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(13) ヒロシ、マックと話す

翌日、またもや王都に向かった。

ジンクも一緒に王都に来たのだが、他の用事があるようで別行動になった。


マックと連絡を取るためだ。冒険者ギルドの冒険者向けの掲示板は当日限りなので、早いうちからメッセージを書いた方がいいだろうと考えた。


冒険者ギルドに行くと、そこには既にマックがいた。

「相方が完治するまで暇なんで」と苦笑いする。


その方が話が早い。メールならともかく掲示板でやり取りしてもいつ会えるかわかったもんじゃない。何度も村と往復する羽目になったかもしれない。


それで、移住希望はマックだけなのかと聞いた。相方はどうするのか気になったからだ。


マックは、できれば相方のトッシュと行きたいと言う。

それならば、ジンクムントからの条件を一緒に聞いた方がいいだろうということで2人の住んでいる部屋に向かうことにした。


部屋に着くと、相方のトッシュは荷造りをしていた。


マックに紹介されると、

「あの時は本当にありがとうございました」

と言われたが、俺は本当に何もしていないので困る。


「もう怪我は大丈夫なのかい」

「傷の方はお陰様で」と服をめくって見せる。

傷跡は残っているが何年も前のもののように見える。

肋骨も折れてたようで、それは完治まであと数日かかるとのこと。

外傷の治りも早いが、骨折までも1週間で治るのか。


マックが前衛、トッシュが後衛の魔法職のコンビらしい。

2人は同じ村出身の幼馴染、17歳で一緒に王都に出てきた。


とりあえず、ジンクムントさんと相談した結果を話すね、と前置きして、


(1) まず、ジンクムントの住む村は王都から遠い。

自分も直接移動したことはないが徒歩で2日かかるらしい。住むとなると、王都とは簡単に行き来はできない。

そんな所に住む覚悟はあるのかという点。

(王都と村を繋ぐ転移装置はあるが自由に使えるわけではない)


(2) 村には魔王を倒した勇者を守るための結界が今も残っているから、村からの物理的な出入りも面倒であること。

(これはジンクによれば、近いうちに手を加える考えがあるらしい)


(3) 村に住むのであれば、村で村の仕事を優先すること。

それが村で住むことの条件。

村は最近になって復興をし始めたばかりで住人は少ない。やらなきゃならない仕事はたくさんある。村の仕事をすることで、住む場所と食べる物は提供する。

修行は仕事の空き時間となる。

(さらに修行は付きっ切りは無理であること、時折りアドバイス程度しかできないこと)


大体、以上のことだ。



「俺たち、この間の失敗で、このままじゃいつか死ぬなと思ったんです」

「ギルドの依頼をこなしていれば、そのうち強くなれるんだろうみたいに考えていた。でもそれではダメなんじゃないかと」


うん。それはジンクムントさんに話すと良いよ、と言った。


とりあえず村に行ってみるかい?

無理だと思ったら、いつでも帰って構わないよ。


「はいっ」と元気よく応えたので、荷物を持って村に行くことにした。


すでに出来上がっている荷物を見て、荷造りの手際が良すぎないかと思ったが、怪我でギルドの依頼がこなせなくて、資金不足でどちらにしてもここの部屋を借りられるのはあと数日とのこと。

命を張って稼いでもそんなもんなのか。



錬金術ギルドの裏手のゲートに向かう道すがら、

「ヒロシさんはどうやってジンクムント様の弟子になられたんですか?」

と聞かれた。


どう答えようか迷ったが、このことは人には話さないでほしいと前置きしておいて、

「実は俺、この世界の人間じゃないんだよ。他の世界から飛ばされてきて、まだ4日目。つまり君たちと会った日」

「飛ばされた場所がたまたまジンクが住んでいた村だったんだ。その妙な縁で世話をしてもらっている。実は魔法とかもまだまったく使えない状態」


2人ともどう受け取って良いのか戸惑っているようだ。

そりゃそうだろう。

1週間前の俺でも、目の前の人間に「ワレワレハ、イセカイジンダ」なんて言われたら「はいはい、どこの病院から来ましたか」となる。


「ま、信じなくていいよ」


そんな話をしながらゲートに到着。

「まだジンクは帰ってきてないと思う」

と一言断って、マックからゲートを通ってもらった。


最後にゲートを通って、マックとトッシュを見ると、ポカンとしている。

「もしかして、こういうの初めてだった?」

「はい」


気持ちはわかる。


表に出て、ジンクの家に向かう。

やはりジンクは帰ってきておらず、チハルが1人だった。


「マックは前に会ったよね、こちらは相方のトッシュくん」

2人は声を揃えて「よろしくお願いします」お辞儀した。

「こちらこそ、よろしくお願いします」

チハルは2人にお茶を出した。もちろん俺も出してもらった。


「この飲み物、すごく美味しいです」マックが元気良く言う。

「本当だ」トッシュが静かに頷く。


「2人はどういう関係なの?」

「僕たちはマイヤー村で幼馴染だったんです。子供の頃から2人で冒険者をやろうって話してて、約90日前に王都アントンセンにやってきました」


王都アントンセン、、、そんな名前だったんだ。

「ギルドカード見れば書いてありますよ」とチハルにツッコまれた。



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