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おっさんは聖女になりて異世界を憂う  作者: とくみつ ろゆき
人間の国編・フォンターレ領の渇きと聖女の憂い
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領主の館にて3

「明後日に来訪が決定いたしました。急な話で申し訳ありませんが、ご準備の程宜しくお願い致します。」

「いえいえ、わざわざ先触れを出して頂いてこちらは助かります。」

「聖女様は領主邸に到着後から護衛をお願いしても宜しいでしょうか?私は閣下の護衛が有りますので。」

「勿論です、言い出したのはこちらですしね。」

「快諾頂き有難うございます。では明後日に、失礼いたします。」


フォンターレの侍女長と話している最中にジェントさんから先触れがあり、明後日に向けての準備の為の作戦会議が行われようとしていた。

主賓が王と宰相、ヴァイスプレ公爵ともなればそれなりの歓待が必要となる、しかしそんな余力は今のフォンターレ領には無いので食事や寝床、視察などのスケジュール管理等々を細かく決めておかなければならないのだ。


嫁と蝶華はレミアの集中講座の為欠席レミアはそれから逃れようと必死に言い訳していたが、かしまし娘達に捕まって後ろ髪惹かれつつも悲痛な感嘆符を残して執務室へと強制連行された。食堂のテーブルを囲むのは侍女長と私、ルシエ、戻って来たかしまし娘2名の計5人である。


「王族をお招きするのは代替わりしてから初めてとなります。」

「以前はどうしていたのかを書き残した資料などは有るのですか?」

「ありますが、物資の不足している今、それと同じことは出来ないのが目に見えています。」

「そうですね。最大の問題は食事でしょうか?」

「はい、聖女様が移動を転移魔法で済ませて下さるおかげで少人数での歓待で済ませることが出来大変助かってはいますが、それでもなお食料は不足がちで・・・」


申し訳なさそうに目を附せ下を向く侍女長を見てから、ふ~む、と思考のポーズを取り顎に当てた手をパっと開いておっさんは、


「食事と飲み物に関しては私が準備しましょう。アイテムボックスに作り置きしておいてサーブする直前にお出しする形にすれば温かいままの料理が楽しめますし。」

「有難うございます。最大の問題が食材調達でしたから・・かかった食材代等は後日必ずお渡しいたしますので宜しくお願い致します。」

「視察スケジュールはこんな感じでどうでしょう?」


かしまし娘二人が発言する。

初日に歓迎の式典を行い、領主邸を中心とする街の視察、最も干ばつが酷かった村の視察、川の状態がわかる地域への視察、土地の荒れ方が最も酷かった畑の視察、を3日間で行なうという比較的余裕を持ったもので悪くない。


「良いのでは無いでしょうか?」

「ええ、異論は御座いません。」


おっさんと侍女長が頷いているとルシエが手を挙げて発言を求めている。どうぞ、と促され気まずそうに立ち上がり。


「大精霊達が未だに顕現しっぱなしであれからず~~っと土地と水を豊かにする努力を続けてるんだ・・・・それで、もぉボクたちが目で見てわかるほどの荒れ具合は残って無いかも・・・知れない。」

「「・・・・・・・」」


ルシエが言うには地脈にアクセスして湧水も戻り、土壌も一気に活性化したため木は生えていないものの膝丈程度の草は既に生え、川も流れ乾いた大地は残っていないとのことで。視察は街と村々を見回る程度に変更された。


「井戸と川の両方が復活したならば輸送は食料品だけで済むのでは?」

「そうですね、輸送の者の負担もかなり減るでしょう。」

「それで儀式後から元気なさそうだったんだね?魔力は平気?このマナポーションを飲んで!」

「有難う旦那様、でも平気だよ。顕現には殆ど魔力は必要ないみたいだし、むしろ大精霊たちから流れ込んでくるマナが多くって・・・何だか体が火照っちゃって・・。」

「そっか、辛かったら言ってね。」


赤くなって少しクネクネしているルシエだが本当に平気な様なので安心した。


「ちょっとエロいですね・・・」

「ね。」


スパーんっと侍女長の突っ込みが入りつつも細々とした話し合いが続き、夕刻までには話し合いは終わった。


ガチャっと音がして執務室から抜け殻の様になったレミアがふらふらと食堂に向かって歩いてくる。


「もぉ嫌ですわ・・・2毛作と2期作って何なのです・・・連作障害?聞いたこともありませんわ・・・灌漑用水路の勾配は・・・・」


魂が抜けたようにブツブツと呟きながら席に着いたレミアにおっさんは甘味を提供する。


「頭が疲れた時は甘いものが良いですよ。」

「これは?」

「豆と海藻と木の根から作ったお菓子です。暑い時期には丁度いいので獣王国で作っておいたんですよ。」


取り出したのは水羊羹である。数度晒した漉し餡を用いた淡い色合いのつるんとした光沢を不思議そうに見つめてスプーンを握りしめてレミアは固まっている。


「あぁ~水羊羹だぁ~♪美味ぃ~♪」

「口どけが良く、のど越しが滑らかで、しっかりとした豆の風味を残しつつも優しい甘さで・・・美味しいですね。」


少し遅れて出て来た嫁と蝶華が先に食レポしているのを見てレミアも水羊羹を口に運ぶ。


「本当に美味しい。」


豆と海藻と木の根と聞いて味の想像がつかなかったレミアだが淡い紅鼠の長方形を見つめながらうっとりと目を細めている。満足してくれた様でなによりだ。

服の袖をクイクイ引っ張られて振り向くとスプーンを持った侍女長とかしまし娘達が恨めしそうに私を睨んでいて、ハイハイ・・っと言いつつ人数分を取り出して与えた。


4人で夕刻の転移を終え、蝶華に明日からの水の輸送は必要ない事を伝えて貰い。段々と聖女一行(わたしたち)の手伝える事も減って来たなと感心しつつコテジへと戻る。



入浴を済ませ、夕食をとり、全員がまったりとリビングで寛いでいた。

スッと立ち上がると全員の視線が一瞬で集まったのでこの際に説明しようと思いおっさんはピっと右手を顔の前に立て注目させてから話し出す。


「今後の予定なんだけれどもね・・・・」



毒抜きが出来ていて目が獣で無い日は全員が川の字になって眠る事も多くなった。主寝室の大きなベッドに私が中心となり、右が嫁、左に蝶華、じゃんけんで負けてしまったルシエは今日は嫁の隣である。


「皆本当にこの一か月は苦労をかけたと思うよ・・有難う。」

「なんだかんだで一番飛び回ってるのはアナタでしょ?」

「そうです、私達には何の危険も無かったのですし。」

「そうだよ、ボク達は暑かっただけだよ。」

「あはは、そっか、でも、何だか有難うって今言いたかったんだよ。」

「「・・・・・」」


ぎゅっと全員が一段と寄ってくる。圧を感じながらゆっくりと瞳を閉じて・・・




「変な所触ってくることが有れば即自室に戻って結界張って寝るからね!」


「「いけず・・」」


フッと脱力した隙に起き上がり皆の頭を一回撫でてからもう一度横になり今度こそゆっくり眠った。





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