闘気
この俺、新太 優正もとい、アルドレイク・ナディーシアは異世界に転生してしまった。
最初こそ実感が湧かなかったが、父親であるソルドと、母親であるエニスが治癒魔術や火魔術などを使っている所を見てようやっと
異世界に来たぁ!という事実に感情が昂る。
やはり異世界転生といえばチート魔術とか
また、オレ何かやっちゃいました?
的な展開だろう。
自分の可能性にこれほどワクワクしたことがあっただろうか。
いや、ないね!
ーーーーーーーーーー
俺は、3歳になった。
かなり言葉を話せるようになり、文字も3歳にしては結構読めるようになった。
家の中を探索していたら、2階にあるあまり使われていない少々埃をかぶった部屋に、10冊の本を発見した。
そのうちの4冊は子供向けの本。
今よりも小さい頃、エニスが読み聞かせてくれていたものだ。
後5冊は小説、そして後の一冊はなんと...
魔術についての本だった。
何という幸運であろうか、やはり異世界に来たからには魔術を使いたくなるものだろう。
魔術といえば、ソルドの話によるとこの世界には魔術以外に、闘気や呪い、降霊術に神力などの様々な力があるそうだが
魔術が最も一般的で、魔術を使うための魔力は、ほかの力と違いすべてのものに宿っているらしいので今は魔術に集中しよう。
魔術本を開く。
やはり最初は簡単な魔術からだろう。
最初に使う魔術といえば、やっぱり火だな、念のため小さめの器に水を入れて、近くにおいてある。
えーっと...
魔術を使うには詠唱を唱える必要があります...かぁ
今は若いとはいえ、元々32のおっさんだぞ俺は。
....まぁ、しょうがないな。
小さい火を出す下位初級魔術...マッチぐらいの火力か。
なんか難しそうだがとりあえず挑戦あるのみだな。
「小さき火種の主よ、その力を分け与えよ」「ルマファイアー」
ジュッ 火が出る。
シュッ 一瞬で火が消える。
「あ、あれ?」
すぐ消えてしまったぞ...?
...うーーん、考えても原因がわからんな。
とりあえず、ほかの魔術もやってみますか。
ーーーーーーーーーー
.....うーーむ。
ますますわからんな、これは。
俺は魔術5大属性と言われている、火、水、土、風、木の下位初級魔術を使ってみた。
結果としては、魔術が自分の体にくっついた状態ならいたって普通に使用できるのだが、魔術を自分の体から少し離すとすぐに消えてしまう、といった感じだ。
一体何が原因なのか。
うん、こういうのは人に聞くのが一番だろう。
うちの両親はのほほ~んとしてて、エニスは特にマイペースな感じだが、二人とも昔はそれなりの冒険者で魔術にそこそこ詳しいのだと。
「Heey myMother!!!」
「あら~それなんて言語?」
「実は魔術について、教えてほしいことが...」
ーーー
「どう?原因、分かった?」
「うーん、うーーーーん...」
さっきからうーん、うーーーーんとこっちをちらちら見ながら何か悩んでいる。
「あの~...」
「.......」
「しもしも...?」
「........アルド、あなた多分...」
「た、多分?」
「魔力が無いわね~」
「........Huh??」
「ないわね~」
「で、でも魔力はすべ」
「ないわね~」
せめて最後まで言わせてほしいのだが。
魔力は全てのものに宿っていると聞いたんだけどな。
「アルドが使ったのは、魔術じゃなくて闘気よ~」
「多分」
多分かい。
俺が魔術だと思って使っていたものは、本当は闘気だったてことか。
「でもなんで闘気ってわかるの?」
「闘気は魔術にすっごく似てるけど、闘気は体から離れるとすぐ消えちゃうからね~」
「なるほど」
それって、遠距離攻撃ができないってことか。
闘気は劣化版魔術と言われているらしいが、それも納得の不便さだな。
「まぁ、しょうがないわね~」
うーむ、あまりにも能天気だ。
その後、闘気以外に使える力がないか村にいる神父に調べてもらったが、闘気を使うための闘力以外何も感じないのだと。
魔術が使えないから、このままこの村で畑仕事でもしてのんびりと暮らす、という選択肢もあるのだが...
せっかく異世界に来たのにそんなのやだよ。
それに、魔術や闘気などがない世界から来た俺からしたら、それらの力はとても興味深いものだ。
生前の俺がネトゲにハマっていたように俺はこの世界の力に、ハマってしまったのだ。
ーーー
次の日
闘気を鍛えるためにやるべきことはまず、情報収集だな。
今わかっていることは
闘気は体に接触していないとすぐ消えてしまうこと。
闘気は魔術に似ていること。
魔術で手から水を出せるなら闘気でも出せるし、闘気で体から葉を出せるなら魔術でも出せる。
ただもちろん違う点もあり、現状わかっているのは闘気は体に接触してないと消えてしまうということ。
魔力と魔力以外の力をもって生まれてくる奴は稀にいるが、俺のように魔力がない人間はおそらく歴史上初めてらしい。
これだけでは情報が少なすぎる。
あの神父も闘気についてはあまり詳しくないらしい。
闘気を使う奴なんて見たことがないと、ソルドも言っていたし。
やはり本に頼るのが一番か。
とはいえ、この村には図書館なんてない。
なので、ここレガフ王国の王都に連れて行ってもらおうと両親に頼んでみた。
ソルドは少し悩んだ後、普通にokを出してくれたのだが、エニスから断固拒否された。
なんでも、村の外に行くにはまだ早すぎるのだと。
まぁ心配する気持ちもわかる。
ここはおとなしく、この村でできることをやろう。
そういえば、俺の闘力量はどれくらいなのだろうか。
そもそも闘力は増やせるのだろうか。
うむ、試してみるか。
手のひらで小さい土の玉を作り、それを飛ばす。
すぐに消えるけどな。
飛ばしては消えを繰り返す。
10発目を飛ばしたとき、体が重くなる。
土が全くでなくなった。
「うぐっ..」
突然、強い睡魔に襲われる。
その場に倒れた。
ーーー
「...はっ!」
眠っていたのか。
俺は自分のベットにいた。
ソルドかエニスが運んでくれたのだろう。
太陽の位置を見る限り、ざっと8時間ほど眠っていたようだ。
恐る恐る、手のひらで土作る。
12発分作った。
「増えてる!」
良かった、本当に良かった。
闘力は増やせるんだ。
一生小さい土の玉10発分だったら、諦めてスローライフを送っていたところだ。
闘力を増やせるとわかればこっちのもんだ。
闘気を使いまくり、闘力を増やす。
もちろん、闘気での戦い方も考える。
エニスから許可が下りるまではこの2つに重点を置いて鍛えよう。
魔術の階級
神級魔術
上位上級魔術
中位上級魔術
下位上級魔術
上位中級魔術
下位中級魔術
上位初級魔術
下位初級魔術
魔術5大属性・火、水、土、風、木
数ある魔術の属性の中で特に扱いやすく、習得しやすい属性。
闘気の場合もこの5属性が特に扱いやすく習得しやすい。