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夜の王と契約魔法〜ルールで縛り、契約で奪う──契約魔法で成り上がる【無双×暗躍】譚〜  作者: 皆月いつか
第1章 王立魔法学院・入学 編

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第5話◆深い森、因縁と再会と


 王立魔法学院のカリキュラムも、少なくとも入学当初は、既知の内容ばかりで退屈だ。


「結局エレメンタリーのときと変わらず、授業中はひたすらこっそりと魔力錬成だな。

せめて放課後は魔獣でも討伐するか────」


 学園から山を二つほど越えると、原生林が広がる。ここに特殊個体の魔獣の群れが出るという、近く王国騎士団が動くと、ハイドがオールムから聞いている。騎士団なんかにくれてやるくらいなら、俺が狩ってやろう。


 いつものように魔力の粒子で索敵をすると、それらしき群れを発見したが……

 どうやら四体いる群れの中の一体と、人間が交戦中のようだ────。

 真剣勝負の邪魔をするのは信条に反する。

しばらく眺めることにするか。俺は気配を絶って近づく。だがどうにも様子がおかしい。


 子ども二人を背にして一人の男が魔獣と対峙し、魔獣は群れにも関わらず、一体のみが戦っている。場合によっては手を貸した方が良さそうだな。


「おい、そこの物陰にいる人間!」


 俺に向かって群れの中の一体が声をかけてくる。人語を喋る魔獣か。


「今は一体一のショーの最中だ。余計なことはするなよ。そいつが死んだらお前の番にしてやる」


「逃げるなよ、逃げたらそこのガキどもとお前も皆殺しだからな。キャキャキャキャ」


 知能のある魔獣か。角が生えた深い紫色の人型の魔獣。上半身裸の肉体は隆々としており、身長二メートルほどのフィジカル面はかなり高いと見た。

 群れでかかれば造作もなく仕留められるであろう相手に、あえて一体一で対峙するなど、完全に遊んでいるな。

 人間の方もかなり鍛えてはいるのだろう、手数の多さも相まって互角に戦ってはいるが、体格差の分、どうにも分が悪いといったところだ。


 魔獣の拳が人間の左頬に入り、男は俺の足元まで飛ばされてきた。


「おい、いけるか──────?

状況を説明してくれ──────」


「うるせえ、黙って見てろ!!

逃げたらお前も子ども達も殺される。俺がなんとかするから動くなよ……」


「ん? お前、アルヴァンじゃないか」


「ああ? ああ、クラスメイトか。

────こんなところで何してやがる」


「散歩だよ、お前こそどういう状況だ」


「散歩って……

いや、俺の状況はいい。お前も、少なくとも魔法学院に入学できる程度の魔法は使えるってことだな?」


「それなりにな────」


「ならいい。俺が奴らを引きつける。

今は一対一だが、いつ連中の気が変わるかわからない。隙を見て子ども達を連れて逃げてくれ」


「お前は──────?」


「俺は連中が子どもを連れ去ろうとしたのを追ってきた。奴らは一体一での戦いを提案してきやがった。ゲームのつもりだよ、ふざけやがって」


「状況はわかった。だが、それだとお前が助からんだろう」


「見くびるなよ。勝ち筋は必ずどこかにあるはずだ」


「確かにな、お前の戦っているあいつが、肉体的にも纏っている魔力的にも一番の猛者と見える」


「お前……そんなことわかるのか……?」


「アルヴァン、お前が望むなら力を貸すぞ」


「聞いてたか? お前が一緒に戦うと四対二になって子どもを庇いきれなくなる」


「早まるな。俺の魔力を貸してやろうと言っているんだ」


「ああ? 意味がわからねぇよ」


 俺はアルヴァンの肩に触れ、錬成した魔力をほんの少しだけ流し込む。


「………………!

なんだこの魔力は…………?」


「意味はわかったか。あの子らを護らんとするお前が、ここで死ぬのは惜しい。

戦うのはお前だ、俺は魔力を貸してやる。

追って返せばいいだけだろう」


 俺は【魔王の祝福】を発動し、瞬時に契約書を作成してアルヴァンに渡す。


「本来はじっくり読むべきなのだがな、内容を掻い摘んで説明してやろう。

俺の魔力を、お前の望むままに貸与する。自由に使え。魔力の底が上がる感覚だ、いつもの感覚で同じように使えるだろう。

返済期限は半年、一ヶ月で一割の利子をつけて返してくれればいい」


「お前、なんでこんな……」


「説明はいい、相手が痺れを切らしているぞ。

死んだら返済は免除される。思い切り戦ってこい」


「────拇印でいいか?」


「構わん。俺の契約書のサインは意思表示であれば、何であれ有効になる」


「ありがたく貸してもらうぜ、同級生────」


 自分の血で捺印したアルヴァンは、俺の錬成した強力な魔力を纏うと、魔獣に向かって飛び出していった。


 拮抗していた戦況が一気に変わる。

 アルヴァンは相手の拳を跳ね除け、拳を打ち込む。明らかな劣勢に、相手の群れにも焦りが出ているようだ。



 ダン────────────



 俺は背後からアルヴァンを狙っていた群の一体の足元に魔弾を撃ち込む。


「一体一はお前らから持ちかけたんだろう?

吐いた唾を呑むなよ──────。魔獣としてのプライドはないのか?」


 魔獣たちは顔を見合わせて、何やら言葉を交わしている。


「それでも手を出すなら俺が先に相手になる。三匹まとめて掛かってこい」


 見物していた三体のうち、一体がアルヴァンの方に、二体が俺に向かって飛びかかってくる。

 俺はアルヴァンの方に向かった個体の頭と首を魔弾で撃ち抜くと、飛びかかってきた二体を体術と魔法を織り交ぜて制圧する。


 アルヴァンも相手の魔獣を完全にのしたところのようだ。首の骨が折れている。


「お前……」


「完全勝利だな。何があったか説明しろよ」


「ああ……。

街の外れで仕事……バイトをしてたときに、こいつらが子どもを連れ去ろうとするのが見えてな。追いかけてきてこうなった」


「貴族の子どもか? いつの世も不用心だな。人間からも魔獣からもターゲットにされやすいんだから、気をつけないと……」


「それより、お前…………!」


「ハイディアだよ、覚えてくれ」


「ハイディア……!

お前……昔、北の森で盗賊団に攫われた子どもを、兄弟を助けなかったか?」


「……?」


「お前の撃った魔法の弾丸だ。

死にかけた俺と弟を助けてくれたのは、お前の撃ったのと同じ青い弾丸を撃つ奴だと弟から聞いた。

そいつは俺と同い年くらいの子どもだった」


「ああ……え? あのときの?

俺が治療してあげた子が、アルヴァンなのか?」


「やっと会えた……。

あのときは……ありがとうな……。

やっと……やっと礼が言えた……」


 アルヴァンが両手で俺の右手を強く握る。震えているのが伝わってくる。


「いや、そんな大層なことじゃない。たまたま見つけただけの話だ。次の日の新聞で、君たちの無事は確認できたから安心していたよ。

助けた俺のことも明かさずに、約束を守ってくれて嬉しかった。こちらこそありがとう」


「ハイディア、貸してくれた魔力も必ず返す。

重ね重ね、本当にありがとう……」


 声を振り絞るように、礼を告げるアルヴァン。こいつみたいな奴ばかりだと、契約を盾にして魔力を奪い、固有スキルを増やしていく俺の計画が頓挫してしまうのだが、これはこれで嫌な気はしないな。



 俺は魔獣四体の遺体を【どこでもポケット】に収納し、保護した子どもたちを連れてギルドへ向かった。

 アルヴァンと(実は俺も)ギルド未登録ということもあり、高ランクの魔獣を持ち込むと面倒ごとになることも考えられるため、俺が単身で引き受ける話になった。

 俺は道中、物陰に隠れて、Sランクハンターであるハイドの姿に変身した。不思議がる子ども達には、仲間だと説明した。



 ギルドに到着して受付を済ませた俺に、オールムが駆け寄る。


「ハイド、待たせたな」


「オールムさん。お忙しいところ、急遽申し訳ありません」


「ロザリアから話は聞いている。子ども達の救助ならびに、魔獣討伐、ご苦労だったな」


 時間差で駆けつけたバリーがオールムの背後から顔を出す。


「オールムさん、ハイド、とりあえず第二会議室に!」


 第二会議室に入ると、バリーが防音魔法を展開する。俺は床が汚れないよう、シート状に魔法を展開すると、四体の遺体を【どこでもポケット】から取り出す。バリーとオールムが遺体を確認する。


「こんな種族は見たことがないですね……」


「オークのような特徴もあるが……これも変異種か?」


「人間の言葉を完全に理解して、会話をしていました。こちらに対して、一体一を提案して、戦闘を楽しむような様子も」


「……至急分析班に回そう。ハイド、ギャラは諸々が済んでからになってしまうが構わないか?」


「構いません。ただ、この種族は────

おそらくこの四体だけではないと思います」


「調査隊を組むことになるかもしれんな……」


 調査を仕切っているバリーが忌々しそうに呟く。


「ところでハイド、今回はソロではなかったのか?」


 オールムが不意に訊ねてくる。


「魔法士の少年が誘拐現場に居合わせていました。連中の一人と交戦していたところに、私が通りかかって助太刀したという流れです」


「なるほど、その彼はどうした?」


「彼はギルド未登録でして、面倒ごとはごめんだと私に一任しました。無論、ギャラは折半するつもりですよ」


「彼とは知り合いなのか?」


「はい、ちょっとした縁がありまして」


「なるほど、ハイドの知人というのも珍しいので気になってしまった。これ以上は聞かないよ。

無理強いはしないが、ぜひギルド登録をするよう勧めてほしい」


「承知しました。それでは私はここで失礼します。

今回は子ども達がいたから、彼らの安全を優先しましたが、次回は生け捕りにしようと思います」


「そうしてくれると調査の手間が減って助かるよ」


 バリーが俺の肩を叩く。


「生け捕りは願ってもない話だが、人目につくとパニックになりかねん。リスク回避の意味も込めて、持ち込みではなく、現地合流して秘密裏に処理したいところだな。また改めて話をさせてくれ」


 どの道、オールムとバリーの仕事を増やしてしまうばかりになりそうだ。ギルドとしては高ランクの魔獣、特に変異種が増えていることをかなり問題視している様子だな。

◆御礼

読了ありがとうございます!

面白いと思っていただけたら、ぜひぜひブックマーク、リアクション、評価、感想/レビューをいただけたら、ものすごく励みになります。よろしくお願いいたします。


◆告知

『夜の王と契約魔法』はカクヨムコンテスト11にエントリーしています。(他プラットフォームにて失礼します)

https://kakuyomu.jp/works/822139839656378427

おかげさまで、新人作家の処女作であるにも関わらず、現在競合ひしめく「異世界冒険部門」で、100〜200位/1800作品と大健闘しております。

あなたの一票で、大きな支えを得られます。ログイン、フォロー/評価というお手間をかけてしまいますが、是非あなたの手で作品を育てていただけると、嬉しいです。何卒、よろしくお願いいたします!

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