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おっさんは聖女になりて異世界を憂う  作者: とくみつ ろゆき
人間の国編・フォンターレ領の渇きと聖女の憂い
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考え方を正した結果

おっさんとレミアを乗せた馬車は予定通り真っ暗になる前に次の村へと到着した。本日はレミアと従者3名は村長の家に宿泊させるという事になり、簡易の結界魔法を唱え万が一に備える。


「領主様と従者さんの食事です。村長のご家族の分も御座いますので今のうちに食べて下さい。」

「何から何まですみませぬ。」


村長は厚く礼を尽くしてくれる。手始めに結界を張って、浄化魔法で清潔を保った後に、食事と水分を与える。無論レミア一行がいるので宿泊させて頂くことへのサービスの様なものだ。

明日朝には村人全員に配給品を届けなければならないし、浄化についても同様だった。


「毛布は人数分あります、こちらの部屋でお休みください。」


村長は慌てて家族の部屋を一つ貸し与えてくれた。レミアと3人の従者が部屋に入り村長が去った後、おっさんは手早く転移魔方陣を書き、帰還石を部屋の隅に置いて。


「この屋敷の中は結界で守られていますので、一応安心してお休みいただけると思います。私は少しやる事が有りますのでいなくなりますが、明朝には戻って来ますのでご安心ください。」

「わかりました、信じて待たせていただきますわ。」


レミアの信頼は思ったより厚く、引き留められることも無くおっさんは光の中へ消える。


「行ってしまわれましたね。」


従者の一人が呟く、引き留めても邪魔になるだけなのがレミアにもわかる。何かどこかで違う事をして来るに決まっている。自分たちは同じことが出来ない以上待つしかないのだと思う一方でやはり少し寂しいと思う部分もあった。


「早めに休みましょう。明日も早いですよ。」


気丈に振舞って、4人でかたまって横になる。休憩を挟んでいたが、体は正直ですぐに眠りに落ちた。






おっさんは転移の魔方陣の光が収まるとコテジに戻ってきていた。


「あ、旦那様。戻られたんですね。」

「うん、ただいま蝶華、首尾はどう?」


蝶華の報告を受ける、おっさんの予想よりも早く戻って居たことを考えても上手く事が運んでいるのだろうと予想は出来たのだが、水質、水量共に問題なく湖の水が飲用として使える事に安堵した。

食料も大量に安く手に入れられたと報告を受けて、おっさんは蝶華の頭を背伸びして撫でてあげる。


「よく頑張ったね。」

「嬉しい、です。」

「もう一つお願い事が出来ちゃったんだけれどいいかな?」

「はい、何なりと。」


おっさんは一つの懸念事項を手紙に認め蝶華に手渡す。


「これを閣下に、何事も無ければ報告は無くても平気だと伝えておいて。」

「わかりました。」

「よし、じゃあ晩御飯作っちゃうから、蝶華はお風呂の支度お願いしようかな。」

「喜んで!」


おっさんは騎士たちとすれ違う前の段階で既に夜は一度全員何が有ってもコテジに帰還するようにと作戦を決めていた。情報が足りなかったことが大きな要因ではあるが、あまりに暑かったため体調を考慮しての事でもあった。手早く麺を茹でつつおっさんはキュウリとハムを刻む。麺が茹で上がったら氷水で絞めて、黒酢で作った特製ソースを涼し気な紅と白の菊花文の猪口に入れ、具材を麺の上に盛り、テーブルへと運ぶ。


「暑いよぉおおおお~~~!」

「暑いいぃいい~~!」


嫁とルシエが丁度戻ってきたようだ。考えてみればこの二人が一番暑い状態に晒されている。しっかりと労って明日に備えて貰おうと思い、今日は冷たい冷やし中華にしたのだった。


「二人ともお帰り、ご飯出来てるから手を洗って来て。」

「おぉ~冷やし中華ぁ~♪」

「異世界の料理だね、ボク冷たい麺料理は初めてだよ。楽しみ」


二人が手を洗いに行っている間に蝶華もお風呂の支度を終え戻ってきて、4人で席に着く。今日は暑かったので梅と赤紫蘇の少し甘みのある果実水を準備した。


「頂きます。(全員)」


最早全く違和感なく頂きますが言える様になった。家族ってやっぱりいいなぁ、とおっさんはニヤケながら全員が箸を進めていくのを眺めている。


「私たちの世界では音を立てて食べるのが通なんだよぉ!」

「情報として正しいことは分かっても、中々実践は難しいですね。」

「のど越しツルツルだね、うどんも好きだけどこっちは暑い所では好まれる味だよ。」


おっさんは嫁に冷やし中華は日本食であるとの見解を教え、それで嫁は蕎麦などと同じ説明を二人に蘊蓄として語っている。涼拌麺は温いし、味も地方でバラバラだし、参考にはなっているかも知れないが別物だろう。

そんなどうでもいいことを考えていると、不意に嫁が真面目な顔になって。


「想像以上に井戸が深くなって、手掘りは大変だな~って実感する。」

「掘抜井戸を手掘りでやる事はまず無いからね、上総掘りをやっている時間は無いし、手伝おうか?」

「ううん、平気。でも二日はかかりそうかも。移動時間さえ何とかなればいいんだけれど・・・。」

「わかった。帰還石を置いた村から掘っていこうか。それなら転移で行けるから時間は短縮になるし。」

「それだと井戸が枯れた所の水が不足しませんか?」

「今日移動してみて、先に転移石を各村へ運んでから行動をしたほうが良いことが分かったんだよ。水と食料は帰還石さえあれば何時だって運べるし問題ない。」


最初から分かってはいた事だが各村に早馬で帰還石を置いて貰ってくるだけでも移送作戦は成功する。しかしそれでは国や領主の貢献度が地に下がってしまう為、おっさんは村々を巡る選択をしているのだった。


「さっき蝶華に渡した手紙の中にヒントは有るんだけれど、まぁ一月後にはわかる話だからその時で。」

「うわ~旦那様出し惜しみぃ~。」

「自分だけわかってるなんて酷いです。」

「ボクも知りたいよ!」


大したことではないのだが、国と領主にとっては大事な事になるだろうと思いおっさんは説明を避けた。この3人は彼らと行動を共にする機会が多いため情報を得た場合に変にぎくしゃくしてしまう恐れがあったのだ。


「理由も必ず説明するから、もう少し我慢してね。」


何とか理解を得ておっさんは安堵した。明日も早いため全員でお風呂に入って仮眠を取る。

明日も早朝から蝶華は転移で水の確保と馬車への積み込み指示、嫁とルシエは井戸掘りの続き、おっさんは各所の癒しと浄化が待っている。村々が安心できる状態になるまでは全員が一丸となって事を行わなければならない。明日以降もここに戻る様に全員に伝えた。



仮眠を終えたおっさんは早朝寝静まっている村長の家に転移する。そのまま音を立てずに座り込む形で明るくなるのを待っていた。

夜明け前薄暗い程度に視界が戻ってくるころに従者の3人は目を覚まし。主を起こさぬ様に小声で。


「リア様お戻りになられていたのですね。」

「はい、つい先ほどですけれどね。」


おっさんは全員がしっかり休めていたかどうかを確認してから、本日の行動内容が変更になった事を伝えて行く、レミアは手伝いが出来ると言っても多少の程度であり、実務はこの三人が要となる。無論決定はレミアに委ねるのだが内容が内容の為3人に覚悟の程を確認したかった。


「一か所の村の滞在時間を2時間に減らして、一日3か所の村を回るのですか?」

「そうです、皆さんの体力と馬の体力は回復します。問題は・・気力の方が持ちそうですか?体力がカバーできても精神的な疲労などは回復魔法では癒せません。気がかりなのはその部分なのです。」

「やりましょう、リア様の言うとおりに回れば村人はより早く安定して水を得られるのでしょう?」

「そうです。皆さんの覚悟はわかりました。」


話し込んでいるとレミアも眠そうな目を擦りつつ起き上がる。従者達が先ほどまでの会話の説明をレミアにしてくれているうちに、おっさんは馬車へと静かに移動して荷台の上に転移魔方陣を描く。

待機していた部屋に戻るとレミアはしゃっきりとした表情で待っていて。


「私も賛成です。リア様の案で参りましょう。」

「わかりました。では補足説明を致します。」


おっさんの作戦はこうである、まず御者1名で次の村へ向かう。その間レミア従者2名はおっさんと共にコテジへ、2時間後馬車へと戻り全員で配給品の手渡し。リアの浄化と癒しを行った後次の村へと出発。再び御者一名、今度は先程とは違う者で向かい・・同じ手順を繰り返す。最初の御者にもおっさんが回復を行うために疲労は大差がない。馬は乗せているのが御者のみなので軽く早い。コテジにいれば涼しいし、心も少しは休まるだろうと思い決定した。


早朝から村長に声掛けしてもらい村人を集めて貰い、配給品を手渡し、浄化魔法と治療の必要な物へのケアを行っていく。住民に感謝されながら村を出た後すぐにおっさんは転移魔法を使う前に一人御者として残る従者に声を掛ける。


「2時間より早く到着してしまうようであれば少し村に入るのを待っていて下さいね。馬に水も準備していますし、飼い葉も少しだけ置いておきますから。」

「有難うございます、行きますね!」


馬が走り出すとともにおっさん達も光の中へ消える。おっさんにとっては数時間ぶりのコテジだがレミアをはじめとした面々は初来訪となる。


「リア様ここが?」

「はい、首都まで2時間くらいですかね、私達の拠点となっているコテジです。皆さんの待機する部屋をご案内しますね、今御者をされている方にも説明をお願いします。」


おっさんはまず客間の一室を貸し与え、各設備の説明を行っていく。


「お風呂が3つも・・・」

「領主邸よりキッチンが広い・・・」

「魔道具なのでしょうか?水が捻るとすぐに出るだなんて・・・」


3人が目を丸くしてきょろきょろしている。おっさんは少し可笑しくなって、クスクスと笑ってみていた。

その後1階へと降りて、お茶とお茶菓子を準備し3人を席に着かせて、おっさんはレミアを見ながら言う。


「レミア様は今回の干ばつを領主報告として一月前にどのように報告なされましたか?」

「作物は不作、川の水の干上がりと共に大干ばつの兆候あり、追って連絡する。と、外務担当には伝えて書面にして王都に送らせましたわ。」

「なるほど、やはりですか・・」


おっさんはふ~むと顎に手を当てて思考のポーズを取り。


「3か所の村を回り終えたら今日からは暫くここで宿泊するようにしましょう。」

「宜しいのですか?」

「構いません。懸念事項が少し多いので、レミア様をお守りする観点からも最も安全ですしね。」

「有難う存じますわ。」


夜になれば嫁とルシエと蝶華から詳細な情報が上がってくるだろう、それまでは何食わぬ顔で今まで通りの行動を心がけようとおっさんは決定する。


2時間後次の村へ行く、滞在時間は2時間ちょっと。3か所目に向かう前に長めに馬を休ませて回復してあげて、御者が変わって3か所目の村へ、残りの者はコテジに移動する。3か所目の到着は夕暮れだったが村人たちはとても喜んで受け入れてくれた。

問題なく3か所の村を巡り、村が見えなくなる程度まで一旦離れてから地面に結界陣を張り、帰還石を置いた後、転移魔方陣を馬車の床に手をついて発動する。馬車ごと姿は掻き消えてコテジの馬小屋前に転移していた。到着店の指定が簡単なのも転移魔法の使い勝手の良い所である。

レミアと従者3人もコテジに慣れて、我が家の様に意気揚々と中へと入っていく。


「おかえりぃ~今日は大勢だねぇ。」

「旦那様おかえりなさい。」

「旦那様今日も暑かった~ボク冷たい物が今日も食べたい~。」


3人がすぐさまおっさんの元へ駆け寄り3方向から抱擁される。呆気に取られたレミアと3人の従者達を申し訳なさそうな顔で見ながらおっさんは。


「わかった、わかったから。食事の準備もあるから開放して、お願い。」


開放されてやれやれとした表情でキッチンに逃げ込むおっさんを4人は見つめている。


「主従関係がよく分かりませんわ。」

「主従逆転ものですか?」

「それも有りですね。」

「リア様はツンデレなのかしら?」


突っ込みどころが満載過ぎておっさんはやや諦めた目で4人を睨み返す、捨てられた猫の様な顔をするので今回は黙認した。


「危なかったですわ、部屋に戻ってからに致しましょう・・・」


とても小さな声でレミアが呟く、この4名の恋愛フィルターの毒牙にかかっている事をおっさんは知る由もないのであった・・・




イラストの方に蝶華イメージアップしました。イラストと言うか、ほぼモノ好きの落書き程度になっていますが・・気にしない方はご覧ください。

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