第11話◆サブアカ
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「今夜は満月か────。
闇属性の魔力量が最大になる好機、狩に出たいが、何か良い手はないだろうか────否、できてしまったんだ」
俺は逸る気持ちを抑えられずにいた。
ソメヤに授けた固有スキルの【モンタージュ・カタログ】が俺のものになった。これで俺は身長も、顔も、声も、全てを偽って行動できる。いわばサブアカだ。
取り急ぎ、エレメンタリーの昼休みに、ハンターギルドに登録だな。
【ハンターギルド】
王国の外郭団体。特定の条件を満たした魔獣は討伐が民間人にも開かれ、討伐に対する管理と報酬の窓口をギルドが担う。
貴族社会において、平民以下でもハンターとして高い評価を受ければ、国に召し抱えられるチャンスとなるなど、戦力の裾野を拡げるという名目の下、平民のガス抜きとしての役割も担っている。
それだけにハンターとしての登録は簡易なものとなっており、仮に住所がない路上生活者や移民でも登録はできるようになっている。
討伐実績を積めば、ギルドカードが発行され、最低限の身分も保証される。
登録したてで実績がない場合は、仮登録扱いとなる。
登録可能年齢は十九歳以上、条件付きで十五歳から可能となっている。
討伐難易度と討伐回数の係数に応じて、ハンターにはA〜Eのランク付けがされる。
より危険な討伐手配は、公示されず、高ランクのハンターに指名依頼がされることもある。
なお、討伐対象とハンター、どちらもAの上にSランクが存在するが、条件は厳しく一部では都市伝説扱いされるなど、職員を含め、眼にすることはごく稀という。
***
ハンターギルドって、要は役所みたいなもんだよな。とりあえず年齢確認されると面倒なので、四十歳くらいの見た目にして登録を試みる。
うろうろしていると、眼鏡をかけた案内係が声をかけてくる。
「本日はどうされましたか?」
「新規登録────」
「────それではこちらの番号札を持って、そちらの窓口前でお待ちください」
能面のような顔をした眼鏡の女に、食い気味に案内される。
どこの世界にも、古臭いお役所仕事というものはあるものなのだと、不意に前世の役所の受付を思い出し、懐かしいような気持ちになる。
三十分ほど待たされ、案内された先で笑顔のお姉さんに、これまた事務的に登録された。年齢確認はされなかったので、やはり老け顔にしていって正解だった。
「それでは、ハイド・ムスブルグさん。
仮登録が終わりました。こちら仮登録証になります。
一般公開の討伐依頼は、二階に掲示してありますので、この後ご覧になってください。
何かご質問はありますか?」
「討伐依頼にランク制限のようなものはあるのか?」
「いえ、掲示されているものは、仮登録の段階からすべての依頼をお受けいただけます。
でも高ランクの依頼はリスクが高いです。
まずはフリーランク、Eランクの依頼をお試しいただくことをお勧めします」
「事前申告は?」
「不要です。人数などの制限のある依頼の場合は、個別にこちらから依頼をすることになりますので、まずはE以上のランカーになっていただいてからとなります」
窓口女性は笑顔で答えた。
「承知した、ありがとう」
「ご提出いただく討伐部位の一覧、高価で買取ができる素材などの一覧をまとめた冊子を、奥の売店で販売しております。
宜しければお買い求めくださいね」
なるほどな──────。
仮登録証には顔写真はない。次回は顔を変えてきても問題なさそうだな。テンションが下がるから、もう少し見た目にも気を配りたいものだ。
鏡に写るくたびれた顔を見て、俺は自嘲気味に笑った。
◇
まるでアバターの顔作りだな。
昼休み明けにハンターギルドから学校へ戻ると、午後の授業中はひたすら【モンタージュ・カタログ】のタブレットと睨めっこをしていた。
ランダム生成するよりも、好みのパーツを組み合わせた方が良さそうだ。
────よし、こんなもんかな。
髪の色を銀髪に変え、顔は元の俺の顔をベースに、大人っぽく二十歳以上に見えるように変更した。
よし、これをプリセット登録しておこう。
もういくつかプリセットパターンを作っておきたいな……
小柄なおばあさん、太ったおじさんなども登録しておこう。
あとランダム生成でできた、キレッキレの殺人鬼みたいな奴も入れておこう────楽しいな、これ。
うーん、見た目に合わせて敬語で話そうかな。一人称も普段使わない「私」にしよう。やっぱりこれ楽しいぞ。




