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燎原の森エルフ ~外れスキルをレベル999に育てて調子に乗ってるやつらがむかつくので、当たりスキル【火魔法】をレベル999に育てて焼き尽くす~  作者: 住之江京
第八章:【魔王】のドルガンドス

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8-8. 政治の判らないエリー

 フルリニーア王国は魔王軍と和解することになった。


 魔王軍を魔王国なる国家として承認、王都を含む地域を魔王国領土として割譲。

 フルリニーアの国王はまだ決まっていないが、確定した内容として、建国王の血を引く貴族の中から選出されることになる。

 そして、すぐにその娘たる次期女王に譲位。その女王が【魔王】を婿に迎える。

 そして魔王を王配、魔王の血筋を次々代の王として、フルリニーア王国は魔王国に併合される。


 そんな話になったらしい。

 エリー達の家に遊びに来たローズマリーが、世間話として教えてくれた。


「流石に譲歩しすぎじゃない?」


 と政治の判らぬエリーは尋ねたが、


「逆らう人がいなくなるまで殴り続けたら、まぁそうなるんじゃないの?」


 と政治の判らぬローズマリーは答えた。


 地元では賢者と呼ばれる知性派風のローズマリーだが、詰め込み教育で知識が身に付いただけの彼女は、基本的に脳筋である。

 昨日までは「今度、王都に行った時に魔王軍幹部全員の暗殺してくるわ。時間停止したら(シュン)(シュン)」などと真顔で言っていた。

 少数精鋭による魔王の暗殺は、聖書にもある由緒正しい行いである。

 軍を動かせば無条件で反逆罪に問われるが、単身でテロリストを襲撃するだけなら合法なのだ。


 それも、今回の講和によって違法行為となったので、今後は手を出すつもりもないが。


「キュー?」


 と政治の判らぬヒタチマルが鳴き、


「目に見えて理解できる形で、強大な暴力を示されたら、そんなに逆らう人はいないと思いますけど」


 政治は現在勉強中だが、先の2人と違って人並みの戦闘力しか持たないジローは、一般人目線での意見を言った。


 強大な暴力を目前にすれば、そんなこともあるのだろうか。


「なるほど?」


 と頷きつつも、エリーは首を傾げる。

 エリーは強大な力を持つ割に、どうも知らない相手に()められがちな気がする。

 野盗は気軽に挑んできて返り討ちに合うし、テロリストは折角生き延びても死にに来る。

 相手もレベル999だから自分の力を過信して、ということもあるだろうが、それだけでもない。


「ああ。エリーさんはほら、顔がいいですから」

「確かに、エリちーは強そうな美人じゃなくて、弱そうな美人だもんね」


 なるほど、ジローのいつもの賛辞だけでなく、ローズマリーまで同意するとなると。実際に、エリーは弱そうな顔をしているのだろう。

 仕方が無いので、今後は威嚇行為に一切の手加減をしないことに決めた。



「で、これからロゼちーはどう動くの? 暗殺はやめるんだよね?」

「うーん。魔王軍に恨みはあるけど、今回の時間軸では何かされる前に返り討ちにしちゃったし。

 第一ね、【魔王】のスキルも神様から授かった物なのに、【魔王】ってだけで殺すのもどうかなって私は思うのよ」

「キュフー」


 すっかり気の抜けたローズマリーが、大きく伸びをしながら答える。

 【魔王】討伐の話は聖書にも載ってはいるものの、別にそれが推奨されている訳でもないらしい。


「大昔の【魔王】が大暴れした時に、当時の国々が国際法で【魔王】スキル保有者の殺害を合法化したのが、未だに残ってるのよね」

「えぇ……スキルが【魔王】なだけで殺されるの? ヒュームの法律怖すぎる……」

「いや、エルフもドワーフも獣人も調印してたわよ?」

「人類種怖すぎる……」

「でも“合法”なだけで“義務”とは書いてなかったし、別にいいかなって」


 過去の人類国家にドン引きするエリーを他所(よそ)に、ローズマリーは座ったままぐでーっと身体を前に倒した。


 一度水を差されたことで、ローズマリーは完全に暗殺意欲を喪失したらしい。

 元より、それほど強い気持ちがあった訳でもなかったのだろう。軽い気持ちで暗殺されるのも嫌な話だが。


「王国内で立場を得たなら、むしろ大人しくなるんじゃないですか?」

「そういうもんなの?」

「いずれ自分の物になる国で侵略だの略奪だのしたって仕方ないでしょ。

 止まってた流通なんかも、(じき)に元に戻ると思いますよ」

「キュイキュイ」


 ジローの言葉に、エリーはぼんやりとした納得を覚える。


「将来的な話にしても、フルリニーア王国がフルリニーア魔王国になる程度の話です。

 別に王国の治世が安定してた訳でもないですし、正直どっちでも良いかなと」

「国が変われば法律も変わるし、王国法を守る必要もなくなるわね。

 余程住みにくい国になるなら、軍を挙げて独立すれば良いわ」


 身も蓋もないジローの言葉に、身も蓋もなくローズマリーが続けた。


「魔王国法で挙兵が禁止されてたら?」

「魔王国法を守るかどうかは、内容によるわね。

 一通り読んで覚えて、守る価値があると判断すれば守るかも?」

「ふーん」

「キューン」


 友人であるローズマリーが納得したのなら、ヒューム領での揉め事にエルフが関わる理由がない。


 エリーも元より、【魔王】にはそんなに興味はないのだ。

 スキルレベル999の暴徒を大量生産して野に放っている“先生”とやらは実害受けまくりなので、何かしらの罪で投獄して欲しいところだが。

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