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おっさんは聖女になりて異世界を憂う  作者: とくみつ ろゆき
人間の国編・フォンターレ領の渇きと聖女の憂い
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待つ嫁3人

短めが続いております。

テーブルの上に置かれたお饅頭を見てあの人が一度戻って来ていた事に気が付いた。


「お饅頭だぁ~♪」

「こちらでは見慣れない物ですね、共有している知識には地球のお菓子として認識できますが。」

「甘味だね、和食の食べ物はボク大好きになったよ。」

「これがここに置いてあるって事は多分人間の国と獣王国の会談に旦那様が使ったんだと思う。」

「成程、昨晩の会談用の物のおすそ分けでしょうか。」

「多分ねぇ~お茶淹れるからちょっと待ってね。」


お饅頭はあの人が御茶うけに出す物の中でも比率が最も高い品だし間違いない。アイテムボックスに入っているほうじ茶を取り出してお湯を注ぎ暫し待つ。

あの人みたく緑茶が美味しく淹れることが出来ればいいんだけれど私はまだまだ温度管理が甘くて味がイマイチになってしまう、ほうじ茶ならば高温で時間さえ管理出来れば美味しく淹れる事が出来るので安心だった。


「良い香りのお茶だね、あったかい。」

「芳ばしい香りとしっかりとした渋みで、このお饅頭に良く合ってますね。」

「旦那様ならもっと美味しいお茶淹れてくれるんだけど、私じゃこれが精一杯だよぉ。」

「そんな事ありません、とても美味しいです。」


蝶華とルシエは私のお茶を褒めてくれた。お饅頭を食べながら3人で旦那様の事を想像して今頃何をしているかを口々に語りあった。


「ボクは多分獣王と決闘してるんじゃないかって思うよ。」

「旦那様の事ですから大いなる慈悲で多くの人々を救っているのではないかと。」

「ん~どうだろうねぇ。色々やってる筈だけどあの人は結果としてそうなっちゃうだけで、自身はそんなに大したことしてない気分なんだと思うなぁ。」

「どういうことです?」


蝶華が少し不思議そうな顔で私を見る。私はお茶を一口啜ってからあの人の事について語りだす。


「あの人と私はね、この世界だと信じられないくらい高い能力を女神の加護として与えられているけれど向こう(ちきゅう)では特別な力は何も無くって平凡そのものなんだよ。だから、戦闘は好きじゃないし、魔法で人々を救ってもあんまり凄い事とは感じて無いんだよね。」

「そうなのですね、地球の知識では戦いについての物と魔法の関連の知識は『ゲーム』の中の知識としてしか存在していません。その事と関係しているのでしょうか?」

「そう、実際に戦うんじゃなくて『ゲーム』の中で戦う訓練をして『ゲーム』という枠組みの中でのみ魔法を行使できる感じだったの。」

「でも旦那様なら魔法が使える世界だったら今みたいにスゴイ魔法使いになっちゃうと思うよ。」

「だろうねぇ、あの人は自分の出来る事、好きな事、やろうと思った事に関しては人並み以上に努力して全ての力を用いて何かあの人なりのルールで完成形に持っていくから。今回も多分そのルールに沿って人の為に必死になって思考して、何かを成そうと頑張ってると思う。」

「旦那様のルールって?」


今度はルシエが不思議そうな顔で私を見る。蝶華もそうだケドこの二人は本当にあの人が大好きなんだなって思うと少し嬉しくなり何時もより私は饒舌になる。


「あの人のルールは簡単、自分の力を他人に使える物として変換し分け与えようと試みるって事。どんなに優れた力を持っていたとしても自分にしか使えないモノには興味が沸かないみたいなのよ。」

「それって、普通に難しいですよね?」

「さらっと色んなことをやっちゃうから、ボクには真似できないって毎回思っちゃうよ。」

「うん、私も最初の頃は真似できないかなって思ってた。でも同じことをする必要は無いんだって気が付いてからはあの人とは違った角度で同じ道を歩けるようになったんだぁ。」

「何かに例えて教えてください。」

「ボクも旦那様の事もっと知りたい。」


早朝ではあるし出発まではまだまだ時間も有ったので、お茶のお替りを淹れてから話を続ける。


「例えば【ヒール】って回復魔法があるでしょ?あの魔法使用者のLVが低いうちは自分にしか使えないの。そんなのは意味が無いからって必死に何度も使用して熟練度を上げて他者への使用を可能にしたりするわけ。ゆっくりやってもいずれは出来るってわかってても他者への行使が優先度として上回っちゃうみたいで。」

「そんなことが・・普通の人なら自分に唱えれるだけでもある程度満足してしまいそうなものですが。」

「利他主義って言えばいいのかなぁ?自分の周りの幸せによってあの人は幸福感を得られるタイプでね。」

「それで自分以外の人が嬉しそうだとニコニコしてるんだね。」

「そそ、慈愛の意味そのものみたいな理想を胸に秘めて、現実に少し絶望してる。だけど全ては諦められないから掌から零れ落ちないように必死に頑張っている感じ・・って言えばいいのかな。」

「何だかガラス細工みたいな脆さがある考え方とも取れますね・・・。」

「旦那様が必死なのはそのせいなんだね、ボクは神様みたいな人かと思ってたけど・・。」

「そうなんだよ、あの人は特別じゃない。ただの人。でも、それでも、諦めない強い人なんだよ~♪」


3人で少し考え込んでしまって私以外の二人は少し俯きがちになって黙ってしまう。ありのままの旦那様をこの二人にも知って欲しいと思って話したのだけれど、逆効果だったかな?と思っているとパっとふたりは顔を上げて立ち上がり。


「旦那様の事もっと好きになりました、話してくれて有難うございます。」

「ボクもだよ、もっと頑張れる、もっと旦那様の為にって思えるようになったよ。」


少しびっくりしてポカンと口を開けたまま座っていた事に気が付いて、電源を入れなおしたように私は二人に応える。


「そっか、二人ともありがとう。私も含めて旦那様大好きだね。嬉しいよ。」


一人だとあの人の事を思い悩んでも答えは出ない事の方が多かった、でも今は3人だ。3人ならばあの人の想いを支えていけるのでは無いかと思えるようになった。これは私の中の変化だ。固執することなく3人で話が出来る事、共通の話題で理解し合える喜びを得られるようになって私自身が少し救われた気分だった。


お饅頭を食べたので控えめな朝食をチョイスしてテーブルに並べて3人で雑談交じりに食べる。


あの人がいない朝食はそんなに会話も弾むことなく淡々としていたのだけれど、今日は違った。恐らく今後はもっと蝶華とルシエと話すことが増えるだろうな・・そんな風に自然と思える。話してよかった。


「早く帰って来て欲しいのは変わんないけどねぇ~♪」

「どうしたのですか?」

「独り言かな?」

「あ、うん。そんなとこ~。」


思わず声に出ちゃったみたいで二人に心配されちゃった・・・全部あの人のせいだ・・。帰ってきたら思いっきり甘えてやろう、我儘言って困らせてやろう。そんな思考が楽しかった。




結局この後我慢出来ずに旦那様と通信で散々話す事となるのだけれど・・・ご愛嬌よね・・・♪


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