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異次元パッカー  作者: 東雲ののし
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6.命名の刻

なにやつだ!

敵襲か!?


敵襲であれば、もうこれガメオベラよ。

空飛べちゃう三人に勝てると思う?

俺、空飛べないしさ。

この世界に、金色の雲とかないの?

俺なら、乗れるよね。


てか、なんで見下ろしたまま動かないの?

そっちはさ、視界良好だろうからいいよ。

こっちはさ、逆光なんですけど?


なんか会話してるような感じはするけど、俺どうしたらいいんですか?

気づいてないフリしちゃう?

だって、もう目がァァ。

しょうがない。どうせ敵なら勝ち目ないし。

休憩してよ。

目が痛いので、また座布団を敷いて胡座をかく。


「おい、ルメル。宿化を許可する。入ってもいいぞ」

「いいや、もう、僕は隠れない。宿主の最後をちゃんと見届けるんだ」


は?


本日、二回目の、ひらがな一文字で返事をしてしまった。

悪気なく言ってるのが、逆に鱗をつついてるよな。

悪気がないのが問題なんだし。


敵襲の方を見れば何やら動きがあるようだ。

二つの影がこちらへ向かって、降りてきている。

男と女?


女の方は、

藍色の長い髪を風が優しく包んでいる。

胸に白い花束は付いていない。

羽根のように空をくだり、やさしい俺のもとへ。

どうみても、俺のもとへ来ている。


男の方は、ツンツン頭の茶髪だ。

腰に剣を、ぶら下げてるから剣士だろうか。

剣の周りがモヤモヤして、陽炎みたいになってる。

まさか、剣の名前の頭に、妖刀とか、付いちゃったりして。


それにしても、リア充ですか。爆発しないかな。


1人は何故降りてこないんだ?

親分だから、下っ端が雑用してこい。って感じの関白な人なんだろうか。


爆発することもなく、俺の前へ着地する男と女。


顔を見合わせ、小声で何やら喋っているようだが、目の前に降りてきて、放置ですか。

開き直った俺は、バックパックを座布団にして胡座をかいて様子を伺っている。

向こうも様子を伺っている感じだし、もしかしたら大した事ないんじゃね。こいつら。

あれだな、こういう時は先手必勝だな。


「なんだお前らは、俺の前に立ちはだかるのか?」


勢いとか、威厳とか、風格って大事だよな。

これで、この二人には俺が、威厳と風格を兼ね備えた、ラスボス的な感じで見えているに違いない。


俺の言葉に二人とも、呆気に取られたようだ。

そりゃ、ラスボスの風格を漂わせているからな。

少しの沈黙の後、女の方が口を開いた。


「脅かしちゃってごめんなさい。私たちは敵じゃないわ。私たちも、火急の事態で、移動中だったんだけど、神の子が、あなたを助けてあげてって言うから降りてきたの。かわいい神魂が宿ったようね」


「俺を知ってるのか?助けてとはどういう意味だ。俺は今、危機的状況に陥っているのか?」


「知ってるわけじゃないけど、異世界から来たって事は知ってるわ。あなた、ほっといたら今日中に死に至ると思うわ」


は?


本日、三回目の、ひらがな一文字で返してしまった。


突拍子もなく現れた奴に、余命宣言されるってなんなの?

しかも、ラスボスの風格を漂わせた、セリフを言ったのに正体バレてるじゃん。恥ずかし。

俺が一文字で返事をすると、続けて女が口を開く。


「その、神魂に飲まれかけているわ」


その言葉に、驚き、ルメルに視線を向ける。


「おい、どういう事だ、ルメル」


視線がルメルへ集中する。


「僕は何もしてないよ。何のことだかさっぱり」


助け舟を出すように、女が説明を続ける。


「神魂に名前を付けたの…?いい名前ね。ルメルちゃんも気づいてないのね。あなた、魔力を持ってないわ。」


衝撃の事実である。魔力がないだと?

ここに来てから、何回も能力使ってますけど。


「普通に能力使えてるんだけど。それに、魔力がない状態で能力を使うと神格化するんじゃないの?」

「それは、おかしいわね…普通なら能力を使った瞬間に、気を失って飲まれると思うんだけど。神格化するのも、魔力が使える前提の話で、普通の人なら、誰にでもあるはずの、魔力を貯蓄する場所、自体がないのよ。あなたには」


パソコンで例えると、ハードディスクがない。みたいな感じ?

それなら、起動すらしないのも納得。

ということは、あのフラフラ感はルメルに飲まれかけてたのか?

危ねー。


「神魂に飲まれるとどうなる?」

「魔力に肉体が耐えきれずに崩壊し、神魂もこの世界では、宿主無しに存在できないから、共倒れね」


ルメルの宿主ということに、疑問を抱く。


「ルメルの宿主は、正確には俺じゃなくてこのバックパックなんだが、俺が飲まれたらルメルも消えるのか?」

「何言ってるの?それあなたのスキルみたいだけど。スキルに神魂が宿るのも聞いたことがないわね」


スキル?アイテムじゃなくて、これ俺のスキルなの?

この世界にはスキルなんてものもあるのか。

というか、何故、本人ですら知らない情報がわかるんだ?

その謎を聞いてみようとしたが、ここで初めて男が口を開いた。



「そこまでにして、早く用を済ませて行くぞ。モタモタしてると、被害者が出るかもしれん」


そういや、火急の事態だったか。

なんでも答えてくれるから、質問攻めにしてしまった。


「そうね、じゃあ、あなたを助けるために、名前を与えるわ」


え、名前?

俺には那由多っていう名前があるんですけど。

俺のお母さんになるって事ですかね?


「おい、ドラ、名前をやるなんて正気か!この後にまだ、一柱、控えてるんだぞ!」


名前付けるだけで、そんな言う?

一柱って言うのが、火急の要件なんだろうか。

すごい聞きたいけど、また質問したら怒られそうだしなぁ。


「ええ、私は至って正気よ。これ以外に、救う方法がないの。魔力がないなんて、聞いたことがないわ。転移者だろうと、赤ちゃんだろうと、魔力を持っているはずなんだから」


なに、俺そんなすごいの?

この世界で、オリジナルな存在じゃん。

それは、きっと特別な存在なのだろう。


「こいつが能力を使わなければいいだけの事だろう。それに、一柱を片付けたあとでもいいだろ」


「神の子が【今、助けて】って言う以上、きっと、今じゃないと意味がないのよ」


さっきも出てきた、神の子ってなんなんだ。

すごい聞きたい。


「その、神の子っていうのは、あなた達の子ども?」


聞いちゃった。

この二人が、できてるのかも確認できる、一石二鳥なやつ。

すると女の方は、微笑し、男の方が反応した。


「何を言ってるんだお前は、オレに子などいない。それに何故、お前は裸なんだ。せめて隠すくらいしたらどうなんだ」


できてはいないのか。

だがしかし、この男、絶対この女性にホの字だ。

こういう時の男ってなんでこんなに、わかりやすいんだろう。


だが、裸に関しては、指摘されるまで気づかなかった。

また女性を前にして、素っ裸じゃないか俺。

なんかもう、結構な時間、この姿で、何や彼やあったから、感覚が麻痺してきた。

指摘されるまで気づかないとこまで来てるのもやばいな。

とりあえず、服をなんとかしたい。

あ、でも、服を買いにいく服がないじゃん。

詰んでないかこれ。


「ここへ来た時から裸だったから、この世界ではこれがデフォルトなのかと思ってたよ」


小粋な言い訳をかましながら、俺は立ち上がり、バックパックを拾い、前方が隠れるように肩からさげる。

うん見えないだろう。


「もうちょい下げろ。こっちから丁度見えるぞ」


そうか、そっちから見えるか。

しょうがないから、疲れるけど手持ちで前に持つ。


「私は別に気にしないわ。楽にして」


お、お母さん。

さすが母さんだ。

手がだるいんだよ、持つと。

だが、隠した手前、またコイツを解放する訳にもいかない。

いいんだ、母さん。


「それじゃ、時間が無いから。名前を与えるわ」


話を聞いた限りだと、この人が俺の命の恩人という事になるな。

名前を貰うだけで助かるってのが、よくわかんないけど。

茶髪があれだけ慌てるんだから、名付けに、それなりの意味があるんだろうか。

普通に名前を言うだけかと思ったら、何かの呪文みたいな事を呟きだした。


「創造なる 神の命において

生まれし 幽玄なるその魂よ

無限なる蛇竜【セツナ・グルート】

その名の元に この者へ忠誠の義を授けん」


「あなたは今日から【セツナ・グルート】と名乗りなさい」


え、ちょっと、待って。

すごい嫌だ。

嫌だ、名乗りたくない。

別に拘りとかないが、この名前だけは名乗りたくない。

思いもよらぬ響きに、戸惑っていると、茶髪がずっと、小声で呪文を唱えている。


コトワレコトワレコトワレコトワレコトワレ


なんの呪文だろうか。俺には効かないようだ。


「はい」


嫌だが、これ、断ったら俺死ぬし。


「よし、これで、魔力を使っても大丈夫よ。あと、あなたの事は、保護しない方がいいみたいだから…また会いましょう」


特に、血が滾るような感覚もなく、体が変化した感覚もない。

この人が言うんだから、そうなんだろう。

出会って間もないが、この人は信頼できる気がする。

保護しない方がいいと言うのは、また神の子とか言うやつが、言ってるのだろうか。

保護してくれよ。


「あまり実感ないんだけど、ありがとうございます」


もし、この人に会わなければ、死んでいた。と思うと、神にすら思える。

この人に、何かあった時は、最優先で駆けつけよう。


「お前は、これが、どれほどの事態か、わかっていないようだが、いずれわかる。今は説明する時間がない。また会えるのを楽しみにしている。それまで、死ぬなよ」


最後のやつ。それ言ったらダメなやつ。

茶髪も悪い奴ではなさそうだ。是非、生きていてくれ。


「次に会う時までには、もっと、頼れる男になっとくよ」


バックパックを掲げて、誓いを立てると、二人は苦笑しながら、空へ戻って行った。


「じゃあセツナ、改めてよろしく」

「あぁ、ルメルよろしく」


こうして、俺はルメルと、改めて自己紹介を交わした。


それにしてもこの名前か…

仕事が休みの日に執筆を一切せず、仕事がある日に執筆が進むと言う。あるある。

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