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夜の王と契約魔法〜ルールで縛り、契約で奪う──契約魔法で成り上がる【無双×暗躍】譚〜  作者: 皆月いつか
第1章 王立魔法学院・入学 編

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第4話◆勇者 ネージュ・エトワール


 ネージュ・エトワールは勇者だった。

生まれた直後から豊潤な光属性の魔力を纏い、すぐにそれを自在に使いこなすことができた────所謂ギフテッドである。

 そうして光を纏うように生まれてくる子を、人は勇者と呼び、王国や聖教会が抱えて祭り上げる。

 「英雄」が、その功績により得られる称号であることに対して、「勇者」は天賦の才を指す。


 勇者を抱えることは、即ち国力にも繋がる。

 厳密には、勇者は、王国と聖教会での取り合いになるのだが、エトワール家は代々王国に寄っているため、王国がイニシアチブを取ってネージュを育成していた。


 ネージュは由緒正しい侯爵家の三男だった。

 生まれる前から勇者であるとされ、生まれた瞬間にはもう歩む道が決まっていた。

 光属性の魔力ゆえに、魔獣から忌み嫌われ襲われることもあったが、それらを全て、圧倒的な力で跳ね除けてきた。


 ネージュは純粋だった。


「勇者様、いつもありがとうございます」


「勇者様、どうか握手を……」


「勇者様、うちの赤ちゃんに触れてください」


「勇者様────」


 行く先々で、手を差し出す弱き者たち──彼らを護るたびに、感謝され崇められた。

 自分は魔物や魔王と呼ばれる悪を倒す力を持っており、それは自分に感謝してくれる善良な市民を護るためにあるのだと、ネージュは幼心に理解していた。



「今だ、ネージュ!」



 斬────────────!



 熟練の魔導士サルウェルの指示に合わせて、ネージュは剣を振るう。



「ぐむっ……………………」



 ドサッ──────────



 一つ目の巨人の上半身がずれ落ちる。


「サイクロプスの討伐完了だ。さすがだな」


 リーダーのサルウェルが拍手をする。


「これでネージュとは暫くお別れね────寂しくなるわ」


「王立魔法学院を卒業する頃には、ネージュの組んだパーティとタッグを組むこともあるだろう。すぐの話だよ」


 魔法士の女と、盾役の大男が名残惜しそうに話す。


「サルウェル、ミズム、ゴードン────三人ともありがとう。僕は君たちに教えてもらったことを糧に、立派な勇者になってみせるよ」


 ネージュはサルウェルたちと、固く握手を交わす。

 ネージュは王国のツテで、Aランクハンターの英雄パーティである【神界の青龍】に帯同し、実戦でその牙を磨いていた。


 ネージュには、エトワール侯爵家から独立する、華々しい未来が約束されている。エトワール家にとっても、勇者を輩出した家柄ということで一層の箔がつく。

 ネージュは王立魔法学院に進学し、首席で卒業後、勇者としての道を歩むという絵が既に描かれていた。



 入学式の日、A組のクラスルームにて────。


「ネージュ、久しぶりね────」


「────イーナじゃないか! 会いたかったよ」


 ネージュがイーナの手を取る。


「もう私たちは子どもじゃないんだから、いきなり女の子の手を握るのはスマートじゃないわよ────」


「あっ、ごめん…………つい…………」


「ふふ、ネージュは変わらないわね。

エレメンタリーを卒業したら、すぐに旅立ってしまったから────」


「うん、たくさんの人を護れるようにね。

ミドルスクールには通わず、【神界の青龍】ってパーティに同行させてもらって、修行をしていたんだ」


「噂では聞いていたわ……有名なパーティよね。

学校にまったく通ってなかったけれど、一般教養は大丈夫?」


「基礎教養はミズムっていうお姉さんから教えてもらっていたから、学力にそう差はないと思うよ。

それより、イーナとまた会えるなんて、夢みたいだよ」


「…………もう。

本当に変わらないんだから────」


 イーナは照れくさそうに顔を伏せる。

 聖教会の秘蔵っ子であるイーナは、エレメンタリーをネージュと同じ学舎で過ごした。王国と聖教会の複雑な関係など、幼い子どもにとっては与り知らぬこと────。

 恵まれた才能を持つ者同士、エレメンタリーでは仲良く過ごしていた。


「ねえ。今日の放課後、どこかで話せないかな? イーナに話したいことがたくさんあるんだ!」


「うん。じゃあ、一緒に帰ろう────」


 開け放した窓から、爽やかな秋風が二人の間を吹き抜け、ネージュは屈託のない笑顔を浮かべた。



 ネージュは王国の第四王女と婚約をしている。他国との政治的役割を持つ正室の上位王女ではなく、側室の子である第四王女と結婚した後、ネージュは王国騎士団の団長に就任することが内定していた。

 そしてイーナは、ネージュの側室として、ギフテッド二人から子が生まれることを、教会から期待されていた。


 これは王国、聖教会双方の複雑な思惑によってすでに既定路線となっている。

 次世代の子は王位継承権を持つギフテッドになる可能性がある。王は勇者ネージュの才覚を血筋に取り入れること、聖教会はイーナを使い、その血統への介入をそれぞれ画策している。


 純粋なネージュは王国の最重要ポストの一つである騎士団長となることで、最前線で国民を護れるという大義名分が得られること、自身の出自からは成り上がりともいえる、多大な恩恵と家門の繁栄を、両親や嫡男である長兄に与え、喜ばれていることを、栄誉だと理解していた。

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