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夜の王と契約魔法〜ルールで縛り、契約で奪う──契約魔法で成り上がる【無双×暗躍】譚〜  作者: 皆月いつか
第0章 転生×暗躍×無双 編

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第19話◆謝罪の雨


 ニュートウルフの討伐から帰った朝。


「ハイディア様……?

朝から湯浴みをされていたんですか?

声をかけてもお返事がなかったから探しましたよ────」


「ごめん、ガーベラ。

寝汗をかいてしまったんだ────」


「わかりました、ベッドメイクをしておきますね」


 出会ったばかりの女の家から、朝帰りしたとは言えないよな──────。


 しかしこんなこともあるんだな……。

 実に異世界だ────けしからん。


 ハイドの中身はエレメンタリーに通う十二歳だぞ。しかし【モンタージュ・カタログ】の効果はすごいな……。


 今日の放課後はまたギルドだ。

 昨日のこともあって少し気まずいが、グラスフィアは来るのだろうか。胸が妙に疼く。




「ハイド!」


 ギルドに入るなり、ギルドマスターであるオールムが駆け寄る。グラスフィアを探す暇もない。


「討伐の件、バリーから聞いた。

百を超える大群だったこと、敵が未発見の混血種だったこと、甘い認識で危険な案件を指名依頼してしまった。

本当にすまなかった……」


「場所を変えましょう、人の目もあります。

余計なお節介かもしれませんが、ギルドマスターの立場で、いちハンターに対して、あまり人前で頭を下げない方がいい────」


「わかった。ご配慮、痛み入るよ……」


 移動した応接室には、既にグラスフィアとバリーが起立して待っていた。


「改めて今回の討伐、ギルドの不手際は到底看過できないものだと思っている。

本当にすまなかった」


 オールム、グラスフィア、バリーが揃って頭を下げる。正直……気まずい。


「まずは頭を上げてください。

結果として無事に討伐できたんだから良しとしましょう。

確かに、他のハンターやパーティに対して同じことが起きたとき、取り返しのつかない事態になりかねない。

とはいえ、不測の事態に臨機応変に対応するのが、私の考えるハンター像です。そこまで気になさることではありません。

どうしてもというなら、ギルドとして、原因究明をして、改善策を練れば良いと思います。


────私は怒ってなどいませんし、むしろ昨日の討伐は、一対多の戦略が実践できたので、実りの大きいものでした。

あとは討伐数に応じて、追加報酬さえ貰えれば言うことなしです」


「心遣い、重ね重ね痛み入るよ。

これは借りにしておく。何かの機会に必ず返す」


「あ、それなら素材と魔核の回収、お願いしてしまっても良いですか?

正直、これが一番気が重くて」


「もちろん、こちらで全てやらせてもらう。

魔物を解体できる施設がある。

この後、そこに魔物の遺体を持ち込もう。

ニュートウルフの肉は、食用にはならないが、薬の材料としての需要がある。

なるべく高く買い取るようにしよう」


「これで綺麗さっぱり、貸し借りなしですね。ありがとうございます」


「あの…………

私は監督官としても、有事にハイドを守る者としても、何もできなかった。

こんなにも自分を不甲斐なく思ったのは初めてだ……。

本当に、本当にごめんなさい…………」


 泣きながらグラスフィアが謝罪する。

 バリーも続ける。


「それを言うのは俺の方さ……。

二重監視をあっという間にハイドに看破されちまった。

それにニュートウルフの群れを前にして、グラスフィアも崩れて、当初の計画が瓦解しているにも関わらず、前線にも立たず、隠れてだけいた。

何処がAランクハンターなのかと思うぜ。

本当に申し訳ない……」


「うーん。

せっかく討伐が成功したんです。謝る感じの流れはここまでにしましょう」


「グラスフィアさんは、挫折という大きな経験をできました。それも、誰も何も犠牲にせずにです。

A級ハンターとして成長する良い機会ではないですか。


バリーさんは、もともと戦力としての役割はなかった筈です。

戦局が敗色濃厚なら尚のこと、破れかぶれで前線に立つよりも、いざ敗走するときに備える役目、私とグラスフィアさんがやられたときに、ギルドに報告する役目があったのでしょう。

罪悪感を抱えながらも、逸る気持ちを抑えて、戦局を見守る役割をきちんと果たしていたじゃないですか。


お二人とも、的外れに落ち込むのはやめてください。

討伐も成功した、全員生きて帰れた、気づきもあった。謝るのはやめて、これで終わりにしましょう」


────些か饒舌になりすぎたか。まあいい、二人は少し悲観的すぎる。

 ランクなんぞに胡座をかいていたのなら、これを機に自分を見つめ直した方がいいだろう。


「────ハイドはすごいな。

俺の言いたいことも、当事者としてはっきり言ってくれる。

指名討伐成功、ならびにBランク昇進おめでとう、ハイド!」


「いえ、ルーキーが偉そうに、失礼しました……」


「Aランク以上の昇進は色々条件があってな。ギルドマスターの一存で決められないことが、本当に申し訳ない」


 おいおい、この流れで謝るか──────。


「前にもお話ししましたが、ランクにはさほど興味はないんです。

ロザリアさんを担当にしていただいて、また討伐依頼を受けさせてください」


「ああ、ロザリアも君と話したがっていた。

彼女は若手だが、ギルド随一の優秀なサポーターだ。これからもよろしく頼む」


「では、素材を持ち込むとしましょうか」




 応接室を出て、ギルド玄関に向かう。

 気づいたロザリアが、対応を中断して駆けつけてくれる。


「ハイドさん……討伐おめでとうございます!

でも、危険な依頼を誤って提示してしまい、申し訳ありませんでした!」



 俺の悪戯心に火がつく。



「本当にね──────。

今、オールムには釘を刺したところさ。

ロザリア、君も後でたっぷり絞ってやるから、覚悟しておいてくれ──────」



「……はひっ、わかりまし────」



「────すみません、冗談です」



 俺はにっこりと笑う。



「ロザリアさんにはまったく責任のない話なので、謝らないでください。何のわだかまりもなしでいこうとオールムさん達と話はついています。

後日報酬を受け取りに来ますので、そのときは改めて、笑顔のおめでとうだけ、聞かせてください」


「は……はい! では、失礼します!」


 ロザリアは笑顔を見せ、また窓口に向かって走っていく。

 一方、バリーは肝を冷やしたような顔をしている。


「あんた、随分と迫力のある話し方もできるんだな────正直驚いたよ」


「ふふ、それは良かった。

普段の口調だけだと、軽く見られがちですからね。冗談くらい強い口調で言いたいものです」


「俺も正直びっくりだ、きちんと釘を刺されたと認識しておこう」


「おや、オールムさんまで。

では、そこは否定しないでおきましょうか……」

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