表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異次元パッカー  作者: 東雲ののし
1/8

1.始まりの刻

「えっ、なんでマッパなん?」


気が付くと素っ裸で森の中にいた。

いや、ヤバいだろこれ。

クマとかでたら死ぬって。

森っていうか、もう樹海と言った方が正しいくらい鬱蒼としてるじゃん。

てか、誘拐された?

何で森の中に裸でポツンといんの?

てか、クマもそうだけど人間と遭遇してもヤバくない?

ちょっと想像してみよう。

もし、俺が女の子だったとしよう。


ある日、森の中、おじさん(裸)に、出会った。


花咲く森の道、おじさん(裸)に出会った。


逃げるね。

それも一目散に、大声で甲高い声を上げながら逃げるね。

下手するとクマよりも怖くない?

人間より怖いものはない。なんてよく言うけどまさにそれ。


というか、寒いし何より素足なのが1番キツイ。

一歩踏み出したとこに小石や木の枝があるともう重症ものなんですけど。

よし、こういう時は落ち着いて、冷静に思考を巡らせてみるか。


まず、さっきまで何をしていたかだ。

たしか、甥っ子と二駅先のお祭りで買い物をしていたはずだ。

そこで露店をしていた綺麗なお姉さんに声をかけられて、何言か会話をしたところまでの記憶しかない。

てことは、あのお姉さんに誘拐されたのか?

素っ裸にして、俺に何かしたのか!?

何故覚えていないんだ!

綺麗なお姉さんに脱がされたのか!?

そこ重要ですよ。


重要なことなので、会話を思い出してみる。

たしか最初にこう声をかけられたような。


「お兄さん、そのバックパック格好いいですね」

「ですよね。重くて、収納力なくて、汎用性悪いけど気に入ってます」

「そのバックパックにこのチャーム付けませんか?絶対に似合いますよ」

「へぇ、綺麗な玉ですね」

「弟さんとお揃いでどうでしょう、一つ千円のところ、二つで千円に、サービスしますよ」


甥へ聞いてみると、是非、容姿端麗で大尊敬する兄様とお揃いで付けたい。と言うので買うことにした。

甥がもし、ここで口を開いたら、尾ひれが付いていると苦情が出そうだが、気にせず物色しよう。


種類を見てみると、色違いで十色分の種類がある。

俺は金色の玉がついた物を、甥が銀色の玉がついた物を選んだ。

俺のやつ、絶対に略すなよ。絶対だぞ。


「じゃあ記念にお揃いで付けようかな、きんた…金色のやつと、銀色のやつください」

「ありがとうございます。でも、同じ色にした方がお揃いでよくないですか?」

「その色だけがいいんですよ」

「同じ色の方が絶対いいですよ。同じ色の方が、きっと、より絆が強くなるんですよ!」


きっと、ってなんだ。

咄嗟に付け足したんだろう。

俺は紳士だ。深くは追求すまい。

やたらと同じ色を勧めてくるので、甥に聞いてみるがお互いに気に入ったものを譲らないので、ここは譲らない。

俺も大人気ないが、譲れないものがある。

この色以外の選択肢などないのだ。


「すみませんね、お互いに譲れないみたいなので」

「そうですか…わかりました」

「お姉さん、外国人ですか?この玉のように綺麗な金髪してますね」

「ええ、一応外国人になるんですかね」

「お名前なんて聞いてみたりしてもいいですか?」

「ええと…ルカです」

「和のテイストを垣間見る、いいお名前ですね。私は教育系の仕事を少々かじってるんですよ」

「それは素晴らしいお仕事をなされてますね。ではお二つどうぞ」

「サービスまでしてもらっちゃって、ありがとうございます」

「よろしくお願いします」


そして、目が眩むくらい、眩しい笑顔で渡されたところで、記憶が途絶えた。

よろしくお願いします。ってなんだ?

やっぱりあのお姉さんが誘拐したのか?

記憶を辿ってみても解決策は見つからなかった。


しょうがない。

じゃあ、次の手だ。


周囲の確認だ。

歩くと痛いので首と体を捻って周囲を見渡す。


後ろを振り向くと、仄かに金色の光を放っているような石碑と、その近くに、愛用のバックパックが落ちていた。


「うぉぉおおおおー!」


まずい、あまりの嬉しさに思わず叫んでしまった。

今の叫びで野生の動物に気付かれでもしたら痛恨のミスすぎて目も当てられない。

だがしかし、中にはたしか、水と財布と鍵があるはずだ。

水はでかい。人間は水分さえあれば数週間は生きられるという。

希望を込めてバックパックを拾った瞬間、体制を崩してしまった。

想定していた重さと違ったのだ。

いつもの重さが消え、何も持っていないかのように軽いのだ。

文字通り、重さが消えた。という表現そのままに。

あれ、なんか俺バグった?

見た感じ完全に俺のバックパックだよなこれ。

人体改造されて半端ない筋肉ついたとか?

試しに近くの木を殴ってみる。

「ゴッ」という鈍い音とともに、俺の右手は負傷した。


痛い痛い痛い。バックパックの重さが消えた事に気が動転して、木がどうして殴れる。

痛い痛い痛い。なんか色々と痛い。


この軽さから期待はできないが、水という希望を求めてバックパックの中を弄ってみる。

バックパックの奥まで手を入れたところで、背筋が凍りついた。


底がない。


バックパックの内側に手を入れると、あるはずの内側がない。

バックパックの中で、手を振り回してみるが、空を切る感覚があるのみで何も無かった。

文字通り、何も無かった。


バックパックの中を覗き込んでみると、真っ黒で、光でさえ飲み込まれそうなドス黒い色をしている。

というか、光を飲み込んでいる気がしなくもない。何も見えないのだから。


俺はもう理解が追いつかないっす。

まぁ、バックパックがあっただけでも僥倖か。

バックパックを背負い、半ば放心状態で、石碑を調べてみる事にした。

石碑にはこう書かれていた。


「第漆の記憶因子

ハープシー

ここに眠る」


え、誰かの墓?

やめてくれ、違う寒気が襲ってきそうだ

てか、なんか文字おかしくね?

日本語じゃない気がするんだけど、なんで俺これ読めるの?

新たな謎が増えてしまった。

そろそろ頭がパンクしてしまう。

そんなパンクするほど、頭使ってないだろ。なんて突っ込みが入りそうだが。

新しい二つの発見も、窮地を脱する程の起点にならなかったのは痛い。


バックパックを背負ったまま棒立ちの姿勢に戻る。


棒立ちしたまま時間だけが過ぎていく。

そして、時間とともに不安、焦燥感、恐怖、といった感情が強くなってくる。


体が「寒いよー」と訴え、足の裏が「痛いよー」と訴えてくる。

寒い、足が痛い、食料もない。

無理だ、あぁ、これ死んだわ。


現状を悟った俺は、つい一言だけ、余生の未練から呟いてしまった。


「やっと最強職についたのになぁ…」

「最強職ってなに?」


とうとう幻聴まで聞こえるようになったか…


ふと、声が聞こえてきた方の、頭上を見上げると頭から二つの巻角が生えた、竜のような生物がこちらを見ていた。


とうとう幻覚まで見えるようになったか…



更新頻度は期待できませんが、細々とやっていきますので、異次元パッカーをよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ