお前さんに任せてばかりで悪いな」


「後ろ盾になってくれるんだろ? 見返りは後からきちんと要求させてもらう」


「ふふん……とことん喰えない男という訳か」


 後日、マダガル邸に小綺麗な老紳士が訪ねてくる。マダガルは報酬を先払いし、決行に備える。


 ちなみにこの老紳士も【モンタージュ・カタログ】で変装した俺なのだが……こうして金銭を受け取ると、いよいよもって自分が詐欺師だと思えてくる。

 やっていることは、どう見ても魔王というよりも小悪党としか思えないが、これも下積みだと考えることにしよう……。

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