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おっさんは聖女になりて異世界を憂う  作者: とくみつ ろゆき
人間の国編・フォンターレ領の渇きと聖女の憂い
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周知と徹底

5日後、最後の井戸の水が安定したとルシエから通信が入りおっさんはシスターの元を訪れていた。

シスターは巫女(シスター)見習いを移動する他、全ての巫女見習い達から疑問点や問題点を聞き解決策を提案したり、食事の当番の割り振りをしたりと大忙しだ。それでも聖女(おっさん)に受けた恩を少しでもお返しすることで役に立ちたいと奮起し立ち回ってくれている。


「巫女見習い達に体調不良者は出ませんでしたか?」

「はい、きちんと休息を取る事も出来ていますし、夕べの時間をゆったりと設けて精神的にも落ち着いています。聖女様の転移のおかげで移動が楽な分、時間が有効に使えた事が良い風に働きました。」

「それは何よりです。今日はお手紙の件で伺ったのですよ。」

「明日の朝の件ですね?」

「はい、村人たちへの周知はできていますか?」

「勿論です。井戸の周りに時間に集まる様に伝え、足の悪い者は前もって我々で移動を手助けする予定になっておりますし問題ありません。」

「助力に感謝致します。」

「いいえ、これも奉仕です。我々に出来ることを出来るだけさせて頂いているだけですのよ。」


少しドヤ顔でホホホと笑うシスターは清々しく言い放つ。

深々とお辞儀して自分の台詞を奪われちゃったなぁ・・と頭をポリポリしつつシスターとの打ち合わせを終えた。11の村人はシスターに任せておけば平気だろう。


次は獣王国かな、とおっさんは足早に転移の魔方陣に乗り魔力を通す。

獣王国の商業ギルド長邸跡地は既に教会部分が形になっており、残る大使館部分の作業が急ピッチで行なわれていた。


獣王()とレイネの結婚式をここで大々的に行い国民に知らしめる!と獣王が思い付きで始めてしまった事なのだが首都中の手空の職人が総出となり獣王自らが指揮を執って国家事業として遂行しているので、国民の理解も深く宰相もゴーサインを出したため全くと言って良いほど問題無かった。


図面を睨みつつ檄を飛ばす獣王にゆっくりと近づき。


「御無沙汰しております獣王陛下、お手紙は読んでいただけましたか?」

「おぉ、聖女よ良く来た。明日の件だな?問題無い首都の民に全て声掛けしてあるぞ!」

「首都の民・・・全て・・・ですか?何名ほどいらっしゃるのでしょう?」

「5万人そこそこといったところかのぉ?年寄りや体の不自由な者は無理せずにと伝えてあるし。」

「ならば安心ですね、ご協力に感謝致します。」

「レイネには会ったか?」

「いえ、どちらにいらっしゃるのでしょう?」


キョロキョロと周囲を見回しても姿は無い。


「恐らく教会施設内であろう、何やら彫刻師達と話し込んでおったからのぉ。見て来てはどうかな?」

「はい、行ってみます。」


再び指揮に戻った獣王に会釈して、教会施設部分の扉を開け中に入る。祈りを捧げるための礼拝堂には既に椅子が設置され、最奥の壇上でレイネ様と彫刻師が話をしている。中央の通路を歩いてレイネ様に近づいていくと会話が段々と聞き取れてきた。


「静謐さの中に溢れる母性をもっとこぉ、何というか大胆にお願いします!」

「大胆にですか?」

「そうです、例えばですね・・・そう、こんな感じです。」


おっさんの後ろに回り込み肩を掴んで胸を張らせるようにグッと背中を押され、たわわな実りが前面に押し出されるように主張される。

ほぉ・・・っと彫刻師達がその隆起に見とれる。


「・・・レイネ様?流石に少し恥ずかしいです。」

「あっ、本物の聖女様でしたか?話に夢中になるあまり本人とは気が付かず申し訳ありません。」


ペコペコと何度も頭を下げつつレイネ様はササッとバックして彫刻師達に並ぶ。小声で、


「先ほどの感じです、いいですか?」

「目に焼き付けた・・やるぜ!」


何やら不穏な会話をしている様であるが、一国の王妃になろうというレイネ様に対して無礼な物言いも出来ないだろうと思い追求はしないこととした。


「それで聖女様は何用でしょうか?お手紙の件は陛下と準備万端ですが?」

「はい、先程陛下からお聞きしました。今日は王からの伝言を承りまして、レイネ様にお伝えしようと思い参上したのですよ。」

「まぁ!叔父様から?何でしょう。」


ゴホンと咳ばらいをして真面目な顔になってから、国王の物真似っぽく語るおっさんは、


「教皇との会談の結果、其方を獣王国常駐大使兼獣王国修道司祭の長として任命する。手が足りぬ場合には人王国内からの人員補充も可能であるため必要な場合は聖女に申し付ける様に。」


「わ、わたくしが司祭ですか?大使は構いませんけれど、司祭ですか?」


レイネ様は驚きと興奮で少々パニック気味、口をパクパクさせておっさんに訴える様に尋ねる。


「はい、間違いなくお伝えしました。レイネ様が女性司祭としては初では無いでしょうか?」

「恐れ多い、畏れ多いですよ・・わたくし・・ただの修道女でしたのに・・。」

「中小教会の修道女をまとめ上げた手腕と王の一押しの結果だと思います。」


胸に手を当てて数回深呼吸をした後にレイネ様は冷静になって、


「任命されたからにはその名に恥じぬ働きをさせて頂きます。そう、お伝えください。」

「王も教皇もきっとお喜びになりますよ。」


パチパチと拍手しながらおっさんはレイネ様の司祭就任を祝った。濃い紫色のストラを手渡し、跪き、深く首を垂れ、胸の前に右手を添えてから、


「レイネ司祭の今後のご活躍に期待します。」

「聖女のご期待に沿えるよう努力致しますわ。」


少し儀式めいた動きをしてあげた方が本人もすんなり受け入れられるかも知れないと思い、VRMMOの礼法をそのままにおっさんは再現した。レイネ様もやる気になった様で何よりである。


レイネ様への連絡事項も済んだことで、おっさんはコテジへと戻る。




「かぁ~入浴の後のミルクは格別だよぉ~♪」

「腰に手を当てて、煽る様に飲むべし!だね。ボクもお気に入り!」


嫁とルシエは井戸掘り後の汚れを落とすため一足早めにお風呂上りだった。腰にタオルを巻いたままの姿で嫁は牛乳を飲み切り視線を戻す。


「あ、旦那様戻ってたんだね~風呂お先に頂きました♪」

「うん、長い事井戸掘り任せちゃってゴメンね、お疲れ様。」

「御主人様の頼みだしね、ボク達頑張ったよ!」


ルシエと嫁の頭を背伸びして撫でて、労をねぎらい。おっさんは毎度の如くキッチンで夕飯の支度を始める。

少し経って戻って来た蝶華も調理に参加し、夕飯を全員で食べてから入浴する。



「旦那様と二人っきりで入浴するのは初めてで緊張します。」

「な、何する訳じゃないし・・女性同士だし・・変に緊張しないで!」


広い湯舟のハズなのに段々と追い詰められ、隅に逃げ場を無くすと蝶華がピタッと吸い付いてくる。疚しい気持ちはこれっぽっちも無いのだが蝶華はそうでもないようだ。


少し息を荒げ、上気した肌を見せつける様に向かい側に回り込み首に手をかけて顔が近づく・・・・


「あぁ~やっぱり抜け駆けしてるぅ~♪」

「許せないね!」


すっぽんぽんの嫁とルシエが乱入して蝶華を引き離す。安堵する反面少し可哀そうかな・・とも思うおっさんだったが、


「旦那様も無防備すぎぃ~!」

「ダヨ!」


面目ない・・・と首を垂れて、脱衣所へと向かい寝間着を着込むと自室へ向かう。自室のドアノブに手が届くかという所で寝間着のすそを蝶華が引っ張り、耳元で囁く。


「無茶苦茶にしても良かったのですよ、旦那様。おやすみなさい。」


耳元から首筋にキスする寸での所で


「あ~またぁ~!」

「2度ある事は3度あるだね!ボクも夜這いするよ!」

「夜這いしたら、次の回はその人はお預け!」


その一言で全員がビクっとなって冷静になり


「争いごとは良くないね平和が一番~♪」

「そうですね、失礼しました。」

「ボクも自室に戻るね。」


大事な事が明日に控えているというのに皆平常運転で安心した。

少し早めの就寝ではあるがおっさんはまどろむ意識の中で明日のシュミレーションを繰り返す。




気が付くとすっかり眠っていたらしく、日が昇る前の朝の空気が心地良い。


いよいよ今からフォンターレ領の大地の再生が始まる。頭の中では何度も成功のビジョンを描いたものの、実際どうなるかはわからない。パンっと頬を叩いてからおっさんはベッドを離れて支度に入るのだった。



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