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カタラレヌ・クロニクル  作者: 河鹿 虫圭
序ノ章 七大罪
1/71

空白

『神』とは、傍観者である。


幾度の生と死を経験し、悟りを開いた訳でもなく左目を代償に魔術知識を手に入れたわけでもなく・・・

人間が、「これを望むので、無償で叶えてください。」と天に願ったその時に生まれた都合の良い存在。

それが、『(わたし)』である。挙句の果てに(わたし)は乗り越えられる試練しか与えていないそうだ。



          理不尽だ



生み出しておいて、無償で欲望を叶えろ?都合が悪くなったら直ぐに(わたし)のせいにするくせに?


総ておいて、都合のいい存在。それが、神である。


私は総てにおいて、傍観しかしていない。歴史(過ち)神話(噓っぱち)も見てきた。


『空白』のこの場にも人間が追いやったのだ。

ここは何もない場所だ。強いて言えば、ありとあらゆる人間の主観、感覚が見れ、感じ取れる。


破綻、恋愛、営み、怒り、憎悪、喜び、日常etc.・・・


気分が悪くなる。


吐き気を催す程に。


だが、それももう慣れた。


怒りは諦めへ、涙は枯れて、喜びは無関心へ、楽しみは無気力へ。


この現実を痛いほどに受け入れてた。


扉の開く音を聞き、光が差す方へと視線を移す。入ってきたのは、ボロボロの七分丈の白い服に黒い長ズボンを身にまとう、くすんだ赤い瞳の白髪の少年と前部分全開の黒いトレンチコートの中に白いタートルネックを着た青い瞳の黒髪の青年の二名だ。

白髪の少年が私の顔を見るなり、口から毒を吐く。


「考え事か?顔が不細工だぞ。」


この子の毒舌(これ)は今に始まったことではないが、それでも何というかため息が出てくる。


「はぁ、君は上司に向かってそんな口をよく聞けるね。」


「こいつのこれは今に始まったことじゃないでしょう。」


黒髪の青年は親指で雑に少年の方向を指す。少年はそれが気に食わなかったのか少しばかり乱暴に青年の手を振り払う。


「うるせ、それよりも今回はなんだ?また、内輪揉めならやめろよ?」


「そんなことじゃないから難しい顔をしていたんだろ。考えろ阿呆。」


「はぁ?」


「んん?」


また、始まった。この二人は顔を合わせるといつもこうだ…だが私は神なので、決して怒ったりしない。

二人をまじまじと見つめ、終わるのを待つ。遮ったり、口をはさんだとしても二人に巻き込まれるだけだからだ。

二人は違和感に私の方を見つめる。


「喧嘩は終わったかい?」


「「は、い」」


改まった表情を見るに二人は私が起こったと勘違いしているだろう。

なら、都合がいい。それよりも…………


「さて、話すのが遅くなって済まない。本題だが、憤怒、嫉妬、色欲、暴食、怠惰、傲慢の計6概念を司る魂が現世に降り立ってしまったようだ。これら、七大罪概念に該当する魂は中心にて欲を満たすだろう。」


黒髪の青年が挙手し、質問してきた。


「強欲は?」


「奇跡的に強欲は出ていないが、恐らく現世で強欲に該当する人間か魔族が何らかの手段でこの六魂を呼び出したのだろう。他には?」


「該当する魂の詳細は?」


「色欲 クスィ=アロンナ、嫉妬 スラウ=システィーナ、暴食 グラン=グラトニーグラトニー、怠惰 ベルフェゴル、憤怒 ガー=フラムフェルズ、傲慢 ルシファーだね。」


「おい、約二魂原初の悪魔と堕天使いるんだが?」


「すごいね、召喚した人はかなりの恩恵を受けているだろうね。」


二人からの質問が途絶えると改めて指示を出す。


「六つの魂で計60年以内だね。では、【修正係(フィックス)布田 龍兎(ふた りゅうと)。【抹消係(イレイザー)無田 皆無(むでん かいむ)。双方は求年以内に魂を獄門へ送り返すこと。」


「わかりました。無田 皆無(むでん かいむ)、使命を全うします。」


黒髪の青年はトレンチコートを音を立てて翻す。その姿はあっという間に消え少年と神だけの空間になった。


「はぁ・・・布田 龍兎(ふた りゅうと)がんがります。」


扉に向かって白髪の少年は歩き出す。


「あぁ、二人とも頑張って・・・」


私はそんな背中を見送りつつ、先の未来を見通す。


この物語は決して歴史でも、神話でも語られることのない物語である。

そして、二人の咎人の贖罪の物語でもある。


カタラレヌ・クロニクル 序

零;空白 


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