第1話
「わー暴走トラックだー」
「危なーい」
「きゃあー」
またトラックだ。大きなトラックだな
俺の名は内田絢。普通の高校生だ。しょっちゅう死にそうな目に遭うこと以外は
最初は怖かった。小学5年生のとき、そうか、もうそんなに経つのか。コンビニで会計を待っていた俺に店員が「うらああああーーー」と叫びながらおでんコーナーのお玉を振り上げて襲ってきた。今思うとその状況はとても滑稽なのだが幼い俺は恐怖で固まってしまい、なす術もなくお玉攻撃を受けるところだった。だが、店員の振り上げたお玉は俺の頭上でピタリと止まった。そして店員は縛られたように身動きが取れなくなり「あぐあぐ」と喘ぎ声をあげると白目を剥いて倒れた
トラウマになりそうな感じだが、それから立て続けに死にそうな目に遭い、俺の精神は図太く育ったようだ。何が起きても動じない健全な青年に成長したと言っても過言ではない。健全・・なのか?ここ5年かそこらで、通り魔に刺されそうになったり、工事現場の重機が向かってきたり、マンホールの蓋が突然開いたり、まぜるな危険の洗剤が混ぜられそうになってたり、風呂がすっごく熱く沸いていたこともあった。毎日のように手を替え品を替え、俺が死ぬためのあらゆるシチュエーションが用意されている。ここ最近は暴走トラックが流行っているみたいだ。まさに今それなんだが
トラックが迫っても俺は避ける気にならない。どうせ助かるんだし、下手に避けて他の人に向かって行くと危ないしな。目の前でトラックは止まった。おお、今回は寸前だったな、あと10センチでぶつかるところだ、惜しい。いや、別に死にたいわけではないのだが
トラックの運転手に平謝りされた。なんかいきなり頭が真っ白になって、何者かに操られるように俺に向かってトラックを走らせていたんだと。まあそうだよな、こう毎日のように死にそうになるってのは、絶対誰かがやってるよな
その謎が解ける日が来た