幼少期7
まさか自分から攻略対象っぽい人に声をかけてしまうなんて…。
学院でたまたま声掛けた相手が宰相の息子って、世間は狭いのか、それとも私の引きが変に強いのか…。
とりあえず出会ってしまったのは仕方ないけど、年齢も離れているし、これ以上関わるつもりも更々無いし。
お母様にもっと早く貴族の情報を、色々と聞いておけば良かったのかもしれない。イザークの幼い頃の事件も、本人が有名だと言っていたけど、私全く分かんなかったし。
領地に戻ったら必要な情報を仕入れて、下手に関わらない様にしなくちゃ!
気合いをグッと入れて、破滅回避のために立ち回ることを誓う。
いきなり気合いを入れた私にビックリしたお兄様が横で、目をパチパチとしているのが見えて可愛いなって思ってしまう。
そっか明日には私とお母様は領地に戻るから、お兄様としばらく会えないのだと思うと悲しい気持ちになってくる。
お兄様はいつも私のわがままに振り回されて、1番被害を受けていると思うのに、私に優しく接してくれている。記憶が戻る前から優しかったけど記憶を取り戻してからの方が、前に比べて余計に甘えている気がするのは気の所為ということにしとこう…。
特に教会での一件の後から、お兄様が気にかけてくれているのは感じていた。私が一段と魔法に憧れていて楽しみにしていたから、残念な結果で私が落ち込むのではと心配してくれているのは感じていた。
教会から戻った後から私のリクエストで沢山の魔法を見せてくれたり、お兄様の守護精霊を私に見えるようにする為に勉強を頑張ると誓ってくれた。何故守護精霊が見える様に勉強を頑張るのかが分からなくて聞くと、お兄様は照れながら見えれば守護精霊に紹介してもらって、私の守護精霊を探せるからと答えてくれた。お兄様の優しさにキュンとしたのは仕方あるまい、うちのお兄様本当に素敵!尊い!
横に座るお兄様の方に身体を向けて、繋いでいるお兄様の手にもう片手も添えて持ち上げた。
「お兄様には本当に感謝してます、明日からしばらく離れますがお手紙書いても良いですか?」
「勿論だよ、僕もシャルに学院の事を沢山書いて送るね。」
「楽しみに待ってますね。勉強も大切ですがお兄様の身体の方が大切なので、無理はしないでくださいね。」
いつもの様にボディーアタック…、お兄様にハグしてくっ付く。前世では兄なんて居なかったから感じなかったが、兄と離れるのは寂しく悲しい事だと思った。
寂しさを誤魔化すように頭をグリグリとお兄様にすると、くすぐったいと言いながら私の頭を撫でてくれる。
お兄様ってシスコンだと思ってたけど、私も結構ブラコンなのかもしれない。
そうやってじゃれ付きながら、2人一緒に疲れて眠ってしまった。繋いだ手が温かくて、朝起きるまで手を繋いだままだった。
翌朝、起きてからは怒涛の忙しさだった。主にお母様がだけど。
お兄様の入学式に出席する為にお母様は身支度に追われ、お兄様は学生服に着替えていた。この前学院見学の時に制服は見ていたけど、お兄様が着ると本当にに素敵で、お兄様の為に誂えたのではと疑ってしまうほどだった。
「お兄様本当に良く似合ってます、素敵です。」
「シャルにそう言って貰えると嬉しいよ、制服姿を一番にシャルに見せたかったんだ。」
「ありがとうございます、本当にお兄様は素敵だから周りが騒ぎそうですね。」
「周りなんてどうでもいいよ、シャルが喜んで褒めてくれればそれだけで良いんだ。」
お兄様のシスコンぷりは今日も全開なのですね…。
なんとも言えないので、お兄様を生あたたかい目で見ていると、今度は後ろを向いて何かを羽織り出した。
「お兄様、何しているんですか?」
お兄様は試着が終わったのか、シワが寄らないように引っ張りながら振り向いた。ローブと呼ぶには短く、ケープと言うには少し長い様な物を身に着けていた。
「これは式典の時に身につける物だよ、この姿もどうかな?」
左肩辺りで留められていて、太もも辺りまでの長さの布を翻す姿は、先程までとはまた違った雰囲気をかもしている。左肩の留め具を触りながら、お兄様は何故かウットリしながら話し出す。
「ここの留め具が個人で準備するんだけど、良く見てご覧。」
しゃがんでくれたので、留め具をマジマジと見るけど何が凄いのかが全く分からない。月と星のモチーフのようで、三日月と星があり青い宝石が2個付いている。
「これはね、シャルと僕をイメージして依頼して作ったんだよ。こっちの青い宝石がシャルの瞳の色で、こっちの少し薄い方が僕の色だ。少し離れるけど、ずっとこれからもシャルのそばに僕が居るからね。」
ちょっとごめんなさい、聞いた瞬間ゾゾゾっと鳥肌が立ったのは私のせいでは無い。お兄様、ちょっと怖い…。
こうして朝の準備を終えて入学式に送り出して、式の後に戻ってきたお母様と領地に戻った。
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