何処かの別荘ですか?
二話目です
ゆっくり確認する様に階段を降りていく。
人の声は聞こえない。
1階に降り立ち部屋の中を見回す。
2階と同じ白い板張りだが、良く見ればアイボリーっぽい。
大きなクリーム色の布張りのソファー、その前には膝丈のガラステーブル、そしてソファーと向かい合うように大きなテレビがあった。
何インチだろうか?
視線をズラせば対面キッチンが見えた。そのままキッチンへ移動し、棚等を確認するが、何も置いてなかった。
両開きの冷蔵庫を開けてみる。ペットボトル入りのミネラルウォーターが2本入っていた。
俺が良く飲んでるメーカーだった。
状況的に誰かに助けられたのか、それとも拉致られたのか、俺の事を知ってる奴には変わりない。
ただ殺意は無さそうだ。あったらとっくに死んでるだろうし。
しかし、本当に何も無いな。
調理器具も食器も一切無い。
普段使ってない家なんだろうか?
窓からは広い庭と、竹林……竹林?
もっと近くで見ようと玄関だろう扉を開けると毛皮があった。
正確には生き物の胸らへん?胸毛?
いやだって、足がね、すっごいデカい足が見えるわけよ。
思わずそっ閉じする。
そぉっと窓に移動し、庭を再度確認してみると、居たよ。
犬?が。
何で疑問形かと言えば、凄くデカい。
さっきの扉から見えた毛皮は多分この犬?のだろうけど…、ダンプカーぐらいある。
以前ネットで見たアラスカンマラミュートや、グレートデンなんて目じゃない。
窓越しに目が合う。
顔デカっ。
それが二頭。匹じゃなくて、この大きさは頭だわ。
鼻に皺寄せて歯を剥き出して唸ることも無く、ジーーっと俺を見ている。
怖い。
何あれ。あんなデカい犬なんて見た事ない。狼だってあんなに大きくない。
まさか実験動物?
俺を拉致した何処かの結社で夜な夜な作られてるとか??
これじゃ外に出られない。
いや、突然変異かもしれない。
ほら、アメリカとか、何でもデカいって言うし。人参は小さいらしいけど。
東京では日本の地方は勿論、海外の物だって直ぐ揃うって聞くし、まだ拉致って決まった訳じゃ……。
拉致だったよ。
何で分かったか?
あのデカいテレビに『貴方を拉致しました』って文字が出てるんだよ。
今気付いたら俺が持ってた物って何も無いな。
財布は既に無かったし、壊れたスマホも着ていた洋服も靴無い。今は女子が好きそうなフワモコのスリッパだし。
兎に角情報が欲しい。
俺は覚悟を決めてソファーの真ん中に座ってテレビの画面を見詰めた。