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夜の王と契約魔法〜ルールで縛り、契約で奪う──契約魔法で成り上がる【無双×暗躍】譚〜  作者: 皆月いつか
第1章 王立魔法学院・入学 編

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第13話◆交渉


 王立魔法学院にいながらハンターを兼ねる生徒は多い。アルバイトより実入りが良く、鍛錬も兼ねることができるからである。

 だが、いきなりBランクの魔物を討伐したという例はなく、マダガルのパーティは学園内で一躍有名になった。


「フレッシャーズカップの汚名返上ですね、マダガルさん」


「ベモ……お前は馬鹿か。これはただの序章に過ぎん。

次の学内大会で実力を確固たるものにするのだ。そのためには、今は黙って牙を磨くのだ」


 学内では、俺とエドワードは、マダガル一味とは距離を置いていた。マダガル達が俺と組み、大会に備えているのを、アルヴァンに感づかれないように────とのことだ。


 俺は週に一度ほど、マダガルの屋敷に顔を出し、全員の固有スキルの指導を行う。マダガルとパーティを組む者のモチベーションは、固有スキルの成長に応じて上がっていた。


 固有スキル自体を隠していても、鍛錬により、魔力の質が上がるのは必然だった。

 学園の授業でも評価が上がるなど、各自の学園生活も向上する。


 非戦闘系の能力開発は、各自のモチベーションに委ねられたが、こちらも順調であった。

 何しろ、それぞれ個別に契約で意識喪失状態にした上で、質問に偽りなく答えさせ、後ろ暗い感情などを把握した上で、適した能力を授けたのだ。


 例えば、無空間に部屋を作り出せる【ハイドアウト・ドア】。

これをベモに授けたのは、気に入った女を攫って監禁したいという歪んだ願望を持っているからだ。

 自分が許可した人間以外入れない、マスタールームを作れることを話したら、躍起になって鍛錬するようになった。


 他にも、金に執着があり、窃盗癖があるローレンには、目にした金品を複製できる【ファントム・シーフ】を。


 覗き趣味で、ストーカー気質のヴィーユには、対象の様子を監視できる【マイ・ゴシップライター】を。


 他人へのコントロール欲求を持っているのに、弁が立たないギズマには、極めれば他人すら自在に操れる【ピンキードール】を。


 一見、マダガルにも利用価値があるように見せて、本人の悪癖や性癖にマッチする能力を授けることで、自ずと鍛錬をするように促す仕掛けだ。


 そして、返済期限の三ヶ月が過ぎようとしたとき、俺はある情報をマダガルにリークする。


「マダガルさん、二人きりで話せるか……

良い情報を仕入れたんだ」


「ほう、構わんぞ。

お前さんのことは信用している」


「ハイド・ムスブルグというハンターを知っているか?」


「当然だ。S級のハンターだが、王国への仕官を断り、気が向いたときだけ討伐をするという変わり者だろう」


「そう……彼は常にソロで動くことで有名だ。

だが、人数が五人以上でないと参加できない案件があるらしく、難儀しているらしい」


「何故だ? 優秀なハンターなら組みたがる者も引く手数多であろう」


「報酬の問題さ。ハイドは報酬にがめついらしくてな。

ほぼ総取りを要求されて、それを飲むハンターなんて────」


「────まず、いないだろうな。

お前の言わんとすることはわかった。

無報酬でも、箔をつけたいパーティなら条件が合うという訳か」


「ああ。しかも案件はクローズド──特定の上位ランカーに指名で出されたものだ。

俺はハンターギルドで奴が他のパーティとの交渉に失敗しているところを見た。

差し出がましいとは思ったが、話しかけて心当たりがあると話した。

もちろん、マダガルさんの名前は伏せてだがな」


「くくく、素晴らしい!

これでお前が戦闘に参加できれば、文句なしにパーティに加入してもらうところなんだがな」


「俺はそんな器じゃないさ。マダガルさんのパーティの固有スキルは、俺の自信作揃いなんだ。

活躍してくれることが何よりも嬉しい」


「殊勝な男よのう……。

して、その案件とはどのような内容だ?」


「魔獣ケルベロスの討伐────」


「………………! ずいぶん大きく出たな。

ケルベロスは数年前、英雄パーティがあと一歩で取り逃がしたという厄災級の大物じゃないか」


「ああ、だがハイドは受注した討伐依頼の成功率百パーセント。便宜上、パーティの形を取らざるを得ないが、実質ソロでやると言っている」


「俺たちからすれば、報酬などよりも実績が欲しい。

ケルベロスとくれば、イーヴィルアイがゴミに思えるほどの大物。旨みしかないじゃないか……」


「次期侯爵であるマダガルさんにとって、S級ハンターと縁ができるだけでも大きいと思ってな。

勝手ながらアポイントを取り付けておいた」


「いやあ、恐れ入ったよハイディア。

やはり卒業したら俺の参謀になれ。たとえ魔法が使えなくとも、お前の頭脳が欲しい」


「ああ、末長い付き合いをしてもらえると有難いよ」


 たとえ魔法が使えなくとも、か。

 貸している魔力を踏み倒す気満々じゃないか────。



 翌日の放課後、マダガルは単身、ハンターギルドを訪れた。


「ハイド・ムスブルグ氏にアポイントがある。ロザリアという窓口担当はいるか?」


「初めまして、ロザリアと申します。

マダガル様────ですね。ハイドさんをお呼びします、後ろの椅子に掛けて少々お待ちください」


………………


 ハイディアは【モンタージュ・カタログ】でハイドの姿になり、マダガルと対峙する。


「初めまして、貴方がハイディアさんが仰っていた────」


「ああ。侯爵家の嫡男で、マダガルという」


「よろしくお願いいたします」


 ハイドに差し出された手を握ると、マダガルはハイドの強力な魔力をビリビリと感じる。


「ぐっ……」


「聞けば、先日の彼も君も、まだ学生さんだと。

君もなかなか強いじゃないですか。将来が楽しみですね」


「ああ……いえ、光栄です」


 にっこりと笑うハイドに対し、実力差を見せつけられたマダガルが態度を改める。


「さて、ここでは何ですからね。場所を変えましょう。何せ悪だくみなものですから────」


「そうですね、我が家にお招きしましょう。馬車を待たせております」


「承知しました。では、受付に一言伝えてきます。恐縮ですが、先に外でお待ちいただいてもよろしいですか」


「わかりました、では後ほど」



 ハイドはマダガルと別れ、受付のロザリアのところにいく。


「ハイドさん、どうかなさいましたか」


「彼はただの私のファンでした。

ギルドに入る私を見て、話がしたかったと。

アポイントというのは出まかせのようです。

握手に応じてあげて、きちんと注意もしておきました。

最近この手合いが増えてきましたので、ロザリアさんもご注意ください────」


「それは……大変失礼しました」


「私はオールムさんに用があったのですが、不在のようなので、これにて失礼します。

急ぎの用ではないので、私が来たことも伝えていただかなくて結構です。お邪魔しました」




 人の目に触れぬよう、マントのフードを被り外に出る。


「お待たせしてすみませんでした、マダガルさん。

受付にはマダガルさんのパーティと組むことになりそうだと話しておきました」


「それは光栄だ。では参りましょう」

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