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夜の王と契約魔法〜ルールで縛り、契約で奪う──契約魔法で成り上がる【無双×暗躍】譚〜  作者: 皆月いつか
第0章 転生×暗躍×無双 編

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第16話◆ロザリアとグラスフィア


────後日、俺はまたギルドを訪れる。


「ハイド・ムスブルグ様、いらっしゃいませ。

担当のロザリアの窓口へご案内します」


「担当……?」


 それよりも、お役所仕事さんことナミドメの手の平を返したような対応に驚いた。

 しっかり顔と名前を覚えられている。


「ハイドさん、いらっしゃいませ!」


 受付の列があるにも関わらず、次の順番ですぐにロザリアの元に通してもらえた。ファストパスみたいだな。


「ロザリアさんが私の担当──なんですか?」


「えええ────

昨日言ったじゃないですか!

Bランク以上のハンターさんには担当がつきます。

ハイドさんはBランク『相当』として扱うようにと、マスターから指示をされているので、私が担当させていただきます!」


「そうなんですね……」


「全然昨日の話聞いてないじゃないですか!!」


(昨日はオールムとバリーとやらの会話を盗み聞くのに気を取られて、ロザリアの説明を流してしまっていたからな……)


「すみません……あの出向職員さんの手が大怪我だとオールムさんから聞いて、心ここに在らずだったのかも知れません────」


「はっ────

それは、こちらこそ気が回らず、大変失礼しました!!

では、昨日の話をもう一度最初から──」


「────いや、それは結構。

そのBランク『相当』って、どういう状態なのかだけ教えてください」


「えっと……通常、仮登録からランカーに昇格するのは、Eを飛ばしてもDが限度なんですけれど、ハイドさんはAランクの討伐をして来られたということで、ハタシンさんの件のお詫びも含めて、特例でCランクにするとマスターが話していました」


────オールムが何となくゴニョゴニョ濁していたところを、はっきりお詫びって言っちゃったな、この子は。まあいい。


「ただそれは、あくまでランク上の話で、ハイドさんは実質Bランク以上の実力をお持ちと、マスターは考えています。

それもあってBランク『相当』と。

こちらから指定した討伐を成功された際に、晴れて正式にBランクに昇格するという意味です」


「なるほど、そうなんですね──────」


「────ハイドさん、記憶喪失なんですか!?」


「ですが、私は元々気ままにやるつもりでした。指定の依頼がある時に私が来るとは限りませんよ」


「マスターからは、いつハイドさんが来られてもいいようにと、すでに手元にご用意してあります!

ご覧になるだけでも、いかがですか?」


「随分と買い被られたものですね……」


 ロザリアから三枚の討伐依頼書を渡される。


「ふむ、これは……

なかなかどうして、面白い」


 ロックリザードの変異種、ニュートウルフの変異種、ハンターキルをする人間、三つの案件から一つを選んでミッションクリアする────か。

 監督官という、お目付役をつけるというのが面倒だがな。



「────ロザリアさんはどれが良いと思いますか?」


 俺は少し意地悪な質問をロザリアにぶつけてみる。


「私は……ロックリザードが良いかと思います」


「────その心は?」


「ロックリザードの最大の脅威は、表皮の硬さですよね。

 敵は捨身の攻撃をしても、ほとんどダメージを負わないので、接近戦に長けています。一昨日拝見したハイドさんの魔弾なら、問題なく遠距離から狩れると思います!

ロックリザードの弱点は予習済みです! もし……変異種ということで弱点がカバーされていても、遠距離なら立て直しも可能だと考えました。

そんな理由から、監督官にもハイドさんの実力のすべてを見せずに済むと思います!!」


「────驚きました。

まさかここまで思慮を巡らせてくださるとは。

ロザリアさんを侮っていました。心からお詫びします」


「いえいえいえ……

そんなそんな、全然全然ですよ──!」


 頭を下げる俺に、ロザリアが困ったような顔で笑う。


「お目付役がいること────それを私がよく思っていないと気づいてくれて、力をあまり見せたくないことまで慮ってもらえるとは。

当初は担当など無用と思っていましたが、気が変わりました。

これからもロザリアさんに担当していただきたい。

今回の指名依頼、謹んでお受けいたします」


「恐縮です……ありがとうございます!!」


「先ほどのロザリアさんの答えは百点満点でした。

その上で、ニュートウルフの依頼を受けさせていただきます」


「承知しました!

ではでは、日時の候補を第三希望までいただいていいですか?

監督官との日程調整をしますので」


「ニュートウルフにする理由は────訊かないのですか?」


「実際に命を懸けて戦ってくださるのはハイドさんですから……私がどうこう言えることではありません!

でも……討伐した暁には、なぜニュートウルフを選んだか、答えを教えていただけると嬉しいです!」


 ロザリアはにっこりと微笑んでくれた。俺がこの先ハンターとして生きるのであれば、専属にして欲しいくらい「出来る子」だ。


「さて、同行するお目付役の希望ですが──

最低限自分の身を守れる方なら、何方でも結構ですよ。

バフもデバフも回復も要らないので、頑丈な方か、逃げ足の速い方をお願いします。

日程の希望は────」


「────承知しました。

それでは確認してきますね」


………………


「ハイドさん、明日の夜でお願いしたいとのことです。

監督官は現役Aランクハンターのグラスフィアさんが担当することになります」


 ロザリアと一緒に現れた赤毛の女性──二十歳前後くらいであろうか。

 この歳にして手練れなのだろう。華奢な身体とは裏腹に、漲る自信が纏うオーラに表れている。


「グラスフィアだ。よろしく」


 彼女が差し伸べてくれた手を握り返す。互いを纏う魔力が拮抗する。


「ハイド・ムスブルグと申します。

こちらこそ、よろしくお願いいたします」



「────では、集合場所などは、この後お二人でお打ち合わせされてください。

窓口が激混みしちゃってるので、私はこれにて失礼します! ハイドさん、Bランクのカードを用意してお待ちしていますね!!」


 ロザリアは笑顔で頭をぺこりと下げると、忙しなく窓口に戻っていった。

 お目付役のグラスフィアがフランクに話しかけてくる。


「あのハタシンをぶちのめしたそうね。

あいつは腐っても王国騎士、それを伸したあなたの実力は疑わない。

けれど、ニュートウルフはかなり癖のある魔獣なの。ソロ討伐は本来ならご法度のはず……」


「対峙したことはありませんが、大丈夫ですよ」


「対峙していないのに、どうして分かるの?」


「今回のニュートウルフの被害状況を見ました。

弱者を集団で甚振る、かなり残忍な性質のようですね。民間人の被害もかなり出ている」


「………………?」


「────躊躇なく狩れるじゃないですか」


「──────!」


「先程、ロザリアさんには話しましたが、

手助けは無用です。すべて私がやります」


「……わかった。だけど、一応伝えておく。

私は前衛────アタッカータイプ。

ニュートウルフは与し易い。

万が一ということもある。

きついときは早めに言ってくれ」


「よろしくお願いします」


「では明晩、ギルドの前で────」


 お目付役────監督官と聞いて、ハタシンみたいな横柄な奴を想像していたが……

 オールムもギルドマスターとして気を回してくれたんだろう。

 それに彼女、なかなか強いな。


 ふふ、明日の夜が楽しみだ──────




 ハイドが帰った後、バックヤードにて。


 先日、オールムとハイドのやり取りを裏で聞いていたバリー。彼もAランクハンターである。

 そのバリーが信じられないといった顔でオールムに問いかける。


「あいつ、ニュートウルフを選んだって?」


「だから見所あるって言っただろう?」


「────オールムの言う通り、被害状況を見て選んだみたいよ」


 監督官となるグラスフィアが話に加わる。


「でも、ニュートウルフの変異種に初見で挑むとか、正気とは思えねぇよ」


「────バリーは後方で気配を消して転移魔法の準備をしておいてくれ。

ハイドが倒れて、グラスフィア一人だと撤退も厳しくなるからな」


「やっぱ俺も行くのかあ────」


「これ、討伐対象は一体だけど、群れでしょ?

本来はAランク以上のパーティに依頼する案件だと思うわ」


「その通り。ハイドは三択の中の大当たりを引いた訳だ。

まあ、Aランク二人でしっかりフォローしてやってくれ。

奴はBランク『相当』だがあくまでCランクだ。

討伐に失敗しても、ハイドの評価を変える気はないが、どうも奴には期待してしまうんだよな」


「彼には自分の身は自分で守ってもらって、最初から私が戦うつもりで挑むわ」


「俺は本気で隠れて、撤退に備えるぜ。

苦しんで死ぬのは御免だからな」


 割に合わない仕事だ──────

 二人は心底そう思った。

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