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おっさんは聖女になりて異世界を憂う  作者: とくみつ ろゆき
人間の国編・フォンターレ領の渇きと聖女の憂い
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創造魔法【スイッチ・ソウル】

入浴を終えおっさんはまだ自我を保っていた。普段であればルシエに執拗に責められ早々に女帝と交代しても良い頃合いだが本日のおっさんはどこか違った。

そそくさとタオルを巻いたまま主寝室へ向け無言で歩いて行く。


「何か思いつめたようなお顔ですね?」

「そだねぇ、気になるねぇ。」

「ボク先に行くね。」


先行してルシエが主寝室へと向かう。おっさんはタオルを巻いたままベッドにうつ伏せになって枕を頭の上にのせて手でしっかりと掴み押さえつけている状態だった。


「旦那様・・お風呂の事・・その、嫌だった?ボク嫌われちゃった?」


おずおずとルシエが尋ねてくる。おっさんはむくりと起き上がりベッドの上に正座して枕を縫い包みの様に抱きかかえて顎を枕の上に乗せたような体勢で返事をする。


「全然嫌じゃないよ。今日は少し私が考え事が多くってね、心配させちゃったかな?ゴメンね。」


そこまで言うとルシエはおっさんの傍に来て同じように正座して座った。後から二人が加わって、円を描いて座談会の様な状態でおっさんが口を開いた。


「実はね、最近分かったことが有ったんだけれど中々言い出せなくって、今日が都合がいいと思って切り出そうと色々考え込んでたんだ。」


そう言うとおっさんは徐に羽衣をアイテムボックスから取り出し、全員で手を繋ぐように指示する。


「多分この事を知ってしまうとこの世界では色々問題が出ると思う。ルシエと蝶華はそれでもいいかな?」


手を繋いだまま静かに頷く二人、おっさんの右がルシエ、左が嫁、嫁の隣が蝶華で、視線はおっさんに向かっていた。


「わかった、今から魔法を一つ作るよ、今日今からしたいことを頭の中で強く願って。はっきりとしたイメージで強く祈って、そう、もっと・・・」


全員が少し顔を赤くしつつ妄想の花を咲かせている。


『女神様~フィーリズ様~!!』

『ひゃい?何かしら、この桃色の神力は・・・わかってる?これ、結構大変な事よ?』

『わかってます。ですけど、これ以上彼女達の期待を裏切り続けるのも・・』

『あ~も~わかりました。こっちにもビンビン波動が来ちゃうからさっさと終わらせて。』

『感謝します。』


女神の許可を得ておっさんは静かに詠唱を始める。


『我と汝らの強き祈り、儚き願いを聞き叶えしものよ、今ここに新たな理を生み出さん。その名は・・』


バッとタオルを取り払い嫁に抱き着いておっさんは心臓を合わせ、魔法を唱える。


【スイッチ・ソウル】


カッと眩い光が二人を覆った後におっさんの頭の上と嫁の頭の上から光の玉が飛び出して、交差しておっさんから出た光玉が嫁の頭に入り、嫁から出た光玉がおっさんの頭に入って・・・・。


「成功しちゃったなぁ。」

「これがしたかったの?アナタ?」


嫁とおっさんの体が入れ替わった状態となりあきれ顔でリアに入った嫁が聞いてくる。


「嫁、固有スキルは魂に宿っているらしいから、そのままもう一度手を繋いで、私のスキル【全解析パーフェクトアナライズ】を全員に【感覚共有譲渡】で渡して。」

「そっか、こうすることで私の使えないスキルや魔法も譲渡できるのねぇ♪」

「ご名答。指定範囲は使用可能なスキルと魔法にしようか。」

「了解~。」


嫁が【感覚共有譲渡】を使い全員におっさんが持っているスキルと魔法の中で使用可能なものが共有された。


「これで何が起こるかと言えば。」


『全員聞こえるかな?』

『あ、そっかぁ~♪』

『聞こえます、聞こえますよ?頭の中で・・不思議な感覚ですね。』

『ボクも聞こえる~これ、夫婦間通信ってスキル?』

『そそ、女神から授かったスキルなんだけれど、本人以外だけど一応了承も得てコピーさせてもらった。』


にこやかに笑いつつおっさんは肉声に戻る。


「ここまではついで・・なんだ。皆【全解析】って唱えて。唱えたら目線で分析したい人を指定してみて。」


3人は頷いてからスキルを使用する。共通スキルでは有るのだが消費スキルポイントが凄く高いため嫁は持っていなかったスキルである。鑑定と分析を併せ持つスキルで、薬剤師には必須スキルだった。しかし今回の用途はそうでは無く。


「何でしょうコレ・・頭の上に名前とL・・V・・レベル?ですか・・が表記されています。」

「見えちゃうんだね・・やっぱり。」

「ボクも見えるよ、セシルがラオパラディンで、使えるスキルが一杯あるね。」

「アナタはこれが蜘蛛を倒した時にはもう見えてたのね?」

「そそ、でもこの世界の理ではLVやパラメーター(能力値)の表記が個人で見える様にはなっていない。どうなるかわからなかったので伝えるかどうか悩んじゃってね・・遅くなってゴメン。」


申し訳なさそうに頭を下げるおっさんを3人は優しく受け止める。


「隠し事しないで伝えて下さったのですから十分です。」

「ボクも疑ったりはしないよ!」

「私は最初からどっぷり旦那様の味方だしぃ♪」


皆で少し笑ってしまった。笑いが収まったところで嫁が待ってましたとばかりに・・・


「もちろん今日はその体で相手をしてくれるのよねぇ~?」

「楽しみです!」

「今日はボクが一番最初の日だよ。」


「・・・お手柔らかにお願いします。」


結局【スイッチ・ソウル】の効果時間一杯の3時間みっちり搾り取られたおっさんは心地よい気怠さと共に意識を手放した。




気が付くと元の女性の体に戻っており、嫁が目の前で寝息を立てている。いつも通り下から抜け出て主寝室から一旦外に出て休憩室で水を一杯汲み飲み干す。


「想定の範囲内だけれど、今後がどうなるか・・・だな。」


おっさんは独り言ちてベッドへと戻り再び眠りにつくのだった。




翌朝、朝食の支度を終えおっさんがテーブルに並べている最中にルシエが一番に降りてきて。


「旦那様昨日は凄かった。次はいつ?」

「あの魔法、神力で発動してるから・・あと半年は使えないよ・・・。」

「え~残念もっとシテもらえば良かったよ。」


朝からなんという会話を・・かしまし娘達に見つかったらまたニヨニヨした目で見られてしまう!そう思いつつおっさんは手早く全員分の料理を並べ終えていく。


全員が揃って朝食を取り、今日から少し変更になる行動パターンについておさらいしていく。


「今日からはシスター達の送り迎えが必要になるから、嫁4組、蝶華3組、ルシエも転移使える様になったし3組を教会から指定の村へと移動してから各自の作業に移ります。転移酔いが心配されるから薬を持って移動してね。」

「は~い(嫁、蝶華、ルシエ)」


おっさんは紙に書き起こした転移名簿を転移担当者に手渡し、レミアの方を向く。


「わたくし達はどのように動きますの?」

「私と一緒にまず領主邸に戻りましょう。覚悟はいいですか?」

「勿論ですわ、御姉様と約束しましたもの!」

「いい返事です、蝶華も一緒だから今日は一日付き合うよ。ずっと単独行動だったでしょ?」

「はい、嬉しいです。」


予定を確認して各自支度を終え、順に転移していく。おっさん達が向かうのは領主邸、蝶華はまず教会へ向かってもらったため合流は後程である。


「では私達も向かいましょうかレミア様。」

「はい、準備万端ですわ。」


転移陣の上に立ち魔力を込めようとするとかしまし娘達が羨望の眼差しで・・・・


「昨夜はおた・・」


言い切る前におっさんは転移していた。今日は内務担当、外務担当を一旦抑え、国宮に突き出してからレイネ様の様子を少し見て、蝶華と共に物資輸送のお手伝いである。領主邸の食堂へと転移して、今後の流れをレミアに伝える。


「毅然として、俯かずに領主らしく、最初に私は言いましたね?」

「わかっていますわ、ここで立ち止まって等居られませんもの。」


一旦自室へと戻り領主たる衣装へ着替えたレミアは最初見たころよりも少し大きく見える。


おっさんは一人で立って歩ける領主にレミアがなってくれることを祈った。

一人で立ち多くの者に支えられ、感謝を以て行動で返せる領主にレミアが成長してくれることを願った。

これまでの5日間の経験と、与えられた真実への欠片を使い、彼女は彼女の戦場に立とうとしている。


できれば口を挟まないで済むことが最良であろう。


おっさんは落ち着いて深呼吸してから領主邸を歩き出すのだった。







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