第12話◆授けたスキルで何を為す〜vs.イーヴィルアイ〜
◇
一週間後、それぞれのスキルを確かめるために、ハンターギルドから討伐依頼が出ている、イーヴィルアイの群れを倒しにいく。
【討伐依頼】
特定の魔獣に対し、討伐が民間にも開放され、討伐に対する報酬を国の外郭団体であるハンターギルドが用意する制度。
王国としては騎士団を出陣させるリスクを避けることができ、討伐者には高い報酬が用意されている他、実績に応じて国に召し抱えられる可能性もあるため、リスクを肩代わりしても充分なメリットがある。難易度はA〜Eでランク付けされる。
討伐の管理と手配はハンターギルドに一任されている。ハンターとしての登録は簡単であり、仮に所属前に討伐してしまっても、問題なく事後登録をして報酬は支払われる。
討伐難易度において、特に制限などはされておらず、初心者でも高難易度の討伐に挑むこともできる。討伐回数に応じて、ハンターにもA〜Eのランク付けがされる。より危険な討伐手配は、公示されず、高ランクのハンターに指名依頼をされることもある。
***
イーヴィルアイは邪眼を持った、残忍でずる賢い小人族である。リーダーが司令塔となり、器用に連携することで知られている。
討伐難易度はBランク。熟練のハンターでもソロ討伐は推奨されず、パーティを組んでいても、状況次第では拷問の末に殺されることもある危険なモンスターである。
ハンターギルドでの選定は、俺とマダガルで行った。俺はもう少し下のランクを進言したが、マダガルが、C以下では箔がつかないと、聞く耳を持たなかった。
いざとなれば自分だけでも逃げられるだろう、という目をしたマダガルと、その側近である青髪のニューロが、近遠それぞれの攻撃手となる。
バフなどの戦闘補佐担当のエドワードと、回復・サポート魔法担当のダズリーの四人でパーティを組んだ。そこに野営を担当するベモがサポートメンバーとして加わる。
ダズリーの隠蔽魔法があまりに杜撰なので、俺がこっそりとダズリーのそれにぴったり張り付く隠蔽魔法を展開する。
目的のイーヴィルアイの群れを発見する。
既に先発のパーティが交戦しているようだが、戦況は思わしくない様子だった。
戦闘向きではないベモは、初めて見るイーヴィルアイに対し、すっかり腰が引けてしまっている。
「ベモ、スキルを──────」
「あ、ああ。【ハイドアウト・ドア】!」
【ハイドアウト・ドア】
異次元空間に部屋を作り出すことができる。ドアは発動者が任意の場所に設置することができる。部屋数、部屋のサイズは魔力量と熟練度に依存する。
他人が入る際は発動者が先に入り、出る際は発動者が後から出ないといけない。外で発動者が死んでしまった場合、二度とドアを開けることはできない。
マスターキーや合鍵を作成することで、第三者でもドアの開閉、出入りは自由に行えるが、マスタールームには発動者の許可無しに入ることはできない。
***
ベモの詠唱に合わせてドアが出現し、ベモを先頭にして全員が入る。部屋は四畳半程度だが、入っている間は外界から干渉されない。部屋からは外界の様子をモニタリングできる。
「慣れれば複数の部屋を作れる他、出口も増やせるし、いくらでも広くできる。鍛錬を重ねるように」
「ちっ、わかったよ」
「ベモは戦闘向きではない。待機をして、退避に備えてくれ。
討伐にはパーティの四人と俺で向かう。
もし万が一のことがあった場合は、この部屋に逃げ込むようにしよう。負傷者が近づいたら、ベモ、お前が中からドアを開けてくれ」
「ああ……わかった」
そうこうしているうちに、イーヴィルアイと交戦していた先発パーティが全滅したようだ。
マダガルが喝を入れる。
「今日は俺様たちの初陣だ!
敵は少々手強いが、全員固有スキル持ちの精鋭パーティであることを忘れるな!
そしてお前らのスキルへのアドバイスのために、ハイディアも来てくれた。お前らハイディアの言葉は、俺様の言葉だと思ってよく聞くんだぞ」
全員が返事をする。
俺は早速エドワードに助言する。
「エドワード、戦闘に入ったら俺の合図に合わせてスキル発動だ。目安として俺が立つ位置から、割合は前方に七、後方に三のイメージだ」
「わかった……!」
「よし、いくぞ!!!」
マダガルの合図で異次元から五人が飛び出す。
「エドワード!」
「【ミスティ・フィールド】────」
空中から突然現れた新たな敵に、イーヴィルアイ達が混乱する中、エドワードの手のひらから足元へ、薄紫の靄が辺りを覆うように広がっていく。
【ミスティ・フィールド】
バフ・デバフ効果を自在に操れるフィールドを展開する。
味方と認識したターゲットへのブースト(攻撃力上昇、防御力上昇、速度上昇など)、敵と認識したターゲットに行動制限(攻撃力低下、防御力低下、速度制限など)をかけることができる。
フィールドの広さ、同時にかけられる効果の数、発動速度は、使用者の熟練度と魔力の質と量、魔力錬成のスピードに依存する。
***
【ミスティ・フィールド】は俺が考えた中でも屈指のサポート魔法だ。
「よし、エドワード。
味方の攻撃を強化するイメージ、それ以外の敵を弱体化するイメージだ」
発動と展開が遅い。だが、敵の混乱もあってか実戦的には悪くない流れだ。
うっすらとバフがかかるが、効果が今ひとつのようなので、俺がこっそりとバフを重ねがけする。
「よし、今だニューロ────」
「おう、【メテオ・ドラグーン】!」
【メテオ・ドラグーン】
上空へと魔力を放ち、流線形の魔力弾を降り注がせる範囲攻撃。味方を避ける、広範囲に攻撃するなど条件を加えると威力が下がる。
最も威力が上がるのは狭範囲、無差別に放つケースである。
術者が魔力放出に長けていることが必須条件だが、対多数の戦いにおいて効果を発揮する。
応用技【パルス・ドラグーン】を使用可能。狭い範囲に絞って攻撃することで、一対一の攻撃に応用する他、追尾も可能。
***
ニューロの手の平から魔法が上空に放たれると、流線形に分裂して矢のように降り注ぐ。
味方を避けるように属性を追加しているが、上手く威力を保ったまま敵の大多数を撃ち抜いていく。
ニューロの魔導センスは悪くない。
【メテオ・ドラグーン】が敵を撃ち抜く最中、マダガルは【強欲の剣】を手に、既に敵のリーダーに斬り込んでいた。
「ははは、面白いくらいよく斬れるぞ!
おいどうした? Bランクモンスターもこの程度か?」
「グ……キギッ…………」
イーヴィルアイの剣がマダガルの身体を浅く切り裂くが、返しの刃が敵を捉えた瞬間、傷は見る間に塞がっていく。
「もういい、充分だ。
散れ────【断魔の一閃】!」
イーヴィルアイのリーダーが真っ二つに両断される。
威力は充分である。やはり【強欲の剣】は手数の多いマダガルと相性抜群のようだ。武闘派は伊達じゃないな。
リーダーを倒されたことでイーヴィルアイの群れは完全に瓦解した。残党をマダガルとニューロで狩り、無事討伐が完了した。
討伐完了の証として、イーヴィルアイの邪眼と魔核をエドワードとベモが集める。
俺は使用魔法量────ここまでに貸し付けた魔法量を確認し、考察する。
少々意外だが、マダガルが一番鍛錬を積んでいるな。次にニューロだ。エドワードも練習はしていたようだが不十分、ダズリーは学校の授業程度のことしかできておらず論外だな。
総評として、固有スキルの性能で押し切ったが、俺のサポートがなければ厳しい戦局になったように思える。
「よし、これで討伐完了だ。
お前ら初陣にしてはよくやったぞ!!」
労うマダガルに対し、俺は率直な所見を述べる。
「マダガルさんは見事だった。
スキルに頼らず、魔法の研鑽を積んでいる様子が垣間見えた。ニューロも練習の跡は見られたが、持ち前の戦闘センスに頼り過ぎないよう、もっと精度を上げると良いだろう。
エドワードはバフ・デバフのかかり方が甘い。発動回数をとにかく多く、そして長期戦に耐えられるよう、発動中のイメージをしっかりと持て。
ベモは今日までの発動回数自体は多いようで、起動のスピードはまずまずだ。
しかし、拡張する努力をもう少しするべきだ。発動して閉じこもっているだけでは鍛錬にならない。
最終的には敵を誘き寄せて室内で戦うことも想定しておけ。
ダズリーはそもそも魔力の鍛錬自体をするようにしろ。回復魔法士が回復も満足にできなければお荷物でしかない」
結果としてマダガルを持ち上げるような言い方になってしまったが、これに関しては事実を述べたまでだ。
マダガルとニューロ以外のメンバーから睨まれたが、マダガルが一喝する。
「お前ら、ハイディアの言葉は俺様の言葉と思えと言っただろうが!
今回イーヴィルアイの討伐で、俺様たちは脚光を浴びることになるだろう。
だがしかし、俺様たちの真の目的は三ヶ月後にある学内大会のパーティ戦だ。
全学年参加の乱戦だが、そこで優勝を攫うぞ。
晴れてお前らもトップパーティの一員だ!」
普段の、品性に欠ける言動からは考えられないが、意外にもマダガルは智将の器だな。配下に対して目的と成果をきちんと明示している。
「そのために、お前らのスキルについては他言無用だ。鍛錬は人目を忍んで行え。俺の屋敷を使って構わん。
それから、ハイディアのスキルは墓場まで持っていくつもりでいろよ、わかったか!!」
「ハイディア、改めてご苦労だった。
討伐証明でもらえる報酬はお前がとっておけ」
「ありがとうございます、マダガルさん」
討伐後に襲われる覚悟くらいはしていたが、俺に対しても気前よく振る舞うことで上下関係を叩き込む腹だな。
思う通りの戦果を得られ、満足げなマダガルを見て、俺も安堵した。
これで次のステップに進める────。




