第20話◆感情の矛先 【第1章 終話】
◇
ギルドから街の外れに向かい、徒歩十分ほど。屠殺場のような、魔物の解体所に到着した。
「思ったよりも広くないですが、ここに素材を出してしまって本当によろしいですか?」
「おいおい、失礼しちゃうぜ。
構わねえよ、兄ちゃん。
俺らが片っ端から捌いて行くからよ」
ここのリーダーみたいなおじさんがそういうのなら──────
「では、遠慮なく……」
俺が【どこでもポケット】に命じると、昨日討伐したニュートウルフがゴロゴロと出てくる。
リーダー的おじさんの顔がみるみる曇っていく。
「おい、思ったよりも一体一体がでかいな……」
「量もすげえな……」
………………
「おい、あとどんだけあるんだよ兄ちゃん」
………………
「ストップ、ストップ!
わかった、俺の負けだ! 降参だ!」
「これで終わりですよ────
こいつが討伐依頼対象です」
最後に一体、群れの長の遺体を出す。
おじさんが漏らす溜息には、気づかないふりをしておこう。
俺はオールムに討伐対象のことを話す。
「サンダーライガーとの混血のようです。
討伐した中には幼体もいましたが、特性の遺伝はしていない様子でした」
「ふむ、それならひとまずは心配いらないか。まさに変異種、だったのだな」
オールムは遺体を持ち上げ、特徴などを確認する。
「こいつの魔核と討伐証明だけは自分で取っておきました。お渡しします。
それで────できればこの魔核は自分で持っていたいのですが、よろしいですか?」
「わかった──────。
もろもろ解析した後になるが、返却するように言っておこう。だが……何に使うんだ?」
「いえ、特に理由はないのですが────
珍しいものなので、何か使い道があるかと思いまして」
「────そのくらいの理由なら売却を勧めたい。
魔核はそのままで魔法エネルギーの塊だ。
…………テロに使われることもある」
「おや、それは知りませんでした。
では、他の魔核と合わせて全売却でお願いします」
「そんなにあっさりと……いいのか?」
「ええ、あらぬ疑いは懲り懲りですからね────」
「うむ……」
ハタシンの一件もあり、少々嫌味な物言いかも知れないが、リスクを冒してまでこれ以上食い下がる必要もないだろう。
魔核の使い道は、魔王としては無限にありそうなものだが仕方ない。
「では、報酬と売却した金額は、明日取りに伺います」
「明日はロザリアは休みだが、代理の者でいいか?」
「いえ、それなら明後日伺います。
ロザリアさんにまた午後三時頃に行くとお伝えください。
解体等、お手数ですがよろしくお願いします」
「任せておけ。ロザリアには俺から伝えておこう」
◇
────ハイドが去ったあとのこと。
バリーが魔物の解体をしながらオールムに話しかける。
「ハイドの奴、掴み所がありませんね……」
「ああ、魔核を急に欲しがったり、かと思えばあっさり諦めたりな────」
「俺は固有スキルで分かるんですけどね……
魔核をテロリストが使うのを知らないなんて……あれで嘘はついてないんですよ。
知っていて当たり前の常識じゃないですか?」
「異国から来たと言っていたからな。
俺たちの常識が通じないのかもしれない」
「しかし随分と、ロザリアちゃんにご執心ですね」
「そうだな。ロザリアはああ見えて優秀なサポーターだ。
若くて見た目も良いが、ハンターの中には純粋にロザリアのサポートに対するファンも多い」
「俺は、ハイドも所詮は男ってところだと思いますけどね」
「下世話な邪推はよせ。
だが、ハイドがロザリアのことを買っているのは事実。
ハイドとギルドの距離を縮めるのに、ロザリアが一役買ってくれるかも知れんな……」
「くっつけちゃうのが一番だと思いますけどね」
「まったくお前は──────
ん? どうした、グラスフィア」
解体には参加していなかったグラスフィアは、黙って二人の元を離れると、ハイドの去った方向に走り出した。
◇
────オールムとバリーのやりとりが不快だった。
ハイドがロザリアのことを気にかけている様子なのも、ロザリアにだけ冗談を言ったのも、次に会う予定を入れたのも、ずっと不快だった。
だから、追った先にハイドの姿を見つけたとき、自分の感情の矛先を何処に向けて良いかわからなかった。
◇
「追ってきてくれる気がしました。
君と二人で話す機会がなかったから……
待っていて良かった────」
グラスフィアは何も言わず、抱きついてきた。
往来する人の目も憚らず、俺の胸に額をぐりぐりと擦り付ける。
だから俺も────それ以上は何も語らず、グラスフィアの細い身体を抱き締めた。
◇
三年後────十五歳になった俺は、王立魔法学院に入学することになる。
その頃、ハイド・ムスブルグはSランクとしてギルドの筆頭ハンターとなっていた。
グラスフィアとロザリアとの物語は、また別の話────。
◆御礼
第0章読了、ありがとうございます。
PVを見て、読んでいただいた足跡もきちんと認識しています。その一歩が、何よりの励みになっています。
第0章完は、
いわば【手札のカードが揃った状態】です。
ここから、手にしたカードをハイディアがどう切るかの【知略パート】に突入します。
学園でどんな出会いや思惑があり、魔王としてどう暗躍し、その裏でサブアカ・ハイドがどう立ち回るのか────。
第1章、第2章では複数ヒロインの登場、仲間との共闘、同級生の勇者登場など、ストーリーは段違いに加速していきます。
どうかお付き合いいただければ幸いです。
面白いと思っていただけたら、ぜひぜひブックマーク、リアクション、評価、感想/レビューをいただけたら、ものすごく励みになります。よろしくお願いいたします。
◆告知
『夜の王と契約魔法』はカクヨムコンテスト11にエントリーしています。(他プラットフォームにて失礼します)
https://kakuyomu.jp/works/822139839656378427
おかげさまで、新人作家の処女作であるにも関わらず、現在競合ひしめく「異世界冒険部門」で、100〜200位/1800作品と大健闘しております。
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