幼少期4
まさかこのファンタジー溢れる世界で魔法を使えると喜んでいたのに、加護が無いって事は魔法が使えないって事であって…。
ショックの大きさに愕然として腰が抜け、その場に崩れ落ちてしまう。
それを見て慌てた神官が、私を励ます様に慌てて言葉を発した。
「まだ絶対に使えないと、決まった訳では無いですよ。」
目線を合わせる為にしゃがんでオロオロと動かしていた手をガシッと捕まえ、私の行動に驚きビクッっとなった神官の顔の前に顔を突き出して聞き出す。
「本当ですか!?」
余りの私の勢いにビビったのか、若干引き気味に神官が答える。
「お嬢様は魔力が無い訳ではなく、加護が無いだけですので。かなり難しいですが教典にある記述だと、精霊が対象者を気に入ると守護精霊になってもらえる事もあるそうです。」
精霊を探して加護を授かれば魔法が使える!精霊ってどこに行けば会えるのか分からないので、知っていそうな神官に聞く。
「精霊ってどこに居るんですか?」
「精霊は何処にでも居ます、因みにここにも居ますが普段は見ることは出来ません。」
慌てて祭場を見回すが、神官の言葉で再び神官を見る。
「精霊が姿を現すのは精霊と波長が合った時や、魔力の溢れた場所だと見えると言われているだけで…。
そのような現象は教典に書いてあるだけで、実際には精霊は基本見えないので中々難しいかもしれません。」
喜ばして落とされた気分だ…。
難易度高めの精霊探しをして、精霊に気に入ってもらわないと守護を貰えないなんて。
ショックでフラフラ歩く私をお兄様が支えてくれながら、馬車に乗り込み帰路につく。馬車の中では私を励ます為に家族が色々話しを振ってくれるが、ショックのあまり答える気力が無くて魂が抜けたようになってしまった。
家族のみんなごめんなさい…。
屋敷に着くと少し休むと告げ、部屋にひとりで戻る。
部屋に戻ると行儀悪いとわかっているが、そのままベットに飛び込む。
念願の魔法と浮かれていたが、魔法が使えないなんて。
マジで泣きそう…。
しかし魔法が使えないのは悲しいが、ここは割り切って考えねば。滅茶苦茶悲しいけどね!
三原則の身を守る手段として魔法は、趣味を実益に出来るから良かったんだけどな。そうなると剣や武術に頼らなくちゃいけないけど、どうやって習おうか。
この世界は魔法が主流となっていて、剣や武術を習う貴族は少ない。基本剣や武術は、魔力の少ない平民の間で主流となっている。一般的に平民は魔力が少ない為、加護があっても強い魔法の行使が出来ないと言われている。弱い魔法をカバーする為に、平民の間で剣や武術が広く取り入られているのだ。
公爵令嬢である私が習いたいと言っても、家の格が高く剣や武術を教える事が出来る人物のツテも無いので習えない。私が魔法を使えない事で、公爵家の威厳を落としてしまわないか心配だ。
これは家に迷惑をかけない様に身分を隠し下町に紛れ込んで、どこかの道場みたいなものに入門して習うしかないな。普段お父様は仕事で居ないし、お母様もお茶会や買い物に出かけることが多い。なので基本お兄様と領地でお留守番をしていて、お兄様が入学して領地に居なくなったら、日中ならコソッと家から抜け出してもバレないはず。
こうなったらお兄様には悪いけど、さっさと入学準備とかで早く学院行って欲しいな…。
いけない!お兄様は忙しい両親の代わりに、私が寂しくないように一緒にいてくれているんだから、なんてバチ当たりな事を考えていたんだ。お兄様いつもお世話になっているのに、変な事を考えてごめんなさい。
さっきショックで家族に心配かけてしまっただろうから、夕食の時にはみんなに謝らなくちゃ。
こんな所で凹んていても仕方ない、なんとしても断罪回避して私は幸せになるんだ!
そうこうして月日は経ち、お兄様が学院に入学するために首都に行くことになった。
今回は日用品などの買い物もあるからでお母様も行くとは聞いていたけど、急遽私もついて行くことになった。
お父様も仕事で忙しく飛び回る為に領地に戻れず、幼い私を1人にするのは不安だとお兄様が訴えた為だ。
お留守番出来ると伝えたが、お兄様の激しい拒否で却下となった。10歳になったし、中身はもっと歳を重ねているけど、それは言えないから家族の決定に従う事になった。
そんなに頼りないのかな?
道中の馬車の中では初めて領地を出る私は、お兄様と景色を楽しんだり、3人で色々な話をして過ごした。公爵家の領地から首都まで1日の距離で、最後寝てしまって首都の街並みの景色を見れずに終わってしまった。起こされた時にはホテル前で、その日は大人しくホテルで1晩過ごした。
翌日買い物に出かける為にホテルを出ると、目の前には見たことも無いような街並みがあった。
前世で見ていたビル群とは違い、流石中世ヨーロッパ風な街並みはとても綺麗だった。首都は領地とは規模が違って、沢山の露店やお店が見えて好奇心を盛大に刺激してくる。景色に目を取られてフラフラと歩き出すと、ギュッと手を握られてハッとなる。物凄く心配そうな表情のお兄様に、強く手を握られていた。
「シャル、迷子になったら危ないから手を繋いで行こうね。」
「はい、お兄様。」
お母様はクスリと笑いつつ、2人のやり取りを微笑ましく見ている。
お兄様に手を引かれて、日用品などを買いに街に繰り出した…はずなんだけど。
首都の人混みに流されて、ポツンと1人佇んでいる私が居たり…。
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