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おっさんは聖女になりて異世界を憂う  作者: とくみつ ろゆき
中立商業都市・魔国編 人々の営みと聖女の憂い
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冒険者 ダン 

リアル超多忙にて不定期になっております。年末年始まで既に予定が埋まってて・・



不定期になるでしょうが・・頑張ります。

俺の名はダン、30歳独身、中立商業都市の中級冒険者だ。



普段は商業ギルドの商隊護衛なんかの任務が多いんだが今週は商いが少ないらしく、珍しく手が空きそうだったためPTの仲間達と相談して久々にダンジョンでアイテムの収集を行う事と決まり早朝から支度をして現地へと向かう。


「やっくそう~やっくそう~沢山採れるかな?」


「ああ、最近はめっきりダンジョンに入るモノ好きも減っちまってちょっと間を空ければ結構な量の採集が期待できるらしいぜ。」


鼻歌交じりでてくてくと一階層を歩くPTメンバーのテト、こいつは回復魔法が得意で薬草にも詳しい。女だが漢所帯に混ざる事も厭わない変わり者だ、ちなみに年齢は25歳。


「ダンジョンに入るのは本当に久々だね。」


メンバーで最も若手(19歳)の射手、クーリが呟く。確かにここ数か月はまとまって働き詰めだったので良い息抜きにもなるかも知れねぇ、そんな事を考えながら慣れた道のりをゆっくりと進む。


15階層からなるこの中央窟、その10階層にお目当ての薬草の繁茂しているポイントがある。10階層とは言えどこのダンジョンの敵は数は少ないし強くも無い。強いて言うなら13、14、15階層辺りの大型モンスターが多少危険な部類だろうか。それ故皆お気楽ムードのままさして警戒もせずに10階層での採集を終えた。


「ボスは一応やっとくか?危ねぇ事は無いだろうけれど、確認だ。」

「私はOK!」

「久々ですし、良い腕慣らしになるかもですね!!」

「決まりだな。」


いつも通りなら10階層のボスは大型のサイクロプス、中型のオーガ3体程度、中級冒険者で初見でも無ければ余裕で倒せる敵の筈・・・・だったんだが。

階層主のいるボス部屋の扉に手をかけた瞬間背筋が凍るような魔物のうめき声が響き渡りバンッと大きな扉が全開になったと思う間もなくボス部屋一杯になっていた魔物たちが津波の様にあふれ出てくる。


「全員下がれ、撤退だ!!」


扉に弾かれて派手に転んだテトを拾い上げ叫ぶ。振り返ることなくまずは距離を取るために全力で走るしかない。背中に背負っているテトの左足から血が出ていることに気が付いた俺は必死に走りながらもテトに声をかける。


「テト!平気か?」

「ダン・・ごめん・・魔法使えない・・コレ・・。」


テトが指さした方向、左脇腹あたりに矢が刺さっていた。


「ゴブリン射手の魔封じの矢・・・か?」

「うん、私を置いてって?荷物にしかならないんだし。」

「馬鹿な事を言うな!仲間を見捨てる程俺たちは落ちぶれちゃいねぇぞ!!」

「そうですよ、幸い他のPTはいないようですしこのまま外まで逃げきれれば。ね!!」


地鳴りのような魔物の軍行の音が後ろから迫っている。俺は両手が塞がっているため走る事しかできない。

器用に振り向きざまに矢を放ち足の速い魔物のみを射落としていくクーリ、アイコンタクトだけして全力で撤退を決め込みひたすらに最短距離で走り10階層の直線通路に差し掛かった。


「階段見えました・・・・あれは・・・!!」


遥か前方に上へと繋がる階段、その手前に人影が見える、恐らくは俺たちが入った後に来たやつらだろう。巻き込むわけにはいかない、息切れする中肺に思いっきり空気を含ませて俺は叫んだ。


「にげろおおおぉおぉおお~!!」


男一人女3人のPTはさして驚いた顔もせず俺たちが通過していくのを見守る様に眺めていた。何故逃げない?いや、忠告はしたんだ、俺は歩みは全く止めず、そんな事を考える事すらもう出来ないほど疲労していたんだと思う。


何分走っただろうか?階段のすぐ手前まで辿り着いた所でテトが俺の頭をポンポン叩いてくる。


「はぁ・・はぁ・・何だ?どう・・した?」

「あのさ、静かになってない?」

「テトさん・・はぁ・・はぁ・・矢は?顔色も良いようですが?」


会話を始めてすぐに俺はテトを降ろし、肩を上下させつつ息を整え振り返った。確かに音がしない。魔物の気配も無くなっている。


「あのPTとすれ違ったときに一瞬だけ魔力を感じたの・・・そしたら矢が抜けて傷も・・・・。」

「マジか?すれ違ったのってほんの一瞬だぞ!詠唱している暇なんて、魔封じの解除と怪我の治療は別の魔法だろ?」

「うん、そのはず・・だよ。」

「これは推測ですが・・・先程のPTがとてつもなく強い方々だった・・という事ではないでしょうか?手前にいた二人は警戒していましたが後ろの二人は武器さえ構えていませんでしたし。」

「まさか・・・だが・・・。」


すっかり足を止め会話する状態となってしまったので俺は階段の端に縋りつく様に座り込み腰にあった剣で体重を支える様にし遥か前方を見つめる。暫くの無言の後、大きくため息を一つついて立ち上がり口を開く。


「テト、回復魔法を俺たちに、様子を見に戻ろう。」

「ん、わかった。」

「こちらが一方的に巻き込んでしまったのは確実ですし、何が起こったのかも見届けなければギルドに報告もできませんしね・・・。」


歩く事20分程、静まり返ったダンジョンの通路に笑い声が聞こえてくる。不思議と空腹に襲われる・・・



「良い匂い。」

「そうですね・・・。」


ゴクリ・・・と喉をならす三人、恐怖からなのか空腹からなのか今になって思えばどちらかは分からないがゆっくりと引き寄せられるように歩いて行くと人影が見えた。


魔物はきれいさっぱりいなくなっており、3人が周囲に散らばった魔石やドロップアイテムなどを袋に詰めて回っている。やはりさっきすれ違った4人で間違いない。あの数のモンスターを相手にしてまるで無傷・・・・それどころか驚くべきことにダンジョンの通路で火を焚いて料理をしてやがる??なんなんだこいつらは??


「ああ、先程の。怪我の具合はもういいみたいですね、【浄化】。」


神官の様な姿をした小柄な金髪の女が料理の手を止めて立ち上がり、立ち上がり際にテトの服を浄化の魔法で一瞬にして綺麗にして見せた。無詠唱?聞いたことはある・・・伝説かおとぎ話だと思っていたんだが実際見たものは疑いようがない。まずは謝罪だ、ここは誠意が全てだろう。


「おれはこのPTのリーダーをしている冒険者のダンという。今回はその・・済まなかった。緊急時とはいえ置き去りにしてしまって、そちらのPTには無理を押し付けてしまい・・・」

「お腹減ってません?今スープ温めなおしてるんですよ、皆さんもいかがです?」

「お腹ぺこぺこ。」

「御相伴に与ります。」

「お前らちったぁ遠慮ってもんを・・」

「はい、どうぞ。」

「あ、どうも。」


笑顔で木の器に盛られた乳白色のスープを手渡され素直に受け取ってしまった。


「パンも有りますから皆さんで食べて下さいね。」


ニコニコ笑いつつテキパキと支度をしていく神官の女、色々目立たないような服装なのに胸元から目が離せないすごい体型だ・・・いかんいかんテトの奴がジト目になってやがる。慌てて食事の方に意識を移して口に含む。3人で顔を合わせて同じことを口にしてしまう。


「「「旨い。」」」


何なんだこのスープ?塩味と肉の味と野菜の味がミルクと合わさって優しく包み込まれている。出汁のきめては・・・貝か?複雑すぎて上手く表現できねぇがスプーンが止まらねぇ。パンとの相性も抜群だ、このパンもすげぇ、外はカリッとしてるのに中は柔らかで焼き立てそのものって感じだ。3人が3人とも無言でひたすらに食べておかわりまでしてしまった。



「落ち着かれましたか?」

「ああ、すまないダンジョンで暖かいこんなに旨い飯が食えるとは思わなかった。」

「お粗末様です。それじゃあこちらもご挨拶を、私は旅の聖職者リア、あちらの騎士が私達の旦那様のセシル、軽装の短髪のが蝶華、エルフの娘がルシエ、中央商業都市に来たので見学がてらダンジョンを回っています。先ほどの事は何でもないので気にしないで下さいね。」

「私達の旦那様?3人全員?うらや・・・いやいやそれよりもあの数の魔物と戦って何でもないって・・・。」

「先日大型のクラーケンと戦いましたが・・あっちの方が歯ごたえありましたよ?」

「ギルドで噂になっていた巨大クラーケンを倒した・・・・?あんたが噂の聖女か??」

「何だかそう言われることが多いですが、別に真面目でも正義の味方でもありませんよ?」


そう会話しつつも食器を浄化魔法で丁寧に綺麗にしてから魔法袋であろうバッグに入れて行く聖女。マジックバッグなんて普通のPTじゃまずお目にかかれる代物じゃねぇ、間違いなく一級のPTだなこりゃあ。


「これだけの事をしてもらっちゃぁタダで返すわけにはいかない、何かお礼をさせてくれ!」

「お礼・・・ですか?うぅ~ん。」


腕を組んで少し考えた姿勢を取り、周囲を見回してから聖女はこういった。


「では、この通路の後処理のお手伝いをお願いしてもよろしいですか、私達の必要な物は既に回収しましたが後から別の方が来られた時に流石にこのままでは困るでしょう?」

「そんな事で良いのか?」

「はい、持ち帰りたいものがあれば好きなだけ持って行ってくださいね。」

「それではお礼には・・」

「それで充分です。」


笑顔に押し切られ、俺が折れた。

驚いたことに辺りにはまだドロップアイテムが山の様に残っていて回廊の端に寄せて持ち帰れる分だけを回収し、数回に分けて運ばなければ無理な量だった。一度上へと戻る準備が出来た所で聖女が再び近寄って来て。


「私達はこのスタンピートもどきの正体を突き止めてから戻りますので、美味しいお料理屋さんが有れば紹介して下さい。」

「わかった、俺達は街の『浮き桟橋亭』って所に宿を取っているから、宿の受付に一声かけたら飛んでいく。今回は本当に有難う。」

「有難うございます。」

「感謝です。」


深々と3人で頭を下げてから後処理を終え何事も無く中央窟を後にして街へと向かう馬車を待つ。


急にテトが俺とクーリの首を後ろから両腕でロックするように抱き寄せて来て・・頬が当たるほど顔が近くなる。


「あの4人には感謝してる。でも、二人のおかげで生き残れたんだよありがとね。」

「どういたしまして。」

「なんだぁ?惚れ直したか?いつでも貰ってやるぞ?」


「・・・・馬鹿・・でも、うん、そうしよっかな。」

「ん?あれ・・テトさん・・?マジか。」


吊り橋効果も良い所なのだが女心は俺にもわかんねぇ、腐れ縁ではあるがテトは好いているし今回のドロップアイテムを捌けば結婚資金くらいは余裕で出て御釣りが出そうだ。そう考えれば聖女様々だな。


「え、ボクは?」

「いい娼館を教えてやるよ、お代も今回は持ってやる。」


街に向かって走り出す馬車に揺られ、聖女に何を食わせようかという話でもちきりとなる。冒険者なんてのは命が有ってなんぼだ、助かったのだからそれなりの恩には報いなければなるまい。その後は欲しい物の話や今後のPTの事、何でもないやり取りをして時間は流れる。


夕暮れの街道に差し込む西日に目を細めつつ、今生きている事が本当に喜ばしいと実感する俺だった。



















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