竜宮城
私が仕事で外回りをしていた時の事です。
その時の私は仕事がたまたま上手くいき上機嫌。
ルンルンで歩いておりました。
とある公園に差し掛かった時、二十センチ程の汚い亀を虐めている子供が目に入りました。
浮かれ気分の私、ついつい気紛れに子供に話しかけてしまったのです。
「これこれ、亀をいじめるのは止めなさい。これをあげるから」
私は千円を子供に握らせ、亀の側から退散させました。
その場に残される亀。
この亀は助けられた事など何も分かっていないだろう、それでもいい。
亀を見つめ自己満足に浸る私。
「助けてくれてありがとうございます」
地の底から湧き上がるような声に私の自己満足は吹き飛びました、
亀が体を起こしこちらを見ています。
私は驚いてしまいました。
「お礼に汚い竜宮城に招待いたしましょう」
汚い竜宮城?不穏な響きです。
私はたじろぎました。
「そこでは汚い魚が舞い踊り、汚く美味い料理をたらふく食べる事が出来ます。そして汚い乙姫が貴方をもてなすでしょう」
私は亀の提案を断りました。
汚い竜宮城、行きたいとは思いませんでした。
「そうですか。ではあなたを呪います」
亀の目には怒りの炎が灯っていました。
その場からすぐに逃げ出した私ですが、しばらくは何事もなく生活していました。
しかし徐々に異変が……。
自分の体が入れ歯安定剤のような匂いを発するようになっていったのです。
私はこの事で同僚からお爺さん、と渾名されました。
そうまるで浦島太郎のように……。
私は禁断の玉手箱を開けてしまったのかもしれません。