表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
窓の向こう  作者: Reiko
5/6

処刑場

一人二人、消されてゆく。前に一歩、一人が恐る恐る出たかと思うと、首が一体吹きとぶ。ああ、もうすぐ自分だ、と思わず目を閉じる。


俺の横の奴が一歩、前に出た。黒髪の女だ。なんの罪を犯したのかは知らないが、虚ろな表情で俯いていた。


先頭でノコギリを持つ男の掛声と共に、ぎらりと光る刃が宙を舞い、やがて女の首を切った。その面は生前と変わることなく俺の足元に転がった。


俺はこういうものを見慣れてる。気持ち悪いなんて感情はとっくにどこかへ消えている。自分の立場をつい忘れ、その綺麗で真っ赤に染まった首を素手で拾い上げた。よく見ると目を見開いている。自分のシャツで朱色の首を拭った。


死んだ人間の骸骨は案外柔らかい。残った体は首から先を失い、俺の手前に倒れていた。その周りにも、同じような無残な姿の死体が一つ、二つ、三つ、四つと限りなく横たわっている。


俺は首を体の横に転がして、前の奴らと同じように、しかし堂々と前に出た。さあ切れ、と首を突き出す。俺を殺そうと、目の前の男が斧を振り上げたとき……


大男が、その手を止めた。


「……やめておけ」


俺も殺人野郎も、驚いた目でその男を見上げる。大男は黒い仮面をかぶったまま、ぼそぼそと口を開いた。


「旅人を殺ってはいけない。この者はまだ逝く途中だ」


……ああ、そういうことか。俺はまだ死んでいないんだ。やっと分かった。此処は掟を破り、死んでから成仏しなかった逝人の処刑場なんだ。


いま、咄嗟に思い出した。俺の目の前で切られた黒髪の女の顔が、幼いころに失った俺の母親そっくりだったことを。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ