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夜の王と契約魔法〜ルールで縛り、契約で奪う──契約魔法で成り上がる【無双×暗躍】譚〜  作者: 皆月いつか
第0章 転生×暗躍×無双 編

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第15話◆論破Ⅱ


「ハイド様、お待ちしていました」


 俺はハタシンを捩じ伏せた翌日、約束通り午後三時にギルドを訪れると、ロザリアが出迎えてくれる。


「応接室にお通しいたします」



「ハイドさん、お待ちしていました。

改めまして、ギルドマスターのオールムと申します」


 起立して待っていたオールムに深々と礼をされる。


「どうぞお掛けになってください」


 ロザリアが飲み物を出してくれる。


「どこからお話ししたら良いやら……


まずは討伐のお礼です。塩漬けと言いましたが、件のオークはなかなか一筋縄ではいかない相手でした。


Bランクハンターも討伐失敗するなど、指名討伐依頼に切り替えるか、もしくは討伐ランクをAに格上げしようかとしていた矢先の一報でした」


「────それは惜しいことをしました。

実質Aランクの魔物を、Bランクのうちに討伐してしまったということですか……」


「いえ、それが一昨日の会議でAランクに変更していたことを思い出しまして……

ハイドさんはAランクの討伐をされたということになり、もちろん見合った報酬もお支払いいたします」


 言い含めたような口ぶりだ。つまり────


「────そこで、昨日の話になる訳ですね?」


 オールムは大きく溜息をつく。


「────お察しの通り、ハタシンの件は誠に申し訳ありませんでした。

情けない話ですが、王国から出向してくる人材は、基本的に外郭団体であるギルドや、そこに所属するハンターを下に見てくる……

私が御し切れないせいで、昨日のような騒ぎとなり、ハイドさんに失礼を働いてしまった」


「まあ、その辺りはお立場もあることでしょう。一筋縄でいかない力関係は理解できます。

だがしかし、我々ハンターには関係のない話でもある────」


「返す言葉もない……」


「まあ、ギルドマスター直々に、討伐ランクと報酬に手心を加えてくれたんです。

こちらは手打ちで構いませんよ」


「そしてCランクということで、ギルドカードを発行させていただきます」


「はい。もとより私は名もなき流浪の民のようなもの。

身分証明の観点でハンターギルドに受け皿となって欲しかっただけです。

あまりランクに拘りはありません」


「恐れ入る…………」


「一つお願いを申し上げるなら、もう少しフランクに接してくれますか?

ギルドマスターほどの立場の方から、お客さま扱いされるとどうにもくすぐったい」


「そうか……気を遣ってくれてありがとう。


────ハイドはどこの生まれなんだ?」


「ここから言うと東に当たるのか……小さい島国の生まれ、しがない商人の息子でした」


 俺は敢えて前世の出生で答える。


「昨日の実力は、我々の尺度でいうAランクにも相当すると見た。

商家の出とは思えない。相当な研鑽を積んだことだろう」


「まだまだ道半ばですよ。

質問はこのくらいにしておきましょうか。

長い付き合いの中で、少しずつ互いを知る方が楽しいでしょう」


「そうだな、失礼した。

だが、ギルドマスターとして、最後に一つだけ訊いておかねばならないことがある」


「何なりと────」




「君は昨日、俺が制止した後で、ハタシンの指を撃ち抜いたな。

──────あれは、わざとか?」




────その一言で空気が変わる。




 なるほど、ギルドマスターは伊達じゃないな。見抜かれていたか。


「────ええ。御明察の通り、紛れもなく故意によるものです。

あそこまで虚仮にされて、ごめんで赦して差し上げるほど大人ではありませんからね」


「……正直に話すんだな」


「ええ、嘘は吐きたくない性分でして。

あの一撃を咎められるのならば、最初に私の剣を弾き落とした後、何度も殺そうとしてきた彼にも非があるというもの。

私が撃たなければ、これから先、彼の凶刃の犠牲になる無辜の民がいたかもしれない────」


「それも承知の上だ。

だが、ハイド。君の答えを、君の口から聞きたかった」


「そんなものでしょうか。

ではお咎めは──────?」


「──────ある筈もないだろう。

正直に答えてくれてありがとう」


「それでは、これで失礼します。

報酬とカードは窓口で受け取ればいいですか?」


「いや、後ほど俺から直々に渡したい。

それと────これから宜しく頼む。

君ほどの実力者に所属してもらえるのは幸甚だ。将来性も含め、ギルドとして、大いに期待している」


「わざわざありがとうございます。

何かあれば、今後もまた声をかけてください」


 一礼して、部屋を出ようとするとオールムが呼び止める。



「…………気にならないのか?」



「────何がですか?」



「ハタシンのことだ」



「ふむ……

どうせ右手は使い物にならないでしょう。

狙って撃ちましたから────────

命を奪わなかっただけ、感謝してほしいくらいです」


 俺は瞳を細め、口角を上げる程度に笑う。


「奴は剣にすべてを捧げ、剣に生きてきた人間だ。

それを奪われるというのは、ある意味で命を奪われるよりも酷なことかも知れない────」


「それは、私の与り知ることではありません。

王国騎士団に籍を置くものが、ハンターとはいえ、民に剣を振るって良い理由にはならない。

ましてや民の命を濫りに奪っても良いと思い上がっていたとするなら、自分もまた奪われることもあるのだと、肝に銘じておくべきだったかと」


「ぐうの音も出ないな────」


「冷たいように映るかも知れませんが、命まで奪わなかったのは、彼の再起に期待する思いが無い訳でもないからです。

人は耐え難い絶望から這い上がるとき、最も精神的に成長するものだと──────

私は身をもって知っていますから」


「君の過去に何があったんだ…………?」


「もう少し仲良くなったら、改めてお話をしましょう。オールムさん──────」


 俺はオールムの瞳を見据えて一礼する。



──────バタン


……………………


「バリー、もういいぞ。出てこい」


「あの胆力…………すごいですね。

マスターの所感としては、いかがでした?」


「弩級だな、文句なしの期待の新人だ。

奴の言葉はどうだった?」


「……俺の固有スキルにかければ、嘘は見抜けます。嘘は吐いてなかったですよ。

出自のところは少し怪しいですけどね」


「────というと?」


「嘘は吐いていない、だが核心は話していない。何か隠している様子です」


「そりゃ初対面に近い人間だし、逆にその辺りをベラベラ喋るのもな……」


「ハタシンの右手のことは、ノータイムで正直に話しましたね。

しかも、それについては間違いなく真実を話していました」


「そう。そこは意外だったんだ……

あれは『わざとじゃない』で幾らでも言い逃れができるケースだ。

だが、ハイドは躊躇わずに真実を語った」


「どういうことなんですかね……」


「俺を信じて腹を割って話してくれたか、

嘘をつけない正直者か……

もしくはバリーの────嘘を見抜ける魔法士の存在に気づいていたってところか」



「────御明察」


「え、ハイドさん何か言いましたか?」


「いえ、気のせいですよ。

さあ、ロザリアさん。ギルドカードについてでしたね。続けてください────」


「ギルドカードの説明は二つ前に終わりました。今はギルド内施設の説明です──────」


 ロザリアがにっこり笑う。


「それは失礼──────」


 俺もにっこりと笑う。


 俺は応接室の外から、一定間隔で魔力の粒子を残してきた。細かい魔力に音を反射させると、ある程度の距離の会話くらいは聞き取ることができる。

 俺の受け答えが、傍聴者に悪い印象を与えなかったようで何よりだ。



 オールムの示唆した可能性を、バリーが否定する。


「────まさか、そこまで読みますかね?

俺の気配、漏れてました?」


「いや、完璧に隠せていたと思うぞ。

まあ、そういう可能性もあるってことさ。

そして……正直なところ、あいつのことを気に入った」


「────というと?」


「ハイドは顕示欲や快楽、生活の糧といった、ありふれた理由で戦っていない。

あいつはあいつなりの信念を持って、戦いに身を投じているようだ。それが面談で感じられた。

その辺り、いずれゆっくりと話してみたいものだよ────」


「そんなものですかね?」


「お前だって、ハイドがハタシンぶっ飛ばしたときはスカッとしたろ?」


「そりゃもう、ねえ!」


「そんなものでいいのさ。

あいつの素性は少し気になるが、気の悪い奴じゃない。これ以上は何も探らなくて良い。

ギルドとしては、優秀なハンターとの信頼関係を築きたい」


「了解です」




 ギルドマスターのオールムは、思っていたよりずっと、とっつきやすい男のようだ。

 警戒心も、頭の良さも丁度いい塩梅だ。

 恐らくはハンターとして、現場の叩き上げで今の地位に居るのだろう。


 こうして【ハイド・ムスブルグ】は、

【ハイディア・ソルティレージュの影】として生まれた。


 報酬でハイドとしての家でも借りようか。

Cランクのギルドカードなら身分証としても使えるだろう。

 隠れ家みたいでわくわくするな────。

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