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夜の王と契約魔法〜ルールで縛り、契約で奪う──契約魔法で成り上がる【無双×暗躍】譚〜  作者: 皆月いつか
第1章 王立魔法学院・入学 編

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第10話◆凌辱と下衆の館


 俺はマダガルの住む学院のすぐそばにある屋敷に着く。まあ、俺の住むボロ屋とは比較にならないほどに広く綺麗な造りだ。

 ここにメイド三人と私設兵四人が一緒に住んでいるようだ。マダガルが屋敷内を案内する。


「俺様が学院に入学する際、父上がこの屋敷を買い上げてくれてね」


 マダガルが左手にある部屋を指差す。


「ここの部屋は皆に開放している。遊び部屋と呼んでいるんだ。

俺様の友達ならいつ遊びにきても構わない。

彼女たちメイドは奴隷みたいなものでね。俺様の友達なら好きに使ってくれて構わない。

奴らの親は我が家で住み込みで働いていて、俺には頭が上がらない。

彼女たちには何をしても構わないのさ」


 マダガルと取り巻きたちが下卑た笑みを浮かべると、メイド達は下を向いて表情を見せないようにする。よほど屈辱的な目に遭わされている様子だ。


「────良い趣味してるな」


「おい、エドワードも遠慮するな。帰りに彼女たちで遊んでいけ」


「──────!

はい、ありがとうございます!!」


 マダガルに話しかけられたのがあのタイミングだったからな……

 やはりエドワードは既にこいつら側で、俺とアルヴァンを売ったということか。


「さぁ、ここが応接間だ。座ってくつろぎたまえ」


「くつろぐなんてできないな、マフィアに拉致された気分さ」


「まあまあ、そういうな────。

ハイディア、俺様はお前さんとも仲良くなりたいんだ。その言葉に嘘はない。

固有スキルの件だって、何もお前さんから無理矢理奪おうとしてる訳じゃないんだぜ。

まずは君の持っている固有スキルのアイディアノートか? それを見せてくれないか」


「わかったよ。その代わり、見るのはマダガル、君一人だけにしてくれ」


「良いだろう、お前たち覗くんじゃないぞ」


 ノートを渡すと、マダガルは黙ってノートを読み込む。二十分ほど経ち、ノートを閉じるとマダガルは感嘆の溜息を漏らす。


「…………すごいじゃないか。

どの能力も良く作られている。

ハイディア、お前さんは天才だ」


「────どうも」


「さて、この中から俺様は好きな能力を選んで君に開花させてもらうことができる、と考えていいのかな」


「さっきも話していた通りだ。どうせエドワードとの話も最初から聞いていたんだろう?

俺の固有スキルは契約魔法だ。スキルの開花を対価に、魔力の貸し出しを行う。

利子をつけて返してもらうことになるぞ」


「返さないとお前さんの魔力が無くなってしまうんだろ? 可哀想な能力だ。

だが安心しろ、俺様の魔力量は規格外と言われている。きちんと借りたものは返すさ」


「皆がそうなら、俺のスキルも浮かばれるんだがな」


「俺様が考えるに、そのスキルは、お前さんの親が国の中枢やらとコネクションが欲しくて、睡眠時などの無意識下で習得させたのかも知れんな。いわば『貢ぐ』スキルという訳だ」


「なるほど──────」



────全然違う。



「お前さんは伯爵家の三男と聞いた。すでに長男は王国に仕官しているそうだな。

丁稚奉公の後は箔をつけて世継ぎをするということ。

それなら居ても仕方のない三男に、他人を接待するためのスキルを、親が勝手に授けた可能性もあるという訳だ」


「さすがに博識だな。なるほど、そんな可能性もあるのか────」



────ないけどな。



「俺様に恩を売るのは良いと思うぞ。

仮にお前さんが俺様のグループにいてくれたら、魔力切れになっても仲間として取り立てをしてやることもできる。

それに後ろ盾にもなってやれる。俺様は仲間には優しいんだ。なあ、お前たち?」


 取り巻きたちが口々に肯定する。

 マダガルは飴と鞭で縛るタイプの為政者だな。メイドだけじゃない、こいつらは皆、奴隷のような存在だ。


「エドワードと二人で話がしたい。

俺はマダガルと初対面だ、信じて良いかどうか、友人のエドワードに確かめたい」


「構わんよ。それでは隣の第二応接室に移ると良い。この部屋よりは狭いが、二人なら十分だろう。

くれぐれも逃げるような真似はしないでくれよ。俺は裏切り者が嫌いだからな」


 強制的に連れてきておいて、裏切るも何もあるまいに。

 さて、エドワードと特に話すこともないんだがな。今頃連中のやり取りはどうなっているのか。俺は霧化した魔力に音を反射させ、隣の部屋の声に耳をそばだてる。




「マダガルさん、さっきの話って────」


「ん? 魔力なんて返すわけないだろう。

それより奴の能力は魔力が尽きるまでしか使えん。

早い者勝ちでとっとと奪ってしまうのが得策だ」


「あのノートは実によくできている。

お前ら全員、固有スキル持ちになれるかも知れないんだぞ」


 ポカンとする取り巻きたちに対して、やれやれとマダガルは説明を始める。


「固有スキルってのはな、こんなことがしたいというだけじゃ習得できないんだよ。

本人の魔力量や属性、適性などが複雑に絡み合って落とし所を探るものなんだ。

だからこそ、卒業までに固有スキルを習得できる人間が二割から三割、と言われるんだ。

奴の固有スキルは、その理から外れて他人に習得させる、いわば外法だ────。


俺様も実家で固有スキルの習得を試みたが、専門家を以ってしてもなかなか落とし所が見つからなくてな、下手なものを習得するくらいならと、学院に入ってから改めて探ることにしたくらいだ。


そんな俺様でも、喉から手が出るほど欲しいものが奴のノートにあった。

まずは俺様が習得する。その後、お前たちが習得すると良い。


奴の能力については他言無用だ。こんな便利な能力、俺様たちで独占しよう」


「俺たち全員が固有スキル持ちだって、すげえな」



 コンコン──────



 ドアをノックする。



「入りたまえ」


 マダガルが機嫌良さそうに俺を迎える。


「今度はマダガルと二人で話がしたい」


「構わんよ、お前たちはメイドとでも遊んでこい。エドワード、お前も男にしてもらってこいよ」


 マダガルが下卑た笑顔で送り出す。


「おいエドワード、下っ端は最後だからな」


「俺たちのテクニックをよーく見ておくんだぞ」


 取り巻きたちは、遊び部屋に向かう。

 下衆どもめ、反吐が出る。


「さて、ハイディア。人払いまでして二人きりになれだんだ。答えを聞かせてくれ」


「グループに入るかは保留にしてくれ。

ただ先程の後ろ盾になってくれるというのは有難い話だ。

そこだけ約束してもらえるなら、スキル開花の契約を結んでも良いと考えている」


「賢明な答えだ」


「この後、奴らの一人ひとりとも契約しろと言うつもりだったんだろ?」


「おやおや……!」


「構わないよ。その代わり俺の魔力が尽きたらそこまでで勘弁してくれ。

そしてグループ全員に固有スキルを開花させたら一旦そこまでだ。お前が政治に利用されちゃ身がもたないからな。青天井に条件を呑むわけにはいかない。

例えば先に俺が魔力を貸している奴から、マダガルが取り立ててくれたら続きをすることにしよう」


「そうきたか……まあ、任せておけ。

手荒なことは好きではないが、苦手ではないからな。


────ところで追加でいくつか質問がある。

仮に固有スキルを契約した後で、お前さんが死んだ場合、固有スキルはどうなる?」


「いきなりにしては、随分と物騒な質問だな。

────まあ、いい。固有スキルは、契約した時点で契約した奴のものになるからな。俺が死んでも無くなったりはしない。

貸した魔力の返済は免除される。


だが、アフターケアもあるし、俺は利用価値があると思うぞ。

後生だから殺そうなどとは考えないでくれ」


「そんな野蛮なことはしないさ。俺様の中ではお前は既にもう仲間だ。


────さて次の質問だ。


エドワードがしていた質問に近いが、お前さんはなぜ他人に魔力を貸すようなことをする?

ただ契約して、固有スキルを授けるだけなら、金を取ったりもできるし、より使い勝手が良さそうなものだが、魔力を貸してしまうことで、他の対価を要求しづらくなるのではないか?」


「────俺にもわからない。

契約する時点で、対価として何かを要求しないと、相手と対等になれないという考えが、深層心理にあるのかもしれないが……

なにぶん気がついたら習得していた固有スキルゆえ、詳細はわからない」


「ふむ、やはり『ひらめき型』の可能性が捨てきれん訳か。

まあいい、質問を続けよう。お前さんはなぜアルヴァン・クルーガーと契約をしたんだ?

あんな小物と契約するメリットは薄いぞ」


────その小物にのされたのは誰だよ。


「半分脅されたんだよ────。

固有スキルのことを不用意に喋った俺が馬鹿だった。

ただまあ、検証の役目は担ってくれたがな」


「どういうことだ?」


「俺が考えた固有スキルを、他人に譲渡する場合、相手の資質にうまく適応することが分かった。

つまり素質がない相手にもスキルは譲渡できる」


「水魔法が得意な奴に、炎魔法も覚えさせられるということだな。

たがその場合、相性はどうなる?」


「関係する。

身につけること自体は俺のスキルで可能となるが、短期的には素直に水魔法に合った系統のものを覚えた方が強力だ。

まあ、長期的に見たら、どうなるかはわからんがね。


 アルヴァンは剣の固有スキルを希望していたが、習得しても思うように威力を発揮できず、最終的には自分の防御適性に合った盾を選んだ。

────つまりはそういうことだ」


「もし合わない固有スキルを契約してしまったと後から気づいた場合、契約の破棄はできるのか?」


「もちろんだ。双方の合意を以って破棄することができる。

習得して使ってみて、イメージと異なるなら一度契約破棄をすれば、他の魔法を教え直すこともできる」


(──なるほど、それならこちらにはノーリスクだな。こちらが合意さえしなければ、ハイディアは一方的に破棄することはできないし、こちらは都合に合わせて固有スキルを変えることもできる訳だ)


「お前さん、とんでもなく不利な固有スキルを持ったものだな」


「ああ、他人にスキルを授けて魔力を使われて────貸した魔力を返してもらえなければ俺自身には何のメリットもない。

ただまあ────俺が昔から夢描いていた固有スキルたちが、日の目を見ることだけは悪い気がしない」


「面白い奴だな、気に入ったぞ。

お前さんに何かあっても俺様が後ろ盾になることを改めて約束しよう。

将来も心配するな、もし万が一魔法が使えなくなっても、俺様の周りで事務仕事でもさせてやるさ」


「そいつは有難い。

俺が固有スキルを契約すると、そいつは俺より強くなる。魔力を返してくれと話しても、なかなか応じてもらえなくてな────難儀している」


「まずはアルヴァン・クルーガーから真っ先に取り立ててやることを約束しよう」


「わかった、貴方と契約させてもらうよ。

宜しく頼む、マダガルさん」


「良いパートナーができて嬉しいよ、こちらこそよろしくな。

気が変わって正式にグループに入りたくなったらいつでも言うと良い。お前さんなら歓迎だ」


(くくく、結局こいつも俺様の意のままか……)



 意のままに事を運んだのはどちらか、このときのマダガルには知る由もなかった。

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