表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/11

突然の婚約破棄。隠れキャラルートの出現

2025年元日から、コミカライズの配信がスタートしました!

集英社 少女・女性向け漫画作品を集めた総合配信サイトでは、先行話の配信がされています!

キュンがたくさん詰まった作品ですので、ぜひそちらもよろしくお願いします。

「アリアナ侯爵令嬢。君との婚約を破棄する。金輪際(こんりんざい)、僕とシャロンに関らないでくれ」


 私が「ルーカス様」とお呼びし、婚約した8年前から今に至るまで、ずっと変わらず敬愛し続けている婚約者。

 侯爵家の嫡男、ルーカス・ゲルマンが突然そう切り出した。


 私は婚約者から、これまで見たこともない凍てついた眼差しを向けられている。


 私にとっては、まさに青天の霹靂(へきれき)

 何のことやら、状況が全く理解できないのだから。

 取りあえず、やれる事と言えば、それまで彼に送っていた笑顔。

 それを、たちどころに消すくらいだろう。

 

 私たちがいるのは、王城の夜会。彼は私をエスコートするパートナーだ。

 この直前まで、互いに微笑みを送り合い、優雅にダンスを踊った。

 何らいつもと変わらないルーカス様の雰囲気。直前の彼に、少しもそんな素振りはなかったのだ。


 たった今、私はルーカス様に促されるまま、会場内にある階段を登り切った。


 ……そこへ、まるで待ち合わせのように居合わせたのが、私の幼馴染かつ親友。シャロン・ハエック男爵令嬢だ。


 シャロンはいつも、無難なデザインの青か緑のドレス。その2着を着回していた。


 だが、そんな彼女が今日に限っては、私が初めて見る豪奢なピンクのドレスを着ている。

 そのかわいらしい色合いが、シャロンの愛くるしさを更に引き立て、いつも以上に庇護を求める存在に見える。


 彼女が、これ見よがしに着けている大きなアクアマリンのネックレス。

 その色合いはまるで、私の婚約者、ルーカス様の瞳と同じだ。


 ふたりを交互に見て、……私は、そういうことかと理解した。

 血の気が失せた私の横から、ルーカス様は迷うことなくシャロンの横に立つ。

 するとシャロンが、さも当然のように彼の腕に、自分の腕を回した。


 ……シャロンのドレスも、見たことのないネックレスも、ルーカス様が彼女に贈ったのだろう。

 建国祝いの夜会では、婚約者からドレスを贈られるのが慣例。

 それが私に届かないのは、倹約家のルーカス様らしいと思っていた。


 ……だって、今までルーカス様が私に贈ってくれたのは、私の誕生日に花束だけ。

 3年前、ドレスのことを聞いた私に、「いっときを着飾るものより、領民たちのためにお金を使いたい」そう言ったルーカス様。その言葉に私は、心打たれたのだから。



 10歳の私は、ルーカス様と婚約を結んだことが嬉しくて、誇らし気に親友のシャロンに話していた。

 当時の子どものような恋も、今ではすっかり深い愛情に変わり、彼を大切にしたいと願い続け、尽くしてきた。


 急に婚約を解消されても、……私はまだ、お慕いしていたルーカス様に向ける気持ちを失うわけがない。


「どっ、どうして……。そんな……突然」

「お前の傍若無人な態度に、うんざりだ。また、シャロンを虐めていたのだろう」


「虐めて……、なんていないわ」


「嘘を吐くな。シャロンのことを、また、平然と突き飛ばしていただろう。僕が何度注意しても止めないその行動。お前への気持ちは、もう何年も昔に冷めていた。いい加減気付いたらどうだ」


「だから、それは2人を守るためなの、何度言ったら分かってくれるのよ」


「お前の戯言にはついていけない。2度と、その適当な言動を僕たちに聞かせるな」


「うふふっ。ルーカスは明日、あたしと海に行くのよ。ね~、ルーカス」



 ――ジッジジ――。ジッジジジジ――。


 その瞬間、私の中に映像が飛び込んできた。

 ……またこれだ。


 ルーカス様とシャロンが向かうのは、古城を見渡せると有名な海岸。その帰り道、……盗賊に襲われる。

 シャロンを必死に守った彼が、大怪我をする生々しい鮮明な映像。


 ルーカス様の苦痛に満ちた表情が、あまりにもリアリティがある。そのせいで、映像を見る私の背筋が、ゾクリと冷えた。


「海には、絶対に行ってはいけないわ。止めて、お願い、考え直して」


「もう、お前から何も言われる筋合いはない。この夜会に来る前、バーンズ侯爵の当主へ、お前との婚約破棄の申し出を済ませた。僕たちの関係は、既に終わったんだ! 僕はシャロンと婚約した。君の性悪な行いに、これ以上耐えられない、2度と僕たちにまとわりつくな! とんだ嘘つきめ」


 ――え……。何故、信じてくれないの……。


 ――ジッジジ――。ジッジジジジ――。

 疑問を問いただそうと思った瞬間。まただ……。


 今度は違う映像が流れてくる。


 ルーカス様が王城内の階段を、大きな音と共に真っ逆さまに転げ落ちる映像。


 それは、いつの話だ? そんなことを考える余地もない。

 間違いなく、この直後に起きる出来事だ。


 今、私たち3人は、フロアが分かれている王城の大ホールの上階、階段付近にいるのだから。


 私が傍にいる限り、そんなことは起こさせないと心に誓う。

 固唾をのんで、注意深くルーカス様を見守ると、……それは、思いのほか直ぐに起きた。


 ルーカス様の足が、1歩後退した。

 ……危ないっ! そう思った私は、あなたを階段から落とすまいと、必死に彼の腕をぐいっと引っ張った。


 今までも、こんな映像が頭を過り、ルーカス様とシャロンに危機が迫ったときは、必ずそうしてきた。


 でも今回ばかりは、警告直後の出来事。脳内で解決イメージが十分に出来ていない段階だ。


 まずいな……。

 どうやら、私自身まで守れそうにない。


 勢い余った私の体は、体勢を戻せないまま、床の縁を踏んでしまった。

 ……その瞬間、ガクンと私の体が傾く。


「良かった、ルーカス様が落ちなくて……」


 そう言って、彼に笑顔を向けた直後。

 私は、夜会の会場中にドドドッと響く大きな音を立てながら、階段の下まで速度を増しながら、落ちていった。


 階段から落ちる直前。

 ルーカス様は、目を丸くして驚いた顔を見せた。


 これまでも、私は2人に嘘は言っていない。

 けれど、……結局、信じてもらえないまま、愛していたルーカス様に婚約破棄を告げられた。


 元婚約者と親友のことを考えながら私は転げ落ち、最後にドンッと、一際大きな音が鳴った。


 頭を強く打った私の記憶は、そこで途切れた――……。




少しでも先が気になる、面白いなど、気に入っていただけましたら、ブックマーク登録や☆評価等でお知らせいただけると嬉しいです。読者様の温かい応援が、執筆活動の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
.。.:✽·゜+.。.:✽·゜+.。.:✽·゜+.。
■2025年2月1日から集英社 異世界マーガレットさまから本作の電子コミカライズが各電子書籍取り扱いサイトで発売となりました!
 この作品が新たな形になるために応援をいただいた全ての皆様へ、心より御礼申し上げます。

■作品タイトル
『後悔してる』って、ご勝手にどうぞ! あなたがいなくて、こちらは幸せですから

■リマコミ+(集英社の少女・女性向けの漫画を集めた総合配信サイトです!)にて、先行話を配信中

■リマコミ+はこちらから■

よろしくお願いします!
■漫画家様
 美しく作品を彩ってくださった漫画家様は、朝葉ゆき先生です!
 
hdbchy3zdc9jbzq8xkse5xd14zp_4hb_140_1kw_1cw7d.jpg

■コミックシーモアでも先行話を配信中です!

 ■コミックシーモアはこちらから■

よろしくお願いします!
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ