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ライソン帝国とヴェズリー王国

七話目です

 ナージリア大陸にある最大を誇るライソン帝国と、隣国のヴェズリー王国の国境は十何年もの間小競り合いを続けている。

 ヴェズリー王国は大きさはライソン帝国に負けるものの、かつては精霊に愛される国として内外に強固な国力をアピールして帝国を牽制していた。

 しかしここ一年程で精霊の力が弱まったのか、それとも精霊自体が減ったのか、国の要である精霊術師が魔術を使えなくなってきていた。

 精霊術は他の魔術に比べると威力が凄まじく、精霊と親和性の高い精霊術師は宮廷魔術師団の中でも別格の存在であった。

 国中で崇められ、中には図に乗って横柄な態度を取る精霊術師も居た程だ。

 それが使えないとなると一般の魔術師にも劣るとして、何人もの精霊術師が解雇されることなった。

 それに伴って一般魔術師の待遇改善が必須になり、魔術を使えない騎士団の強化もされることになった。


 その件は程なくして密偵から帝国に伝えられ、国境にあるヴェズリー王国の砦に攻め入り落とす準備を進めた。


「タナトス、残っている精霊術師もあと僅かと言うが、まだ氷結の精霊術師は残っておるのだろう?」


 白金の髪を短く切りそろえた筋骨隆々の美丈夫が、玉座からギロリと眼を左下に向け、タナトスと言う茶髪で痩せぎす、神経質そうな宰相に問い掛ける。


「報告によればその精霊術師は国王付きになったそうです」


「今まで前線置きだったのがなぁ。あの狸も余程自分の命が惜しいようだな」


「そのことを手の者に城下に噂としてばら蒔いておりますので、直に国民から不安の声が上がるでしょう」


 タナトスの口の端が僅かに上に上がる。


「うむ、して、ゴーレムの製造はどの位進んでおるのだ?」


「ゴーレム製造の為の魔道石に関しては順調「申し上げます!」……何事だ」


 慌てた様子で魔道研究所の職員が、謁見の間を護衛する騎士と共に入ってきた。


「陛下、申し訳ございません。不敬覚悟の上の緊急事態と言うことで、通しました!」


 騎士は少し焦って、白金髪の美丈夫、ライソン帝国の皇帝陛下であるアンドリュース・ライソンに説明する。


「よい、お前のことは信用しているし、そいつも良く知っておる。して、緊急事態とは?」


 騎士はアンドリュースの言葉にキラキラと瞳を輝かせ、一礼した後に元の配置についた。


「島から魔力抽出が突然止まりました」


「ふむ、原因は?所長のイズムは何と言っているのだ?」


「所長は原因究明の為にタシロ殿とキサラギ殿と共に島へ向かいました!」


 一瞬思案した様子のアンドリュースは「ふむ」と声を漏らす。


「マルル、そんなに慌てるな。リュータローとカケルであればイズムの護衛としても大丈夫であろう。魔導石の製造は止まるが、ゴーレム製造分は大丈夫であろうか?」


「現在完成しているゴーレムは102体と聞いているが?」


 アンドリュースの問いに、宰相のタナトスが職員のマルルに確認する。


「はい。完成品が102体。まだゴーレム製造に回してない魔導石は凡そ150個です。正確でなくて申し訳ございません」


「構わん。そなた達が頑張ってくれておるのは承知しておる。これからも無理せず励め。イズム達が戻り次第リュータロー達と共に報告させよ」


「はい!これからも陛下の為に微力ながら尽くします!」


「ククッ、そこは国と国民の為にと言っておけ。余は単なる代表に過ぎん」


「へ、陛下!私は…いえ、私達職員は陛下を尊敬しています!私は更なる忠誠を誓います!」


 頬を赤らめたマルルは意気揚々と謁見の間を後にした。


「全く……陛下の人たらしぶりには頭が下がりますな」


「人たらしとは人聞きの悪いことを申すな」


「貴方は学生の頃から変わっていない。もっともあの時は……いえ、申し訳ございません」


 アンドリュースとタナトスは同級生で、その頃から共に切磋琢磨する間柄であった。

 そのタナトスが、まだ身軽だった学生時代を思い浮かべ、そして言葉を詰まらせる。


「タナトス、俺は今でもシスコンだと自負している」


 学生時代に合わせて言葉も戻る。


「私もどれだけアナスタシア様にお世話になったことか…」


「二人してよく小突かれてたな」


「あの頭突きは痛かったです」


 ふふっと笑みを浮かべるタナトスは、宰相の顔から学生時代に戻った様に若干幼く見えた。


「だからこそ、姉上の無念を晴らさねばならん。それが漸く叶う」


「ええ!是非ともあの狸を冥府に送りましょう!」




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