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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ブラックダイヤは黒くて硬い

作者: 東郷しのぶ

 内容がかなり、お下品です。ご注意ください。

 俺は、王国きっての大泥棒。今日は王都の貴族の館から、秘蔵のブラックダイヤモンドを盗み出すことに成功した。


 戦利品をジックリ観察する。

 何と言う大きさのダイヤだ。輝きも素晴らしい。黒くてツヤツヤしている。


 さて、今頃は家宝の盗難に気付き、貴族の屋敷は大騒ぎとなっているに違いない。ほとぼりが冷めるまで、犯行現場から離れていることにしよう。


 俺は王都から外へ出るために、出口となる城門へ向かった。


 思ったより、人が多いな。列が出来ているぞ。

 素直に行列に並ぶ……なかなか、前進しないな。


 前に立っている商人に尋ねてみる。

「列が動かないんですけど、何かあったんですか?」 

「先日、密輸品を王都から運び出そうとした者が捕まったんですよ。それで、城門でのチェック体制が厳しくなっているんです」


 むむ、困ったぞ。手荷物検査で衛兵にブラックダイヤが見付かってしまったら、万事(ばんじ)休すだ。

 焦っているうちに、列は次第に進み、俺の順番が近づいてくる。ええい、ままよ! 俺はダイヤが入っている小袋を服の中に押し込んだ。


 ……衛兵が、随分とたくさん居るな。どいつもこいつもマッチョだ。

 俺はさりげない風を装いながら、ゆっくりと歩いた。よし! もう少しで、城門から出られるぞ。


 その瞬間。


「チョット待て、そこの男」

 声を掛けられる。


 ギクリとして振り向くと、イケメンの青年が厳しい眼差しで俺を見つめていた。立派な格好をしている。城門警備の責任者か?


 取りあえず、怪しまれないように低姿勢で返事しよう。

「な、何でございましょうか?」


 俺をジッと(にら)み続ける青年へ、衛兵の1人が語りかける。

「どうかしましたか? 隊長」


 この若さで隊長とは……。イケメンは、おそらく貴族だな。


 隊長は、衛兵達を叱責(しっせき)した。

(おろ)か者! お前らは気付かないのか。コイツの姿を、よく確認してみろ!」


 何だと? 俺のどこに不審(ふしん)な点があると言うのだ。


 隊長は視線を俺の下腹部へ向けながら、叫んだ。

「コイツのズボン……股間(こかん)の部分が、非常識に(・・・・)(ふく)らんでいるではないか!」


 隊長の鋭い声が、城門一帯に響き渡る。衛兵はもちろん、列に並んでいた人々の目も、一斉に俺の下半身へと注がれた。俺も、自分のズボンを見る。


 しまったぁぁぁ!


 ダイヤを入れた小袋が服の下で移動、股間部分にまでずり落ち、俺のズボンは非常識に(・・・・)膨らんでいた。男の大事なところとブラックダイヤの存在位置が、ピタリと重なってしまっているのだ。


 衛兵達が口々に言い立てる。

「確かに、非常識に(・・・・)膨らんでいますな」

「くそぅ! どうして俺達は、非常識な(・・・・)膨らみに気付かなかったんだ」

「隊長は凄い! あの非常識な(・・・・)膨らみを、一目で見抜くなんて」

「さすが、隊長!」

「略して〝さすタイ〟!」


 隊長が俺を拘束(こうそく)するべく、歩み寄ってくる。

「見たところ、その非常識な膨らみは人工的なものだ。さぁ、()め所まで来て、不自然きわまりない膨らみについて説明してもらおうか」


 マズいぞ! 俺は必死になって言い訳を考えた。


「ち、違うんです、隊長様。私のズボンは、非常識に膨らんでいる訳では無いのです」

「ほぉ。では何故、貴様のズボンは膨らんでいるんだ?」

「そ、それは……」

「それは?」

「私のズボンは……常識的に(・・・・)膨らんでいるんです!」

「な、何だとぉぉぉ!」


 驚愕(きょうがく)する、隊長。


「これは自然な現象なのです!」

「馬鹿な!」

「生理的な反応なのです!」

「あり得ない! ここは無数の人間が行き交う城門だぞ。しかも、今は真っ昼間。いっぱいの通行人、多くの衛兵。そんな衆人環視の中、貴様のズボンは常識的・自然・生理的に膨らんだと言うのか!」

「その通りです!」

「何故だ! なぜこのような場所、このような時に、ズボンの股間部分が常識的・自然・生理的に膨らむのだ!? とても、信じられん。説明してみろ! いかなる理由だ!」

「お分かりにならないんですか?」


 絶叫する隊長へ、俺は熱い目線を向けた。イケメンが(おび)えたように後退(あとずさ)る。


「な、何をだ?」

「貴方のせいです」

「貴様、いったい何を?」

「隊長様のそのお美しい姿を見たせいで、私のズボンは常識的・自然・生理的に膨らんでしまったんです」

「嘘を吐くな!」

「真実です」

「黙れ! たとえ常識だとしても、それは非常識な常識だ」

「いいえ。これは常識的な常識です。自然な自然さです。大きな自然の膨らみです。大自然(だいしぜん)なのです」


 俺と隊長の問答を聞いていた衛兵と通行人達は、俺の下半身に改めて注目した。


「そういう理由なら納得だ」

「実に常識的な膨らみだ」

「自然な膨らみだ」

「生理的な膨らみだ」


 ウンウンと一斉に頷く彼らとは対照的に、隊長はあくまで抵抗する。


「認めん! そのような非常識な膨らみ、私は断じて認めんぞ!」

「それなら隊長様。どうぞ、(じか)に触って常識を確かめてください。私の膨らみは、硬くて、カチカチですよ」


 俺が隊長の手を掴もうと近寄ると、彼は慌てて跳び退いた。


「硬いだと!」

「ハイ」

「カチカチだと!」

「ええ。価値あるカチカチです。勝ち組なのです」

「何に勝っているんだ……」

「黒くてツヤツヤしていますよ」

「黒い……ツヤツヤ……」


 隊長が呆然としながら(つぶや)く。

 俺は嘘は言っていないぞ! ブラックダイヤは、黒くてカチカチに硬くてツヤツヤしているからな。


 衛兵と通行人達が、ざわめく。

「話が盛り上がってきた」

「股間も盛り上がってきた」

「話題が膨らんできた」

「股間も膨らんできた」

「噂が広がり、大きくなるに違いない」

「股間は既に大きくなっているがな」


 隊長が、なおも俺に向かって(わめ)く。


「貴様! たわ言を述べるのも、いい加減にしろ! 禁固(きんこ)の刑にするぞ!」

「チ◯コの計ですか? そんな計略なら、喜んで受けます」

「チン◯では無い。キンコだキンコ」

「私のチ◯コは、とっくにコキンコキンです」


 俺の主張に対し、幾人もの衛兵が……。

「隊長はイケメンだからな。あの男の言い分も理解できる」

「実は俺も、隊長を見ていると、股間が常識的に膨らんでくる時があるんだ」

「なに! お前もか。正直に言うと、自分もだ」

「ワシも、ワシも」

「自然と、大きくなるんだよな~」

「股間が大自然だ」

「どうだ? 今晩、皆で隊長にお願いしてみないか?」

「うむ。それは素晴らしい提案だ」

「隊の士気高揚(こうよう)も、トップの務め」


 衛兵達の会話が耳に届いたのだろう。隊長は顔色を青くし、全身を震わせつつ俺に通告してきた。


「分かった。通過を許す。頼む。もう行ってくれ」

()ってくれとは……隊長様は、なんと大胆な」

「違う! そっちのイくでは無い!」

「私、イきそうです~」

「やめろー! イけ! もう、早くイってくれ!」

「ああ、イく! (城門から)出ちゃう!」

「いや、イくな! 出すな!」

「イきます! 出ます!」


 俺が身(もだ)えしているうちに、衛兵達が隊長を取り囲んでしまう。


「まぁ、まぁ、隊長。彼はイかせてやりましょう」

「隊長のお相手は、我々がイタしますので」

「何も心配は要りません」

「股間の準備は万全です」

「大自然です」

「さすって差し上げますよ、隊長」

「略して〝さすタイ〟」


「お、お前たち。何を言って……」

 イケメン隊長が、マッチョ衛兵達の(うず)の中へ呑みこまれていく……実に、自然な展開だ。


 こうして俺は、突破困難な関門を無事に通過した。



 後日、王都の城門を守る衛兵達に関する噂を聞いた。何でも、これまではユルユルの規律だったのに、ある日突然、隊長を中心に鉄の結束力を誇る精鋭部隊へと変貌(へんぼう)()げたそうだ。その理由は不明。


 俺の手元にあるブラックダイヤは、相変わらず黒くて硬くてツヤツヤしている。

 ダイヤモンドは「ア――――ッ!」な輝き。……ホント、お下品でスミマセン。

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― 新着の感想 ―
[一言]  息を呑む駆け引きのすえ、こんなオチに(笑)  隊長のそのケがあったら、取り調べ室に連れ込まれて「ア――――ッ!」なのは大泥棒のほうだったかも(汗)
[良い点] 最後はやっぱり「ア――――ッ!」 [気になる点] なぜ書こうと思ったし!? [一言] 人生初のBL小説を読ませて頂きました。 久々に感想に困りました(笑)
[一言] え? え? え? ア~~な展開?
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