表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異次元パッカー  作者: 東雲ののし
4/8

4.戦いの刻

茂みの中からクマがあらわれた!


クマは、歯をむき出しにして威嚇している。


主人公は、ようすをうかがっている。


ルメルは、身を丸くしてバックパックへ半身を突っ込んでいる。


クマは、ウーッと唸り二足で立ち、臨戦態勢に入っている。


おいおいおい。

やばい。脂汗が止まらん。

裸一貫にバックパックでどうしろっていうんだよ。


クマは四足で走り出し、こちらへ突進する勢いで向かってきている。


ひぃいいい!

走ると足が痛い事など忘れ、無我夢中で木と木の間をくぐり抜ける。


木が鬱蒼と茂っているおかげで、狭い木の間をくぐり抜けると、通り抜けられないクマの勢いが弱くなる。


それでも、餌を前にしたクマは興奮しながら、回り道をして勢いよく向かってくる。


やばいこれ、狭い木の間が無くなったらアウトだ。


全力で走り、狭い木の間をくぐり抜け、それを何回か繰り返していると、アウトのパターンがついに来てしまった。


このまま走って逃げると追いつかれる。

逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。

自分にそう言い聞かせ、覚悟を決めた。

振り向き頭をフル回転させ、クマと相対する。


普通の人間でも、クマと遭遇し、生身で戦ってクマに勝ったというニュースをたまに見る。


俺ならできる。


こちらへ勢いよく向かってくるクマ。

バックパックを両手に持ち替え、クマに向け、タイミングを計る。

まだだ、外したら終わる。

引っ張れ。

クマとの距離、約5メーター。

外したら、死ぬ。死ぬ。死ぬ。

震える手で、クマよりもちょっと下に、エイムを合わせる。

今だ。

その距離3メーター。

勢いよく真上へジャンプし、自分に当たらないように木を吐き出す。それも三本。

クマに対して真下に落とすほど、高くジャンプ出来るはずもなく、斜め向きに倒れるように木がバックパックから吐き出される。

突然の木の出現にクマが警戒を強め、避けようとする。

一本の木がクマ目掛け、倒れかかる寸前、華麗に横へ避けたクマ。逃げ道を塞ぐように出した、二本の木のうち、一本がクマへクリーンヒットする。


もがくクマ。


外した二本を回収する。


背中のど真ん中に、一本の木で押さえつけられているが、もがく勢いが怖すぎて、追加で二本だし、*の形で押さえ付ける。


命を懸けた、初めての死闘であった。

まだ、心臓が早鐘を打っているが、戦闘狂の気持ちが何となくわかる。

生き残った後のこの感じ。快感になるかもしれない。

クマの生殺与奪は俺にある。

これから先の事を考えると、命を奪う苦しみに慣れておかないと、身が持たない気がする。

でも、まだ自らの手で、他の命を絶つ覚悟が出来ていない。このままにしとこう。

人は虫くらいの生き物だと何も考えずに殺すが、サイズがでかくなると躊躇する。その境界線は謎だ。


「さすが僕の神魂主。やってくれると思ってたよ」

「お前、どこに居たんだよ」

「バックパックの中」


俺の大奮闘、見とけよ。


「どおりで、探しても見当たらないはずだ。というかお前自体に物理攻撃って効くのか?」

「僕は精神生命体だから、基本的に物理攻撃や魔法はすり抜けちゃうね」

「じゃあ、隠れる必要ないだろ」

「初めての戦闘だし、怖いものは怖いじゃない」


無敵の防御力を持ってるヤツが何を言ってる。

俺なんて、一発でも当たれば、黒ひげが飛び出すぞ。


「そもそも無機物以外は吸えないんだろ。バックパックの中に入ることが可能なのか?」


試しにクマを吸おうとしてみるが反応しない。


「神魂が一時的に、宿主へ宿化するのは普通の事だよ。宿っている間は、肉体でその能力が使える。ただ魔力の消耗が激しいからね。魔力が底を着いた状態で、神魂の能力を無理矢理、使ったら、神魂が宿主に飲み込まれて消えてしまう。それを神格化と言うんだ。神格化すると能力での魔力消耗が無くなるんだ」

「神格化した方が強いってことか。いっちょやってみっか」


戦闘中、隠れてた仕返しに意地悪を言ってみる。


「話聞いてた?僕…消えちゃうよ…」


俯いて、哀愁ただよう表情で返事をするルメル。

しょうがない、さっきのは水に流してやろう。


「宿主じゃない俺でも、神格化って、できるのか?」

「僕が、バックパックに宿ったまま能力を使い続ければできるのかな?そのあたりは、やってみないと分からないね。それと、神格化するのもメリットだけじゃなくて、神魂での外部への干渉ができなくなるから、肉体のみでしか能力を使えなくなるんだ。能力との相性にもよるだろうけど、双方が使えなくなる神格化は、自ら望んでする人はそんなにいないよ。だから、僕を飲み込まない方がいいんじゃないかな」


神格化する気など元々ないけど。意地悪が結構、効いてるみたいだな。

一人でいるよりかは、ルメルが居るだけで、それなりに寂しさが紛れる。

多少は感謝してやってもいいか。

孤独という、精神攻撃は恐ろしいのを先程、身をもって体験した。

機嫌でも取ってやるか。


「ルメル、お前飯って食うの?」

「食べなくても良いけど、食べることもできる」

「好きな食べ物とか、あるのか?」

「まだ、何も食べた事がないから、何が好きなのかわかんないや」

「じゃあ、街に着いたら、お前の好きな食べ物でも探すか」

「ほんと!!絶対だからね」


なんか、宿題作っちゃったな。

まぁ、いいか、生きて街に付けるかわかんないし。

そんな事よりも、早く次の疑問が聞きたくてウズウズしている。


「なぁ、お前の能力って神格化すると、どうなる?お前の説明だと、バックパックが既に宿化した状態じゃないか?」


ルメルの説明を聞いてから、この疑問がずっと頭の隅でモニョモニョしていた。

ルメルの好物の話なんか、右から左だったわ。


「それについては、やって見ないとわからない。僕もその疑問はずっとあったんだ。」


わからんのか、じゃあ、やるしかないだろ。


「やってみていいか?俺の魔力が、どの位の底なのかわからんが。」

「やってみる!僕もどうなるのか知りたい。魔力が底をついて、神魂の能力を使うには気を失うくらいの気力を注がないと、能力が使えないから、自分でもわかると思うよ。間違っても気を失わないでよね」


コイツ、まだチクチクしてくるか。

好物食わせるまでネチネチして来そうだな。


それよりも、ドキドキしてきた。ただでさえチート級のバックパック。

これ宿ったら、どうなるんだろう。

ふぅ、落ち着け。その前に足を突っ込んで自然治癒しとこう。


「じゃあ、宿化頼む」

「かしこまった」


ヒュンとバックパックへ吸い込まれていくルメル。

それでは、バックパックを空に掲げ、いざ、参らん!





何も起きんな。


『木とか吸ってみようよ』


ふぇっ!?

宿化しても会話できんの?


『テレパシーみたいな事できるんだね』


うわ、これ思考読まれんのか。

逆に困るんだけど。

こっちみんなや。


『僕だって、君の思念が勝手に流れ込んでくるんだから、どうしょうもないよ』


ルメル、言葉だと言いづらかったけど。お前が来てくれて助かったよ。ありがとう。


『え、ちょっと、何企んでるの?ま、まさかね…』


じゃあ、木、吸うぞ。


『う、うん』


スンッ!

っと、消えた木。


それと同時に、石碑があった方から、甲高い悲鳴が聞こえてきた。


「ギャァァァァァアアアアアア!」


それは、断末魔の叫びのような。


性別すら判別不可能で。


この世のものとは思えない。


身の毛がよだつほどの悍ましい叫びだった。

ブクマ!ブクマ!初の一件ありがとうございます!チョーーー嬉しいです。チョーーー大好き。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ